RPGをやり過ぎた結果、部屋の掃除がマメに出来なくなった話
掃除機をかけても、棚や床を拭いても、投げっぱなしの服をしまっても、それでも埃はたまるし水回りは汚れる。賽の河原で石を積むシミュレーションなのかと、掃除をする度に思う。空気清浄機やルンバなどを導入しても、根本的な解決にはならない。
ここで人の思考と行動はいくつかのパターンに分かれる。
日々のルーティンとして掃除を行い、綺麗な部屋を保つ人、週に1回など頻度を決めて掃除をする人、気が付いたときに掃除をする人、人が来るときだけ掃除をする人、そして限界まで掃除をしない人。
私は正直、かなり掃除に無頓着。
人が来るときには掃除はするが、そもそも人を呼ばないのでかなり頻度は低い。夏場は生ものが悪くなりやすいし、なんならそのせいで害虫とかも発生しそうなので、ごみを溜めることはないけど、でもじゃあ水回りの掃除はマメにやってるとは言えないし、脱いだ服が床に脱ぎっぱなしのときだって全然ある。飲み終わった水のペットボトルが散乱することもある。掃除偏差値は35くらいだと思う。
一体なぜこのような行動を…と考えたところ、これはきっと幼少期からプレイしてきた「RPG」にある気がしてきた。
それは、FFやドラクエを代表とする、いわゆるJRPGだ。
綺麗にしても綺麗にしても何度も汚れてしまい、そのたびに時間と労力というリソースを消費して掃除をする…。でもやはり汚れる…そして掃除をする…。永遠にも思えるこの輪廻。だが、これが実はRPGの中でのとある根本的な作業と非常に似通っている。
それが、「HPが減ったときに宿屋に止まりHPを全回復する」という作業だ。
どれほどレベルを上げ装備を整えようと、敵の攻撃が0になることはほぼあり得ない。ゲームを進めるうえで、必ずHPは減り、そして必ず宿屋で休む。HPは永遠に減り続け、そして時間とゲーム内のお金を消費し、何度も何度も回復をする。これはまさに、ゲームから課せられた賽の河原の石積み以外の何物でもない。
さて、ではそれに対してどのような対処を行ってきたか。
宿屋に泊まるとHPが最大まで回復する。そして宿屋に泊まるとお金が無くなる。
この2つの視点から考えれば、宿屋に泊まる最大効率は「HP0になる寸前で宿屋に泊まる」こと。これが最も時間とお金を節約できる行動となり、効率的な行動となる。
時間は有限であり、さらに小学生中学生の子どもにとって、コンシューマのゲームをやる時間というのは、親という存在がいるからこそさらに狭い有限となる。事実、私の家では夕飯までがゲームで遊べる時間であり、それ以降のゲームは不可能であった。
即ち、一分一秒の価値が非常に高いのである。その結果、あらゆる無駄を排除することが、より多くRPGのストーリーを先に進めることに繋がる。
そして話は掃除に戻る。
綺麗にしても綺麗にしても、一定期間を経るとまた掃除が必要となる、終わることの無い輪廻に直面したとき、感じたのはこの宿屋システムとの類似である。
そこで私の脳はこの2つの事象を似通ったものと判断するとともに、同じ対処法が最も効率的であると考えた。
少し部屋が汚れた状態、そのレベルではまだ掃除はしない。
これは、HPがまだ10%程度しか減っていないのに、わざわざ宿屋に泊まらないのと一緒だ。
ではHPが20%減った状態では? これもまだ早い。
HPが50%を超えて減るとさすがにそろそろかと思う。しかしまだ余力はある。
結果、RPGをプレイしているとき、およそ80%HPが無くなった頃に宿屋に泊まりHPを回復すると、非常に効率よく回復できたという満足感がある。90%はさすがにリスクを取りすぎ、万が一ゲームオーバーになったときの時間損失を考えるとやりすぎである。
掃除においても同じで、少し部屋が汚れてるな、程度ではまだ掃除はしない。
足の踏み場が制限されてきてからが本番であり、目に見えて不快な印象がちらつき始めたらもはや限界。限界を超えると、異臭などのペナルティが発生するため、むしろその対処に時間と労力を費やしてしまいマイナス。
何年も同じ部屋で暮らすことで、この部屋の「HP」がわかるようになってきて、そして過去のRPG経験があるからこそ、掃除のタイミングは毎日ではなく、部屋のHPが8割くらい減ってから、なのだ。
その結果が、「RPGをやり過ぎた結果部屋の掃除がマメに出来ない」ということとなる。非常に効率的で実務的な生き方になってしまっている。常に部屋は数%~数十%汚れているが、直接的に生きていくうえで不快でも障害でも無いので無視できるレベルだ。
効率を追い求める生き方として、そして極度に不快にならない生き方として、非常に有効であり、私の体に染みついたライフハック。もはや、マメに掃除をすることは出来ない体になってしまった。
そして、ふと気づく。
シンクの水垢が、どんな洗剤でも、どんな掃除用具でも取れないくらい強く成長してしまっていることを。マメに掃除をしなかったからこそ生まれてしまったモンスターだ。
果たして効率を追い求めた掃除生活は、理にかなっていて正しいものであったのか。
ゴム手袋をしながら改めて考えている、今日この頃だ。
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