「緊急事態宣言の全面解除」で求められる「出来たこと」と「出来なかったこと」の検証

本日、安倍晋三首相が首相官邸で記者会見を開き、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い発令された緊急事態宣言について、北海道、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の5都道県を解除する旨を声明しました[1]。

これにより、4月7日(火)に発令された緊急事態宣言は全国的に解除されることになります。

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響もあり、今年1月から3月までの日本の国内総生産が速報値で前期比0.9%、年率換算で3.4%の減少を記録するなど[2]、経済状況の悪化を考えれば、第1次補正予算に加えて第2次補正予算案で総額200兆円規模の事業費になることや、困窮するひとり親に対する5万円の支給、売り上げの急減した中小企業への家賃支援などを行うこと[1]は、適切な措置となるでしょう。

一方、記者会見の冒頭で芸術やスポーツに言及したものの、「癒し」や「感動」の対象としては捉えるものの、職業の一つでもあると考えない点は、今後の「取り組み」の危うさを推察させます。

また、第2次補正予算を含めて種々の政策を訴えることは人々に安心感を与え、社会活動を維持するために重要ではあっても、為政者に求められるのは漠然とした安心感ではなく、「何を」「いつまでに」「どのように」実現させるか、という点であることに変わりはありません。

そのため、明後日に第2次補正予算案が閣議決定され、早期に成立するとしても、個々の施策の実施の時期を明確にすることは依然として重要です。

これに加えて、感染の拡大が落ち着きを見せている今だからこそ、緊急事態宣言発令期間中に「出来たこと」と「出来なかったこと」を見極め、対策を講じることが不可欠となります。

何故なら、「新型コロナウイルス感染症対策」として行われた全世帯への配布が現時点で完了していないなど、適時性は持っていても適切に実施されていない政策があることは、未知の事態への対応がどの程度まで実効的であったかという点で疑問の余地を残すからです。

そして、もしこうした検証が行われなければ、「第二波」が訪れたときに、「いつか見た光景」が再び現れることでしょう。

日本に起居する人々が大小様々な負担を強いられながらも緊急事態宣言に協力したことに謝意を表した安倍晋三首相だからこそ、「その後」を見通す措置を講じることが出来るのです。

[1]緊急事態宣言 全国で解除 安倍首相が表明. NHK NEWS, 2020年5月25日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200525/k10012444231000.html?utm_int=all_contents_just-in_001 (2020年5月25日閲覧).
[2]GDP年率3.4%減. 日本経済新聞, 2020年5月18日夕刊1面.

<Executive Summary>
What Is an Important Next Measure for Prime Minister Shinzo Abe concerning after Removing the State of Emergency? (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Shizo Abe says that the State of Emergency which is applyed to five prefectures including Tokyo will remove on 25th May 2020. It is very importoant for the Japanese Government to examine and evaluate their measures against an outbreak of the COVID-19, since it might be a better preparation to the "second wave".

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