「新型コロナウイルス感染症対策」として求められる「公益法人制度の柔軟な運用と変更」

昨日、政府は新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた2020年度第2次補正予算案を閣議決定しました。

事業規模で117.1兆円に達するものの、民間資金の算入額など細かな内訳は説明がなされていないこと、あるいは4月30日(木)に成立した第1次補正の執行が遅れていることなど、改善を要する点は少なくないと言えます[1]。

一方、中小企業や個人事業主向けの持続化給付金については、比較的順調な対応がなされています[2]。

これは、一面において中小企業や個人事業主の経営難が世論の注目を集めているため、迅速な措置が講じられているものと推察されます。

しかし、一般の人々の注目を浴びない分野、特に公益法人の経営状況については、政府の対応は必ずしも円滑とは言えないのが実情です。

例えば、社員総会や評議員会、理事会の開催については「当初予定していた時期に開催できない場合、その状況が解消された後合理的な期間内に開催していただければ、行政庁としては、その状況を斟酌して対応いたします」とされ、社員総会を書面や電磁的方法により開催することが可能とされたこと[3]は、いわゆる「3つの密」を避けるという観点からも適切な取り組みと考えられます。

これに対し、中小企業や個人事業主と同様、公益法人なども収入の減少が予想されるため、制度の変更が不可欠となります。

収入と支出を均衡させる収支相償[4]や1年度分の事業費相当額のみを内部留保できる遊休財産規制[5]は、法人の公益性を担保するために必要な措置ではあるものの、「新型コロナウイルス問題」という状況の下で各法人が長期的に安定した経営を行うためには、少なからぬ製薬となることが予想されます。

あるいは、一般財団法人の場合なども、2年連続で純資産が300万円未満となると解散しなければなりません[6]。

もとより、各団体が公益法人や一般財団法人ないし一般社団法人を選んだことは、監督官庁の意向ではなく、各組織の決断の結果です。

従って、個別の事情を斟酌して対応する必要はないかも知れません。

それでも、慈善団体や助成団体、あるいは交響管弦楽などの団体の多くが株式会社などではなく公益法人などの形態をとっていることは、これらの組織が営利を追求せず、公共の福祉の増進に資することを目的としていることを示します。

その意味で、当局には中小企業や個人事業主への支援とともに、公益法人などが経営を安定して継続することを可能にする制度の柔軟な運用や必要な変更を行うことが求められると言えるでしょう。

[1]2次補正 透ける規模優先. 日本経済新聞, 2020年5月28日朝刊3面.
[2]10万円給付や雇調金 執行、スピード欠く. 日本経済新聞, 2020年5月28日朝刊3面.
[3]公益法人メールマガジン. 第97号, 内閣府, 2020年5月27日, https://www.koeki-info.go.jp/other/backnumber/2020/20200527_01.pdf (2020年5月28日閲覧).
[4]公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律. 第14条.
[5]公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律. 第16条.
[6]一般社団法人及び一般財団法人に関する法律. 第202条第2項.

<Executive Summary>
Will the Japanese Government Change Regulations for the Charitable Organisations to Realise a Sustainable Management? (Yusuke Suzumura)

What is required for the charitable organisations in Japan is to realise a sustainable management under the situation of an outbreak of the COVID-19. To realise their needs, the government has to change relating regulations as soon as possible.

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