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2020年9月の記事一覧

誰が米国大統領選挙第1回テレビ討論会で勝利したか

現地時間の9月29日(火)、米国大統領選挙の第1回テレビ討論会が行われました。

討論では、民主党候補のジョー・バイデン前副大統領が共和党候補のドナルド・トランプ大統領の施策や納税問題などを追及し、トランプ氏はバイデン氏の発言を遮って反論し、司会者であるクリス・ウォレス氏の注意を受けるなど、双方が自説を主張する展開となりました[1]。

トランプ政権の難点を指摘するものの決定力を欠いたバイデン候補

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「中曽根氏の合同葬費用」を巡る議論に求められる点は何か

昨日、加藤勝信官房長官が記者会見を行い、10月17日(土)に開催される予定の中曽根康弘元首相の内閣及び自民党の合同葬の経費の総額が約1億9000万円であり、内閣と自民党で折半することを想定していることを表明しました[1]。

中曽根氏の合同葬の経費については、今年度の当初予算の予備費から約9600万円を拠出することが閣議決定されています[2]。

加藤官房長官は「新型コロナウイルスへの対応でより多

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未完に終わった安倍首相の祖父超え

去る9月7日(月)、日刊ゲンダイの2020年9月8日号27面に「メジャーリーグ通信」の第76回「未完に終わった安倍首相の祖父超え」が掲載されました[1]。

今回は、辞任を表明した安倍晋三首相が祖父の岸信介首相を超えられなかった「大リーグの公式戦での始球式」について検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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未完に

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「縦割り110番」で期待される河野国務相の文書保存への取り組み

昨日、河野太郎国務大臣が閣議後に記者会見を行い、官公庁の規制などに関する苦情や提案を募る「規制改革・行政改革ホットライン」、通称「縦割り110番」の内閣府の公式ウェブサイトに開設することを表明しました[1]。

河野国務相は9月17日(木)に自らの公式ウェブサイト上に「行政改革目安箱」を設置したものの情報や意見の送信が4000件を超えたため翌日には運用を停止したこともあり、「縦割り110番」は既存

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菅首相は「デジタル庁新設問題」を契機に「第二次中央省庁再編」を断行できるか

昨日、菅義偉首相は平井卓也国務大臣に対し、「デジタル庁」の検討を指示するとともに、2021年秋までに同庁の新設する方針を固めました[1]。

関連法規の整備や予算措置を考えれば、根拠法がなく、来年度予算の概算要求が行われている現状では「デジタル庁」を新設することは出来ませんから、2021年秋の設置は現在考え得る最短の取り組みとなります。

「2021年秋」と聞けば迂遠な話のように思われるかもしれな

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菅義偉首相が主体性を発揮するために考えるべき二つの点は何か

昨日、第一次菅義偉内閣が発足し、菅義偉首相が就任に際しての記者会見を行いました[1]。

約15分の演説の中で安倍晋三前首相の名前に言及した点については、「安倍政権の継承」を唱えて自民党の5派閥の支持を取り付けたことを考えれば、自らの首相就任の正当性の一端を強調するという意味でも適切な措置と言えるでしょう。

また、「秋田の農家の長男に生まれた私の中には、一貫して、地方を大切にしたい、日本の全ての

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「頭の体操」として考える「菅内閣の4つの未来」

本日、衆参両院において内閣総理大臣指名選挙が行われ、自由民主党総裁の菅義偉氏が選出されました[1]。

衆議院議員が2021年10月に任期満了を迎えることから、新たに発足した菅内閣は選挙管理内閣の性格が強いものであることは、「新型コロナウイルス感染症への対策の継続性維持」を訴えて安倍晋三内閣から8名が留任、転任が3名となっていること[1]からも窺えます。

また、麻生太郎財務大臣が早期の解散総選挙

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立憲民主党が「大きな固まり」であり続けるために解決すべき3つの問題

本日、立憲民主党、国民民主党及び無所属議員などが合流し、新たに立憲民主党が結成されました[1]。

衆参両院を合わせて150人が参加する立憲民主党は衆議院銀107人、参議院議員43人からなり、2016年に民進党に改称した旧民主党以来、初めて衆議院議員が100人を超える野党となりました[2]。

そこで、今回は立憲民主党が解決すべき3つの問題について検討します。

第1の問題は選挙対策です。

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自民党総裁選挙と菅義偉氏の当選の持つ意味は何か

本日、自由民主党は両院議員総会を行い、新総裁の選出のための投票を行いました。

その結果、届け出順に石破茂元幹事長が68票、菅義偉官房長官が377票、岸田文雄政務調査会長が89票を獲得し、菅氏が初当選を果たしました[1]。

各候補の得票の内訳は以下の通りでした(表1)。

表1 自由民主党総裁選挙での得票の内訳

主要5派閥の支持を集めた菅氏が議員票、都道府県票でともに最多の得票数を記録したこと

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室伏広治氏は「スポーツ庁新長官」としての手腕を発揮するか

昨日、9月30日(水)に任期満了となるスポーツ庁の鈴木大地長官の後任に東京オリンピック・パラリンピック組織委員会スポーツディレクターの室伏広治氏の就任が決まりました[1]。

長官就任後の室伏氏の当面の課題が、新型コロナウイルス感染症の拡大により、開催時期が今夏から来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックをいかに実施するかという点に求められるとともに、より具体的には選手の強化などの施策の推

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「枝野新代表」は「立憲民主党」をどのように率いるべきか

本日、立憲民主党と国民民主党及び無所属議員などが合流して結成される新党の名称及び代表の選挙が行われ、党名は立憲民主党、代表には枝野幸男氏が選ばれました[1]。

投票を行ったのは新党に参加する国会議員で、投票結果の内訳は、党名が「立憲民主党」に94票、「民主党」に54票、その他の名称に1票、代表選挙は枝野氏が107票、泉氏が42票でした[1]。

新党には、立憲民主党に所属する国会議員89名のうち

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「自民党総裁選」と「合流新党代表選」には何が求められるのか

昨日、立憲民主党と国民民主党などが合流して結成される新党の代表選挙が告示され、立憲民主党の枝野幸男代表と国民民主党の泉健太政務調査会長が立候補しました。

また、本日自由民主党の総裁選挙も告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政策調査会長が立候補の届け出を行いました。

新党の代表選挙は9月10日(木)に投開票が行われ[1]、自民党の総裁選挙は9月14日(月)に開かれる両院議員総会で新

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変化の遅い政界と比べても消極的な大リーグの「女性進出」

去る8月24日(月)、日刊ゲンダイの2020年8月25日号26面に私の連載「メジャーリーグ通信」の第75回「変化の遅い政界と比べても消極的な大リーグの「女性進出」」[1]が掲載されました。

今回は、カマラ・ハリス上院議員の民主党副大統領候補指名を手掛かりに、大リーグの「女性進出」の実情を検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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岡正雄の「古日本の文化層」で思ったいくつかのこと

今年7月に開館した国のアイヌ文化復興拠点である民族共生象徴空間(ウポポイ)と拠点で働くアイヌ民族の職員に対するインターネット上での批判を看過すべきでないという点については、昨日の本欄で検討した通りです[1]。

その際に問題となる話題の一つは、日本における民族や文化の単一性ないし同質性の問題でしょう。

日本の民族的、文化的な多層性という点で思い出されるのが、民族学者の岡正雄が1933年にウィーン

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