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評論

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2024年5月の記事一覧

頼清徳総統の就任演説の持つ意味は何か

昨日、台湾において頼清徳総統の就任式が行われました。

1996年に総統公選制が実施されて以来、民進党が3期連続で政権を担当するのは初めてのことです。

中国と台湾は不可分であり「一つの中国」を目指す中国寄りの国民党に対し、台湾の自立を志向する民進党から連続して総統が登場することで、中台間の懸隔が広がり、新たな紛争の原因になると考えられるのは無理からぬところです。

実際、台湾の若い世代、特に40

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東京都議会議員目黒区選挙区補欠選挙の告示によせて

東京都議会議員目黒区選挙区補欠選挙の告示によせて

去る5月17日(金)、東京都議会議員の補欠選挙が告示されました。

今回は、今年4月21日(日)に執行された目黒区長選挙に目黒区選挙区選出の都議会議員2名が立候補したことに伴い失職したための措置で、投開票日は5月26日(日)となります。

立候補したのは5名で、届け出順に以下の通りです(敬称略)。

青木英太(新、無所属)
宮本栄(新、共産党)
西崎翔(元、立憲民主党)
井澤京子(新、自民党)

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求められる「残業代の見直し」を超えた教員の処遇改善

5月13日(月)、文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会の特別部会は公立小中高校の教員の残業代の代わりに基本給の4%を上乗せする教職調整額を10%以上にすることなどを盛り込んだ素案を了承し、文部科学省は2025年の通常国会において教職員給与特別措置法(給特法)の改正案を提出する方針となりました[1]。

公立学校の教員採用試験の受験者数が年々減少し、2023年度の小学校教員の採用倍率が過去最低

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【旧稿再掲】ユニフォーム着こなし最前線(II)

2010年4月、私も寄稿者の一人として参加し実業之日本社から実用百科の一冊として『野球道具天国』が刊行されました。

その中の一報に「ユニフォーム着こなし最前線」[1]があり、野球におけるユニフォームの発展の過程と2010年時点における最新の動向を検討しました。

そこで、今回は4回の予定でご紹介する本論の草稿の第2回目をお届けします。

ネクタイ着用の新橋アスレティックス
日本における最初の本格

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カルロ・マリア・ジュリーニの生誕110年を祝す

本日、指揮者のカルロ・マリア・ジュリーニが1914年5月9日に生まれてから110年目を迎えました。

ジュリーニというと名声の高さに比べ、世界的な楽団を率いた時期が短く、その経歴の多くの時期を特定の団体に関わることなく送ったということもあり、「孤高の指揮者」とも呼ばれることは広く知られる通りです。

また、3回にわたって来日したものの、1982年を最後にその芸術が完成期を迎えた最晩年は待望されつつ

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新型コロナウイルスの5類への移行から1年に際してわれわれは何をすべきか

本日、2023年5月8日(月)に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が2類から5類に移行し、法律の面では従来の結核や重症性呼吸器症候群と同等の扱いから、季節性インフルエンザと同様の枠組みの中に入れられることになってから1年が経過しました。

この間、飲食店などでの新型コロナウイルス感染症への対策が緩和されるとともに、感染症予防として励行されていたマスクの着用や密集、密接、密着のいわゆる三密へ

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ベートーヴェンの交響曲第9番の初演から200年目によせて

本日、1824年5月7日にウィーンのケルントナートーア劇場においてベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」が初演されてから200年目を迎えました。

交響曲の頂点であり、欧州連合の歌として第4楽章が用いられたり、ワーグナーが交響曲は本作で終わり、自らは歌劇における交響曲の創出を志して「楽劇」へと至ったりしたことは広く知られるところです。

ベートーベンの「第九」にはこれまで多くの優れた演奏があり、

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こどもの日に考える日本の少子化対策の過去・現在・将来

今日はこどもの日です。

5月4日(土、祝)に総務省が発表した2024年4月1日時点の15歳未満の人口は1401万人となり、比較可能な1950年以降で最少となりました[1]。

岸田文雄政権は少子化対策を政権の重要政策の一つに掲げ、2023年4月1日にこども家庭庁を発足させるなど、「異次元の少子化対策」が単なる題目に留まらないかのような意欲を示しています。

その一方で、これまで行われてきた少子化

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【旧稿再掲】ユニフォーム着こなし最前線(I)

2010年4月、私も寄稿者の一人として参加し実業之日本社から実用百科の一冊として『野球道具天国』が刊行されました。

その中の一報に「ユニフォーム着こなし最前線」[1]があり、野球におけるユニフォームの発展の過程と2010年時点における最新の動向を検討しました。

そこで、今回から4回の予定で本論の草稿をご紹介します。

ユニフォーム着こなし最前線
鈴村裕輔

最初のユニフォームは麦わら帽子に白い

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憲法記念日に考える岸田文雄首相の改憲への本気度

今日は憲法記念日です。

憲法記念日のたびに注目が集まる話題のひとつのは、憲法の改正の可能性の有無です。

確かに、今年1月の施政方針演説において岸田文雄首相が「自分の総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく、最大限努力したいと考えています。今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります。」と改憲への意欲を示したこと[1]は、改憲の期限について国

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制定から5周年目を迎えた「令和」によせて

本日、2019年5月1日(水)に明仁陛下が遜位され皇太子徳仁殿下が当極されるとともに元号が平成から令和に改まってから5年が経ちました。

国内的にはバブル経済の崩壊から長期の経済の低迷、さらには阪神・淡路大震災やオウム真理教による地下鉄サリン事件、あるいは東日本大震災など、従来の日本が経験してこなかった類の様々な困難に直面し、国際的には冷戦の終結による超大国としての米国の登場とその後の多極化の進展

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