青池勇飛

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青池勇飛

小説家 野球⚾ フリーター 小説を書いて連載しています! ジャンルはミステリー、悲劇、青春ものが主となっています! 第34回小説すばる新人賞三次選考 第68回江戸川乱歩賞二次選考 第69回江戸川乱歩賞三次選考

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  • 美しき復讐の女神

  • 黄金の歌乙女

  • 赤い糸

    連載している長編ミステリー『赤い糸』を一つにまとめています。

  • 小説『楽聖』

    連載長編小説『楽聖』をまとめています! 完結。

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    連載している『愚美人』をここにまとめています。ぜひご一読を~。 完結。

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小説『地獄の門』

私事ですが、昨年よりAmazonで小説を出版しております。 タイトルは『地獄の門』 ペンネームは使用せず、本名「青池勇飛」で出版しております。 https://amzn.asia/d/4SVP0Nf 面白い。泣ける。そして衝撃の結末であることは作者である僕が保証します。 おもんなかったらどうすんねん! という絡みはやめていただいて…😅 少なくとも僕の追い求める面白い物語、感動する物語として皆さんに届けたいと思える一作になったと思えたからこそ、今回は出版しようと決意したの

    • 連載長編小説『美しき復讐の女神』7

              7  チャイムが鳴って四限が終わると、隼人は鞄からプレゼント用の包みを抜き取り、下野にしっかり背を向けて立ち上がった。包み紙の中には新宿の百貨店で購入した髪飾りが入っているわけだが、これを見つけた下野は和葉へのプレゼントだと察するに違いない。  下野に冷やかされるのはもちろんのこと、和葉にプレゼントをしたことが周囲に知れれば、たちまち噂が広まってしまう。恋の噂は高校生の大好物だ。どれだけ煙たがられようと、しつこく追究してくる。そんな者達に一々説明するなど、考

      • 連載長編小説『美しき復讐の女神』6

                6  色づき始めた紅葉の木を、気にも留めないで三浜は学内に入構した。昼休みののんびりした雰囲気のせいで、紅葉を見た学生が漏らす感嘆の声が、やけに間延びして聞こえた。学内にも数カ所に紅葉や銀杏の木が植えられている。そのため意識せずとも、紅葉が視界に映った。だが三浜は、葉が色づくだけでそれに何の価値があるのかわからない。だから紅葉にはしゃぐ学生の感性を理解できなかった。十一月となったが、快晴の空に昇る太陽の陽射しは鋭い。濃密に凝縮された陽光が校舎に反射し、三浜の

        • 連載長編小説『美しき復讐の女神』5-2

           客席からだと、一閃された竹刀を目で追うのがやっとだった。同じ競技を自分もやっているというのに、まるで違う競技のように感じる。高校生と大学生の差は、歴然としていた。  団体戦の決勝は互角の試合だった。二勝二敗で大将戦へと移り、お互い技を繰り出しては防戦し合う一進一退の攻防で、残り時間はわずか三十秒となっていた。観客は頻りに残り時間を気にするようになったが、睨み合う大将同士は時間など気にならないようだった。いや、時間を気にしている余裕などないと言うべきか。一瞬の油断が隙を生み、

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        小説『地獄の門』

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          連載長編小説『美しき復讐の女神』5-1

                  5 「今日も部活か?」  終礼が終わり、隼人が席を立つと隣の席の下野が言った。 「ああ」 「精が出るな」  隼人はどんな顔をすればいいのかわからず、教室を見回した。教室ではすでに掃除当番の五、六人の内三人が箒を準備していた。一人は窓拭き雑巾を濡らしに行き、一人は黒板を神経質に消していた。掃除当番以外の生徒の姿は、もう半分近く消えていた。  隼人は下野に向き直った。「自習室、行かなくていいのか?」  体育祭が終わった九月下旬、いよいよ受験に向けて教室は緊張感を

