「頭の体操」として考える「菅内閣の4つの未来」

本日、衆参両院において内閣総理大臣指名選挙が行われ、自由民主党総裁の菅義偉氏が選出されました[1]。

衆議院議員が2021年10月に任期満了を迎えることから、新たに発足した菅内閣は選挙管理内閣の性格が強いものであることは、「新型コロナウイルス感染症への対策の継続性維持」を訴えて安倍晋三内閣から8名が留任、転任が3名となっていること[1]からも窺えます。

また、麻生太郎財務大臣が早期の解散総選挙を強く勧めるのは[2]、首相在任時に任期満了直前まで衆議院を解散できず下野を余儀なくされた経験に基づくものと言えるでしょう。

それでは、菅内閣の行方はどのようなものになるでしょうか。「頭の体操」として考えると、様々な選択肢があるうちでも可能性が高いのは以下の4つでしょう。

(1)総選挙に敗北して退陣する
(2)総選挙には辛勝するものの「菅おろし」が強まる
(3)総選挙に勝利して長期政権化する
(4)総選挙前に退陣する

「総選挙に敗北して退陣する」という選択肢については、「実務家」という点が強調されるものの現時点では一党の党首としての人格的な魅力に乏しく、首相として将来の日本の姿を提示し得ていないこと、「新型コロナ問題」や景気の後退への対応に奏功しない場合に支持率が低下すること、そして新型コロナウイルス感染症対策を優先して解散総選挙の時期を逸する場合に現実味を帯びます。

総選挙で自民党は単独で過半数を維持するものの現有議席から勢力を後退させる場合に高まるのが「総選挙には辛勝するものの「菅おろし」が強まる」という可能性です。すなわち、2022年7月に2016年選出の参議院議員の改選を控えることで「菅首相では勝てない」という雰囲気が党内に広まると、「菅おろし」は安倍政権以来権力の中枢にいる菅首相への嫉妬と合わさる形で大きなうねりとなることでしょう。

第3の「総選挙に勝利して長期政権化する」は、池田勇人内閣や佐藤栄作内閣の場合と同様です。吉田茂内閣の大蔵大臣であった頃に「貧乏人は麦を食え」と居丈高な発言で横柄であった池田勇人は首相就任後は「寛容と忍耐」を掲げて2回の総選挙に勝利しましたし、当初は人気が高くはなかった佐藤栄作も人事と2度の総選挙の勝利して政権の求心力を高め、池田内閣は4年、佐藤内閣は約7年8か月にわたり政権を担当しました。

最後の「総選挙前に退陣する」は、「新型コロナ問題」を制御できなかったり景気の後退が一層強まる場合、あるいは予想外の醜聞が明らかになることなどで現実味を帯びる選択肢です。特に閣僚の不祥事や失言は要注意となります。

1947年5月の内閣官房長官制導入以降、同職を経験した首相は、菅氏を除くと、佐藤栄作、大平正芳、鈴木善幸、竹下登、宮澤喜一、小渕恵三、福田康夫、安倍晋三の8氏となります。佐藤栄作以外は、第一次安倍内閣を含めて短命政権か在職中に逝去と、円満に退陣できていません。

それだけに、官房長官として歴代最長の任期を記録した菅義偉首相の今後が注目されます。

[1]第99代首相に菅氏 今夜内閣発足、20人の閣僚名簿発表. 日本経済新聞, 2020年9月16日, https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63899520W0A910C2000000/ (2020年9月16日閲覧).
[2]衆院解散「すぐかも」. 読売新聞, 2020年9月14日夕刊3面.

<Executive Summary>
Four Possible Futures of Prime Minister Yoshihide Suga and the New Cabinet (Yusuke Suzumura)

Mr. Yoshihide Suga, the Leader of the Liberal Democratic Party, was elected as the 99th Prime Minister of Japan on 16th September 2020. In this occasion we examine four possible future of the new Prime Minister and his cabinet.

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