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目川探偵事務所 The GORK 1部「沢父谷姫子の失踪」編

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The GORK   1: 「S.O.S」

The GORK   1: 「S.O.S」

 身体は全く動かないのに、視聴覚器官だけはまだ生き残っていた。
 どうやら全身の神経の配線がズタズタになったらしい。
 が、いい事もある。
 これで痛覚が生きていたら、俺は痛みの無限地獄の真っ只中にいる筈だ。
 でもストレッチャーに乗せられて、見覚えのあるこの病院の緊急搬入口を見上げた瞬間、俺はマズイ!と思った。
 ここは、兄、宗一郎の息の掛かった私立大病院だった。
 普段でも俺は兄貴に引け目を感

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The GORK  2: 「学生街の喫茶店」

The GORK  2: 「学生街の喫茶店」

 2: 「学生街の喫茶店」

 ドアを押して入ると僕の頭上で、ガランゴロンと金属の空洞の中を、丸い玉が転げる音がした。
 ワックスと木の臭いのする店内は、やけに甘ったるい男性コーラスの歌声で満ちている。
 その発信源は、この店の一番奥にある派手なデコレーション付きの洗濯機の親玉みたいなものだった。
 確か「ジュークボックス」って言うんだ。
 僕は自分の頭の中に正解を見つけだし、ちょっといい気分で店

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The GORK  3: 「どしゃぶりの雨の中で」

The GORK  3: 「どしゃぶりの雨の中で」

3: 「どしゃぶりの雨の中で」

 その日、家に帰った僕は、早速、沢父谷から手渡されたDVDをデッキに入れてみた。
 円盤の表面にタイトルの類は一切ない。
 プレィが始まる短い空白時間に、嫌な予感がした。
 もしかしたらこれから僕の目の前で、沢父谷がくわえ込んだ男どもとのセックスシーンが展開されるのかも知れない。
 ・・屈折した意味のない冗談。
 何処かで、沢父谷とこのDVDに登場する男が、自分た

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The GORK  4:  俺たちは天使だ、ったっけ?

The GORK  4:  俺たちは天使だ、ったっけ?

4: 俺たちは天使だ、ったっけ?

「で、本気なのか?」
 所長は目を丸くしながら言った。
 どこの世界に、自分に依頼が来た事を驚くような探偵がいるだろうか、、でもいるのだ、それが僕のアルバイト先の所長である目川純という男だった。
「料金はウチのCランクでいいだろう?僕のバイト料からさっぴいてくれればいい。」
「しかしそれなら、、」
「それなら、そのバイト料持って他の探偵事務所に行けばいいって顔し

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The GORK  5: 「白いブーツの女の子」

The GORK  5: 「白いブーツの女の子」

5: 「白いブーツの女の子」

 沢父谷姫子の捜索は困難を極めていた。
 まるでこの世界から蒸発してしまったかのようだ。
 だから俺は回り道でも、あのDVDから沢父谷姫子の足取りを辿ろうとしていたのだ。
 そして失踪前の沢父谷を撮影した嘉門の居場所を突き止めた。

 その嘉門を歌舞伎錦町の路地裏で見つけ出したのは、いいものの、そこには思わぬ先客がいた。
 遠目では嘉門が「悪い女」に引っかかって絞り

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The GORK  6: 「叱らないで」

The GORK  6: 「叱らないで」

6: 「叱らないで」

 所長の話によると煙猿という男は、随分、厄介な場所に潜んでいるらしい。
 みんなが平成十龍城と呼んでいる総合巨大商業施設だ。
 昔はもっとオシャレな正式名称があったらしいけど、今じゃ誰も覚えていない。
 沢父谷姫子もそこに連れ込まれているのだろうか?

 「平成十龍城」は、かって香港にあったクーロン城こと九龍城砦をもじった名称だ。クーロン城の単語に英語をミキシングして、「

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The GORK  7: 「愛するって怖い」Jパート

The GORK  7: 「愛するって怖い」Jパート

7: 「愛するって怖い」Jパート

 リョウが事務所を飛び出してから二日後、俺は煙猿に関する新しい手がかりを掴んだ。
 写真もなく本名も判らず、ただ手元にあるのは、額にワッカが浮き出た「煙猿」というユニークな渾名を持つ男という情報だけ。
 たったこれだけの元手で調べ上げたにしては、上出来の首尾だった。
 もっともこの時点で、俺は俺に残された運が尽きかけているのをまだ知らなかったのだが、、。

『希

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The GORK  8: 「愛するって怖い」Nパート

The GORK  8: 「愛するって怖い」Nパート

8:  「愛するって怖い」Nパート

 スマホで嘉門を、夢殿の北にあるカフェに呼び出しておいた。
 前の件があるから、嘉門が僕の前に姿を現すかどうかは五分五分だったけど、彼はきっちり指定した時間通りに僕を待っていた。
 カフェのガラスドアに薄く映る自分の全身を最後にチェックして、僕は店内に入った。
 まあまあの化けっぷりだった。

 嘉門は店の奥のテーブル席にいたので、僕の姿はしばらく他の客に晒さ

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The GORK  9: 「愛するって怖い」

The GORK  9: 「愛するって怖い」

9: 「愛するって怖い」

 僕が、嘉門からパンティの見返りに貰ったのものは、煙猿が数年前までやっていた堅気の仕事についての情報だった。
 いつのまにかグロイストの取り巻きの一人になっていた煙猿は、ある日こんな事を彼らに言ったらしい。
「おたくらさ、もうちょっと刺激的な設定を考えないと、これだけ細分化した性のニーズにこたえられないんじゃないの。」
 日頃から得体の知れない男で、出来るだけ煙猿を避け

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The GORK   10: 「ブルーシャトウ」

The GORK 10: 「ブルーシャトウ」

10: 「ブルーシャトウ」

 俺は昔からゴーゴンとかの女怪物や女妖怪の類が好きだった。
 思えば、俺が「オカルト探偵」なる珍妙な職業に落ち着いたのも、それが遠因だったのかも知れない。
 最近、リアルで出会った女怪物は、江夏由香里先生だった。
 特に最後に見た江夏先生の姿は、強烈だった。
 坊主頭に見せかける為の「禿ズラ」というものがあるが、アレに直径1センチ程の半透明チューブを沢山生やして肩まで

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The GORK   11: 「やさしい悪魔」

The GORK 11: 「やさしい悪魔」

11: 「やさしい悪魔」

 ジンジャーエールの入ったグラスの底に貯まった氷のブロックが、カタンと音を立てて崩れた時、その男、蛇喰がやって来た。
 洒落者なのか、淡いブルーの薄手マフラーをスーツ姿の首にかけている。
 蛇喰は、「目印は黒のボルサリーノ」との打ち合わせ通りボルサリーノを斜めに被っていた。
 それに全身、ギャングスター・スタイルのスーツ。
 そのくせ、顔は町工場の社長です、と言った感じ

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The GORK   12: 「カサブランカ・ダンディ」

The GORK 12: 「カサブランカ・ダンディ」

12: 「カサブランカ・ダンディ」

 手筈は整っていた。
 俺が羽織っている皮ジャケットの内ポケットには、神代組の末端からくすねた麻薬が1キロ入っている。
 芝居じゃない、実際に俺が売人のヤサからそれをくすねて来たのだ。
 勿論、情報は蛇喰が流してくれたのだが、このカラクリは神代組の上層部の数人しか知らない。
 神代の組員が、俺の探偵事務所へ押し込んできたのは、俺が盗みを働いたその日の夕刻だった

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