          連載長編小説『美しき復讐の女神』5-1

          連載長編小説『美しき復讐の女神』4-2

           三日後、三浜は再びセイレーンを訪れた。前回セイレーンを去る時に事前に凛を指名しておいた。本音を言えば翌日にもセイレーンに足を運んで凛と話をしたかったのだが、やはり三浜と同様凛を目当てに来る客が後を絶たないそうで、今日まで予約が取れなかった。  三日なら早いほうだろう、三浜はそう思ったが、どうやら凛は客を選んでいるらしかった。指名されてすべての客についていたら、体がいくつあっても足りないのだろう。その中で、新規の客として凛に受け入れられた三浜は、彼女と親しくなる可能性は大いに

          連載長編小説『美しき復讐の女神』4-2

          連載長編小説『美しき復讐の女神』4-1

                  4  入り口のドアに伸ばした手が震えた。三浜は一度手を下ろし、ふう、と息を吐いてから把手を掴んだ。ドアを開けると、シャンデリアの装飾が照り返す光点が無数に出現した。ブルーのドレスを身に纏った玲華は三浜のことを覚えているらしく、入り口に客を迎えに来ると眉をしかめて意外そうな顔をした。その後で、玲華は接客用の笑みを口元に浮かべた。三浜は、気まずくお辞儀した。大将にセイレーンへと連れて来られた日からすでに半月が過ぎていた。半月前のあの日は三浜に何の満足感も与えなか

          連載長編小説『美しき復讐の女神』4-1

          連載長編小説『美しき復讐の女神』3-3

          「今日永岡さんが来たよ」  食卓の中央に山盛りされた唐揚げを箸で持ち上げながら隼人は言った。唐揚げは隼人の好物だった。現役の時は体作りも兼ねて食事制限などを行っていたが、唐揚げだけは制限しなかった。好物だから、という理由はもちろんあるが、高タンパクの鶏肉は疲労回復効果が期待できて、その上唐揚げはどれだけ食べても太らないという特別な料理だった。  歯に割かれる繊維と繊維の間から肉汁が染み出て、うまい。 「永岡さんって、二つ上の先輩の、あの永岡さん?」  母の美代子はサラダを取り

          連載長編小説『美しき復讐の女神』3-3

          連載長編小説『美しき復讐の女神』3-2

           面打ち稽古をしていると、女子部員の声高らかな挨拶が武道場に響いた。隼人は竹刀を下ろし、出入り口のほうを向いた。女子部員に続いて、稽古中だった部員全員が挨拶をした。  武道場の出入り口で剣道部顧問である鹿野が客人とにこやかに話し合っている。隼人はその客人の顔を見て、稽古を中断した。すっかり伸びた髪はおしゃれに整えられていて、高校時代から評判だった端麗な容姿には磨きが掛かっていた。  客人は、隼人の二つ歳上の剣道部の先輩、永岡勝斗だった。永岡はその端正なルックスもさることながら

          連載長編小説『美しき復讐の女神』3-2

          連載長編小説『美しき復讐の女神』3-1

                  3  剣先で間合いを計りながら、一歩踏み込んではまた距離を取った。踏み込んだ瞬間に、相手が面を守ろうとしたのを隼人は見逃さなかった。さっきと同じ間合いを取り、同様に一歩踏み込む。  竹刀を一閃すると、鮮やかに胴を捉えた。  旗がすべて上がり、隼人の勝利である。一礼した後、武道場の脇で正座すると、面を脱いだ。頭巾を外すと、汗でびしょびしょだった。しかしその水に浸したような頭巾が隼人は嫌いではなかった。特に今は、汗を流すことに喜びを感じる。稽古の頑張りで噴き出た

          連載長編小説『美しき復讐の女神』3-1

          連載長編小説『美しき復讐の女神』2

                  2 「今日はぼちぼち引き上げてくんねえかい」  威圧感のある野太い声に、三浜浩介は食器洗いをしている手を止めた。水の束が筒状になって流し台を穿とうとするのも気にせず、三浜は時刻を確認した。厨房とカウンターの間に置かれたデジタル時計は午前零時五十二分を表示している。三浜は食器洗いを再開する時、すぐ横の大将をちらっと見て、不愛想な表情のまま首を傾げた。 「何で?」と常連客は当然の返しをした。  三浜がアルバイトで世話になっているこの居酒屋は、午前五時までが営業時

