「緊急事態宣言発令から2週間」を経て改めて考える「自粛」の持つ意味

4月7日(火)に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令されてから、今日で2週間が経ちました。

この間、各自治体では同法第45条第1項に基づく外出や催事の自粛要請などが出され、人々の生活のあり方が変わっていることは、われわれが日々実感するところです。

ファーガソンらの研究などでは、「社会的距離」を取ることや「人同士の接触を減らす」ことの重要さを定量的に示しています[1]。

その意味で、「通勤者の7割削減」といった取り組みには、一定の合理的な根拠があると言えるでしょう。

一方で、「自粛」という言葉については、「自ら行動を慎む」という点で個人の主体的な意志や判断の作用を前提していると考えられます。

実際には自治体などが要請するという点で強制力があり、「自粛要請」がなされているにもかかわらず行楽地に出かけたり歓楽街に繰り出す行動は「不適切である」として、社会的な制裁が加えらえることもあります。

このように考えるとき、少なくとも「自粛要請」という場合における「自粛」とは、「自ら行動を慎むことを強制された、社会的な制裁をも伴う措置」ということになります。

もとより、法的な強制力をもって私権を制限する措置を取らないことは戦前の人権蹂躙を反省したものとされます[2]。

しかし、「要請」という形を取って、人々にあたかも自由意思に基づいて行動を慎んでいるかのような対応を強いるということは、ある意味で法的な強制力を用いて社会を統制しようとした戦前よりも巧妙な対応と言えるかも知れません。

今年2月以来、「自粛」や「自粛要請」が当然のこととして扱われています。

それだけに、緊急事態宣言の発令から2週間が経ったこの時期に、改めて「自粛」の持つ意味を考えることにも、何らかの意義があることでしょう。

[1]Ferguson NM, Laydon D, Nedjati-Gilani G, Imai N, et al. (2020): Impact of non-pharmaceutical interventions (NPIs) to reduce COVID-19 mortality and healthcare demand. MRC Centre for Global Infectious Disease Analysis, 16th March 2020, https://www.imperial.ac.uk/mrc-global-infectious-disease-analysis/covid-19/report-9-impact-of-npis-on-covid-19/ (accessed on 21st April 2020).
[2]個人の権利 制限可能. 日本経済新聞, 2020年4月21日朝刊4面.

<Executive Summary>
Why Do We Have to Examine a Meaning of the Word "Self-Imposed Control"? (Yusuke Suzumura)


Two weeks have passed since after the declaration of a State of Emergency in Japan on 7th April 2020. On this occasion we have to examine a meaning of the word "self-imposed control", since it might have strong influence on daily lives of people in Japan.

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