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評論

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2020年5月の記事一覧

「ブルーインパルスの展示飛行」の持つ意味は何か

本日、航空自衛隊第4航空団飛行群第11飛行隊、通称ブルーインパルス[1]が、新型コロナウイルス感染症に対応する医療従事者などに、感謝と敬意を示すためとして東京都心の上空を飛行しました[2]。

戦闘機の展示飛行による医療従事者などへの謝意の表明は米国で行われるなど、先例のあるものです[3]。

また、新型コロナウイルス感染症に対応する医療従事者などに謝意や敬意を表することが重要であるという点には、

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「新型コロナウイルス感染症対策」として求められる「公益法人制度の柔軟な運用と変更」

昨日、政府は新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた2020年度第2次補正予算案を閣議決定しました。

事業規模で117.1兆円に達するものの、民間資金の算入額など細かな内訳は説明がなされていないこと、あるいは4月30日(木)に成立した第1次補正の執行が遅れていることなど、改善を要する点は少なくないと言えます[1]。

一方、中小企業や個人事業主向けの持続化給付金については、比較的順調な対応がなされ

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「ガバナビリティとハーモナイゼーションの関係」で思い出された村山富市元首相を巡るいくつかのこと

「危機と首相」という観点で日本の政界を眺めれば、1923年の関東大震災と山本権兵衛や1941年の日米交渉と東条英機といった名前が浮かぶかもしれません。

そして、過去25年に限れば、私にとって最も印象的な人物は村山富市さんです。

周知の通り、1995年の阪神・淡路大震災の際には法制上の問題もあって初動が遅れ、しかもその遅れを認めたことで種々の批判を受けたものでした。

しかし、関係閣僚や官僚機構

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「緊急事態宣言の全面解除」で求められる「出来たこと」と「出来なかったこと」の検証

本日、安倍晋三首相が首相官邸で記者会見を開き、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い発令された緊急事態宣言について、北海道、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の5都道県を解除する旨を声明しました[1]。

これにより、4月7日(火)に発令された緊急事態宣言は全国的に解除されることになります。

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響もあり、今年1月から3月までの日本の国内総生産が速報値で前期比0.9%、

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「学業成績」は「留学生への支援」として妥当な基準となり得るか

5月19日(火)、新型コロナウイルス感染症の拡大によって経済的に困窮する大学の学部学生及び大学院生、短大生、高等専門学校生、日本語学校などに通う学生や留学生などを対象学とする学生支援緊急給付金の創設が閣議決定されました[1]。

学生支援緊急給付金の創設の意義とさらなる支援の必要性については、すでに本欄の指摘するところです[2]。

一方、留学生への支援について、文部科学省が成績上位の3割程度を対

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望まれる「困窮学生への給付金」に留まらない「学生支援」

本日、政府は新型コロナウイルス感染症の拡大によって経済的に困窮する、大学の学部学生及び大学院生、短大生、高等専門学校生、日本語学校などに通う学生や留学生などを対象に、最大20万円を給付する学生支援緊急給付金の創設を閣議決定しました[1]。

原則として家庭から自立してアルバイトの収入で学費を賄う学生のうち収入が大幅に減った学生で、給付金額は10万円、住民税非課税世帯の学生にはさらに10万円が給付さ

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「検察庁法改正問題の終わり」を意味しない「今国会成立の見送り」

報道によれば、安倍晋三首相と自民党の二階俊博幹事長が会談し、現在国会で審議されている検察庁法の変更について、今国会での成立を事実上見送る方針で一致したとのことです[1]。

世論の反発だけでなく、自民党の議員の中からも審議が不十分であり、強行採決に反対する旨を明言する声があったこと[2]を考えれば、政府首脳が法律の改正案を早期に成立させられないと判断しても不思議ではありません。

また、一部の世論

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権藤博さんの随筆「悠々球論」が示唆する「1920年の日本運動協会」

日本経済新聞は、2014年4月3日以来、木曜日の朝刊のスポーツ欄にプロ野球横浜ベイスターズの監督などを歴任した権藤博さんの随筆「悠々球論」を隔週で掲載しています。

毎回、球界に関する話題を投手、指導者としての自身の体験や知見をもとに説くのが、「悠々球論」の眼目であり、本日の話題ではプロ野球の試合時間の短縮に焦点が当てられていました[1]。

そして、「感染リスクを抑えることなどを考えれば、試合時

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改めて考える石橋湛山の「自由討議の精神」の現在的な意味

石橋湛山は、1923(大正12)年10月に発行された『東洋経済新報』第1071号の論説記事「小評論」の中で、以下のように指摘しました(本文は常用漢字及び現代仮名遣いに変更)[1]。

自由の精神とは資本主義でもない、社会主義でもない、軍国主義でもない、世界主義でもない、その他一切の型によって固められない、而して他の説を善く聴き、自らの説を腹蔵なく述べ、正すべきは正し、容るべきは容れて、一点わだかま

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「検察官定年延長問題」と「検察への信頼」はいかなる関係にあるか

いわゆる「検察官定年延長問題」については、今年2月の時点で、検察幹部が「人事で疑念を持たれることで捜査、公判への信頼が揺らぐことが心配」と、「政治に人事を通した検察への介入」への懸念を示していました[1]。

そして、懸念の理由として挙げられているのは「起訴権を持つ検察は高い中立性・公正性が求められる」[1]という点です。

実際、1954年の造船疑獄や1988年から1989年にかけてのリクルート

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「人事を通した政治による検察への介入」は「検察官定年延長問題」の核心をなすか

現在社会的な関心を集めている検察庁法の変更を巡る問題は、「人事を通した政治による検察への介入」の是非についての問題ということになるでしょう。

それでは、「人事を通した政治による検察への介入」は、何故問題となるのでしょうか。

周知の通り、日本においては、立法、司法、行政の三件が相互に牽制する、三権分立が制度として確立されています。このうち、司法権を担うのは、もっぱら裁判官制度になります。

そし

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「検察官定年延長問題」の根幹をなすのはいかなる問題か

検察官の定年を現行の63歳から65歳に引き上げるとともに、内閣の判断で検察幹部の「役職定年」を延長できるように検察庁法を変更しようとする政府の動きに対し、国民から反対の声が上がっています[1]。

検察官の定年退官は、検察庁法第22条に「検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。」[2]と規定されています。

また、同法第32条の2においては、「こ

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大リーグの歴史から考える「コルクバット問題と記録の関係」

現地時間の5月1日(金)にカナダの日刊紙モントリオール・ガゼットがピート・ローズ氏のコルクバット使用問題を取り上げた意味については、昨日の本欄で指摘した通りです[1]。

周知の通り、大リーグの公式野球規則では、バットに詰め物をしたり、ボールをパラフィンやワックス等で覆うなどの行為を禁止しています[2]。

しかし、1970年以降の50シーズンの中で、大リーグにおいてコルクバットを使用したとして処

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「ピート・ローズのコルクバット疑惑」は何故持ち上がったのか

現地時間の5月1日(金)、カナダの日刊紙モントリオール・ガゼットは、大リーグで歴代最多となる通算4256安打を記録したピート・ローズ氏が1984年にモントリオール・エクスポズの在籍時にコルクバットを使用していたと報じました[1]。

証言をしたのは、エクスポズで11シーズンにわたってグランドキーパーを務めたジョー・ジャマー氏で、クラブハウス担当の球団職員がバットを加工していたとのことです[1]。

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