大リーグの歴史から考える「コルクバット問題と記録の関係」

現地時間の5月1日(金)にカナダの日刊紙モントリオール・ガゼットがピート・ローズ氏のコルクバット使用問題を取り上げた意味については、昨日の本欄で指摘した通りです[1]。

周知の通り、大リーグの公式野球規則では、バットに詰め物をしたり、ボールをパラフィンやワックス等で覆うなどの行為を禁止しています[2]。

しかし、1970年以降の50シーズンの中で、大リーグにおいてコルクバットを使用したとして処分が検討されたのは6選手であり、実際に出場停止となったのは選手は5人です(表1)。


表1 大リーグにおいてコルクバットの使用により処分が検討された選手(1970-2019年)

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これらの選手の他にも、マイナー・リーグの試合でコルクバットを使用していたとして処分されたホセ・ギーエン選手や引退後にコルクバットの使用と具体的な作り方を明かしたノーム・キャッシュ選手やエイモス・オーティス選手などがいます[3]。

特に、キャッシュ選手がコルクバットを使用したとして挙げた1961年は首位打者となった年でした。それにもかかわらず、大リーグ機構は現在に至るまでこの年の首位打者をキャッシュ選手ではなく第2位であったアル・ケーライン選手に改めるといった措置を講じてはいません。

あるいは、2003年にコルクバットを使用していることが発覚して8試合の出場停止となったサミー・ソーサ選手についても、当該試合の成績を無効にするなどの制裁は課されていません。

もちろん、ソーサ氏などはコルクバットの使用が明らかになったことで人々の信頼を失いました[4]。

その意味で、もしローズ氏が報道のようにコルクバットを利用したとすれば、1989年の野球賭博問題に続く新たな醜聞によって人々の信頼を再び失うとしても、大リーグで歴代最多となる通算4256安打の記録が取り消されることはないでしょう。

[1]鈴村裕輔, 「ピート・ローズのコルクバット疑惑」は何故持ち上がったのか. 2020年5月8日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/82393df5ce556ed0621a21591612993c?frame_id=435622 (2020年5月9日閲覧).
[2]Official Baseball Rules. Rule 6.03 (a)(5), Major League Baseball, 2019.
[3]Doctored bat infractions. 6th June 2003, ESPN, http://static.espn.go.com/mlb/s/2003/0603/1562807.html (accessed on 9th May 2020).
[4]Say it ain't so, Sammy. 5th June 2003, The Times of Northwest Indiana, https://www.nwitimes.com/news/local/say-it-ain-t-so-sammy/article_13127c95-b74f-5c33-aa54-cc6ae05bc469.html (accessed on 9th May 2020).

<Executive Summary>
Record Remains Record: Mr. Pete Rose and His "Corked Bat Issue" (Yusuke Suzumura)

A Canadian newspaper The Montreal Gazette reporeted that Mr. Joe Jammer, a former groundskeeper for the Montreal Expos, said that Mr. Pete Rose who has a MLB record 4,256 hits used corked bats in 1984 on 1st May 2020. However his record will remain as the best one for history of MLB, since other six players' record remains as the official.


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