          連載長編小説『美しき復讐の女神』2

          連載長編小説『美しき復讐の女神』1

                  1  骨張った手がカツカツと動いている。ペンを握る細い指はその角度と微動で手全体の美しさを際立たせた。その手から書き出される文字が流麗であることを、相馬隼人は知っていた。  残暑を思わせぬ白い手首には彼女のポニーテールを束ねるためのヘアゴムが巻かれていた。袖が一重だけ折り返されたカッターシャツ、紺のベスト、鎖骨の延長のような首筋、そして顎から視線をやや上へ向けると、南野和葉の真剣な眼差しがあった。その真剣な横顔から、隼人は思わず目を背けた。 本棚に隠れ、当て

          連載長編小説『美しき復讐の女神』1

          連載長編小説『美しき復讐の女神』プロローグ

               プロローグ  一人はソファの上で蹲るように冷たくなり、一人は同じソファの隣で首だけを宙に放り出す形で天を仰ぎ、一人は食事の並べられたテーブルに躊躇なく顔を載せ、一人は目を見開いたまま瞬き一つしなくなり、一人は泡を吹いて白目を剥き、一人は床に突っ伏して、一人は死して助けを求めるように神に向かって手を伸ばし、一人はシャツを豪快にワインで汚し、一人は洗面台に向かう途中で倒れ込み、そして一人は床を鮮血で染め、その十体の死体の中で空気を引き裂く女の高笑いが響く。  その直後

          連載長編小説『美しき復讐の女神』プロローグ

          長編小説連載『美しき復讐の女神』

          そろそろ僕の作風や作品の幅を理解し始めていただけているのではないでしょうか。 青池勇飛といえば、悲劇、ミステリー、青春。 そんなイメージを持たれているのではないでしょうか。 それで正解だと思います。 特に僕が大切にしたいと思っているのは「悲劇」の部分です。 物語としては主人公が死んでしまって幕を閉じたりヒロインが死んでしまったり、もう元には戻れないところまで主人公やヒロインか落ちてしまったり……。 ですが僕はそうした主人公やヒロインが救われるような物語を書いているつもりで

          長編小説連載『美しき復讐の女神』

          【最終回】連載長編小説『黄金の歌乙女』16

                  16  目の前に、捕らえられたポリオーネがいる。ポリオーネとの子供を殺して自らも死のうとしたノルマだが、愛する子供を殺すことはできず、ドルイッド族の巫女長としてローマ人との戦いを宣言した。そしてガリア地方のローマ人代官ポリオーネが捕らえられたのだ。  しかしノルマはポリオーネを殺せない。憎悪と嫉妬、そして恋心が胸にひしめき合い、決心がつかないのだ。ノルマは、アダルジーザを諦めるようポリオーネに言う。ノルマは嫉妬に燃え、「彼女は祭壇を汚した」とアダ

          【最終回】連載長編小説『黄金の歌乙女』16

          連載長編小説『黄金の歌乙女』15

                  15  圧巻の三重唱。これが二人の寄宿生と無名のテノールによるものなのかと疑いたくなるほどに素晴らしい。アダルジーザが登場した時、愛梨はこんなに歌えたのかと驚愕させられたものだが、一幕最後の三重唱では驚愕を超え、衝撃を与えるほど白熱した歌声を披露した。志帆と渡り合う、そういった意気込みが声に滲み出ていた。  しかし志帆はさすがだ。ノルマの憤激の歌声が、アダルジーザを、そして愛梨を飲み込んでいく。愛梨の実力は寄宿生の中で抜きん出ている、と今日観劇に来た評

          連載長編小説『黄金の歌乙女』15