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評論

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2020年4月の記事一覧

「9月入学問題」の議論の出発点として考える「学校と会計年度の関係」

昨日、衆議院予算委員会において、安倍晋三首相が新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、学校の始業や入学の時期を9月に移行させることを検討する意向を示しました[1]。

新型コロナウイルス感染症の拡大への対策として学校の始業や入学の時期を9月に移行させることがどこまで有効であるかは定かではありません。しかも、今年9月に実施する場合には、それまでに「新型コロナウイルス問題」の終息が前提となるだけに、先

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ご即位1年を迎える今上陛下はお気持ちを表明されるか

来る5月1日(金)で、今上陛下が登極されてから1年が経ちます。

昨年は、即位後朝見の儀のに際して今上陛下がおことばをたまわったこと[1]は記憶に新しいところです。

これまで上皇陛下は「ご即位に際し」として1989年8月4日、1999年11月10日、2009年11月6日におことばをたまわっています[2]-[4]。

先例に倣えば、今上陛下も2029年のご即位10年まで5月1日におことばをたまわる

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「新型コロナウイルス問題と大学生への支援」を通して考える「大学の学費の問題」

本日、萩生田光一文部科学大臣が記者会見を行い、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で大学生からアルバイトの収入が減って生活が厳しいといった声が上がっていることについて、学生が学校に通うのを断念するといったことにならないよう、各大学に授業料の納付期限の延長や減免を重ねて要請する考えを示しました[1]。

確かに、「新型コロナウイルス問題」による家計の悪化が学生の皆さんに経済的な不安を与えていると

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「新型コロナウイルス問題」は国際秩序に根本的な変化をもたらすか

当初は人から人への感染は確認されていないとされた新型肺炎[1]が、「新型コロナウイルス問題」として人類が解決すべき共通の課題となってから、2か月が経過しています。

この間を推移を眺めるなら、「人類共通の課題」であることは誰もが認めながら、各国政府や国際機関が協調して「新型コロナウイルス問題」に対応していない点は興味深いものです。

1957年の映画『地球防衛軍』や1996年の米国映画『インディペ

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IOCの「商業主義的態度」が損なう「オリンピックのブランド価値」

昨日、国際オリンピック委員会(IOC)は、「安倍晋三首相が現行の契約条件に沿って引き続き日本が負担することに同意した」とする見解を公式ウェブサイトに掲載したものの、日本側の抗議により、該当箇所を削除しました[1]。

1953年の鳩山一郎・広川弘禅会談の故事[2]を参照するまでもなく、真実なのに当事者が否定するという話は政治の世界では日常的です。

その意味で、今回はIOCが素直な反応を示しただけ

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「緊急事態宣言発令から2週間」を経て改めて考える「自粛」の持つ意味

4月7日(火)に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令されてから、今日で2週間が経ちました。

この間、各自治体では同法第45条第1項に基づく外出や催事の自粛要請などが出され、人々の生活のあり方が変わっていることは、われわれが日々実感するところです。

ファーガソンらの研究などでは、「社会的距離」を取ることや「人同士の接触を減らす」ことの重要さを定量的に示しています[1]。

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「新型コロナ問題」における「分かりやすい標語」の問題は何か

去る4月18日、19日は、47都道府県を対象とする緊急事態宣言が発令されてから最初の週末となりました。

発令以前に比べて繁華街や行楽地などへの人出が半分以下に減少した地域がある一方で、現象の幅が小さい地域もあるなど、各地で人々の対応に偏りが見られました[1],[2]。

こうした状況は、「3密を避ける」、「社会的距離を保つ」、「出勤者の7割削減」などといった「新型コロナ問題の対策」という点からは

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「プロオーケストラへの支援はなぜ必要か」という問いに対する一つの答え

2月に始まった、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的とした全国の職業楽団の公演の延期や中止は、各団体の経営を圧迫しています。

実際、2月以降公演を開催できないために年間の収入の1割相当を失った楽団[1]や、自助努力だけでは解決できない程度にまで財政問題が悪化している楽団[2]などがあり、現在、多くの団体が既存の寄附制度や賛助会員制度以外に、小口での寄附や募金を受け付ける取り組みを行っています

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「新型コロナウイルス問題における政府の経済対策の停滞」はいかにして改められ得るか

「新型コロナウイルス問題」に関して、政府の経済対策が停滞の感を呈しているように思われます。

最新の話題としては、昨日安倍晋三首相が表明した、所得制限を設けずに国民1人当たり10万円を給付する案[1]について、高市早苗総務大臣が賛同する一方[2]で、麻生太郎財務大臣が一律の給付に難色を示すなど[3]、閣内での意見の不一致が認められます。

もとより、公平で適切な対策が取られることは重要です。

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「正しく恐れる」という表現はどこへ行ったか

「新型コロナウイルス問題」に関して、2月から3月にかけて主要全国紙の社説や論説記事などで取り上げられた「正しく恐れる」という言葉[1]-[4]も、今では目にする機会が減りました。

もちろん、現在流通するあらゆる情報を精査することは現実的には困難であるだけに、幾多の例外があることでしょう。

しかし、一時は「新型コロナウイルス問題」に対する重要な標語になったかの感のある「正しく恐れる」という表現が

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再び「頭の体操」として考える「新型コロナウイルス問題と納税者の自覚的な態度」

昨日の本欄[1]に引き続き、今日も「頭の体操」を行います。

「新型コロナウイルス問題」に関して政府や自治体による個人や企業などへの補償が速やかに行われない、あるいは実施されても内容が不十分であるという場合、どのような問題が起きるでしょうか。

様々な状況が考えられる中で、今回は短期的と中長期的の2つの観点について、それぞれ代表的な事例を取り上げます。

すなわち、短期的な問題として予想されるのは

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「頭の体操」として考える「切迫した状況における為政者の言動」のあり方

われわれの言動が本人の意図と異なる形で理解され、様々に解釈されることは、私たちが日々体験するところです。

また、政治家の言動が本人の意図とかけ離れた形で理解され、本人の意図しない結果を引き起こすことも周知の通りです。

とりわけ、行政府の長である首相の場合、片言隻句といえども種々の解釈の対象となります。

例えば、1954年12月10日に鳩山一郎内閣が発足した際に新聞記者が首相官邸で「万歳」をし

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Is the Japanese Government's Declaration of a State of Emergency Is "Too Late and Too Small"?

The Japanese Government declared a State of Emergency in Tokyo and other six prefectures on 7th April 2020.

It is the first time for the Japanese Government to declare an order based on the Revised S

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バーニー・サンダース氏は米国にいかなる影響を与えたか

現地時間の4月8日(水)、米国大統領選挙に出馬していたバーニー・サンダース候補が選挙戦からの撤退を表明しました[1]。

これにより、民主党の候補者指名争いは事実上ジョー・バイデン副大統領の勝利に帰することになりました。

昨年10月に心臓疾患の治療のため入院を余儀なくされるなど、サンダース氏は健康状態に不安を抱えているのは周知の通りです。それただけに、代議員の獲得数でバイデン候補の後塵を拝してい

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