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茶碗蒸し

 今記事では茶碗蒸しの料理に纏わる私の経験を通して、茶碗蒸しの味や見た目、料理工程が人の自律神経系に及ぼす影響を見るとともに、予兆を感じた際の反射的な心理と余韻を感じている際の心理を見ていきます。  これにより、五感的な美味しさの前後にある予兆と余韻を意識でなぞることで自律神経系のバランスが整い、また皆様方それぞれの物語を通して食事の新しい楽しみ方を得られたならば幸いです。  駆け出しの持ち場である「はこ場」には茶碗蒸しの下準備をして煮方に回す仕事がありました。一日分の米

    • 桜餅

       私が職人見習いとして初めて覚えた料理の一つに桜餅があります。当時は見習いですので持ち場は追廻しでした。自分の仕事をこなしながら同時に先輩たちの雑用をする持ち場です。この追廻しの持ち場のことをその職場では「はこ場」と呼んでいました。  はこ場で受け持つ料理は、 一つには包丁に慣れるための簡単な刻みもの。例えば、 ・漬物を切る。 ・炊き込みご飯の種を刻む。 などです。  それと調理場全体の仕組みを把握するために、各持ち場で作る料理の下処理をすることです。こちらは例えば、 ・

      • 食事は時空間をデザインする

        1、味、食材、料理の構造  これまでに記事にしてきた四大味覚それぞれによる舌筋と舌周辺の筋肉の動きを簡単にまとめて、それらを次元的に捉えていきます。 ・塩味は比較的素早く感じられ、比較的余韻は短い。つまり点なる味であり0次元で、自意識の存在の拡大を促し一次元へと導く前進機能を持つ。そして前後の二方向の動きを内包し、それらはそれぞれに開閉の弁を持つ。 ・ + 時間 = ー 正確には‥‥であり点の連なりです。 ・甘味はゆっくりと感じられ長く後を引き、狭く深い味わいがある

        • 食事と心理

          1、社会の流れと味の変化  人類が社会を形成し始めた頃、その単純な社会で受けられる利便性と受けなければならない制約も単純なものだったことは容易に推察されます。  利便性に着目すると、道具が開発され、制度が整うにつれ利便性は高まります。このことによって人の自律的な緊張感が和らいでいくことは多くの人が実感することではないでしょうか。それは甘いものを食べている時のような幸福な心理状態かもしれません。そして現代人の一定の人が「甘いものは別腹」と欲求を抑止できないように、徐々に利便

        茶碗蒸し

          苦味による舌筋と舌周辺の筋肉の動きと心理作用

          1、はじめに  近年、うま味の受容体が発見されたことにより、味覚は今では五大要素として語られることが多くなっております。塩味、甘味、酸味、苦味、うま味ですね。この内、うま味を省いた四大要素についてそれらを口にした際の筋肉の反射と味わった際に感じる心理について順に紹介していきます。馴染みのない筋肉の名称が幾つか出てきますが、重要視しているのは動きの方向、早さ、強さといったそれぞれの特徴です。  動きを見せる筋肉の特定とその名称については勉強し注意深く特定したつもりですが、

          苦味による舌筋と舌周辺の筋肉の動きと心理作用

          酸味による舌筋と舌周辺の筋肉の動きと心理作用

          1、はじめに  近年、うま味の受容体が発見されたことにより、味覚は今では五大要素として語られることが多くなっております。塩味、甘味、酸味、苦味、うま味ですね。この内、うま味を省いた四大要素についてそれらを口にした際の筋肉の反射と味わった際に感じる心理について順に紹介していきます。馴染みのない筋肉の名称が幾つか出てきますが、重要視しているのは動きの方向、早さ、強さといったそれぞれの特徴です。  動きを見せる筋肉の特定とその名称については勉強し注意深く特定したつもりですが、

          酸味による舌筋と舌周辺の筋肉の動きと心理作用

          甘味による舌筋と舌周辺の筋肉の動きと心理作用

          1、はじめに  近年、うま味の受容体が発見されたことにより、味覚は今では五大要素として語られることが多くなっております。塩味、甘味、酸味、苦味、うま味ですね。この内、うま味を省いた四大要素についてそれらを口にした際の筋肉の反射と味わった際に感じる心理について順に紹介していきます。馴染みのない筋肉の名称が幾つか出てきますが、重要視しているのは動きの方向、早さ、強さといったそれぞれの特徴です。  動きを見せる筋肉の特定とその名称については勉強し注意深く特定したつもりですが、

          甘味による舌筋と舌周辺の筋肉の動きと心理作用

          塩味による舌筋と舌周辺の筋肉の動きと心理作用

          1、はじめに  近年、うま味の受容体が発見されたことにより、味覚は今では五大要素として語られることが多くなっております。塩味、甘味、酸味、苦味、うま味ですね。この内、うま味を省いた四大要素についてそれらを口にした際の筋肉の反射と味わった際に感じる心理について順に紹介していきます。馴染みのない筋肉の名称が幾つか出てきますが、重要視しているのは動きの方向、早さ、強さといったそれぞれの特徴です。  動きを見せる筋肉の特定とその名称については勉強し注意深く特定したつもりですが、

          塩味による舌筋と舌周辺の筋肉の動きと心理作用

          こんぶ思考

          1,昆布とは?  「昆布出汁ってどんな味? 」と聞かれて皆さんは上手く答えられますか?  皆さんは昆布の味や香りを他人にどのように説明できますか。恐らく、上手い言葉を見付けられないのではないでしょうか。或いはそれほど意識してこなかったという人もおられるでしょう。実は私も二十年の間、納得のいく答えを見付けられないでいました。その間、料理をしながら思い出しては何度も考え続けてきました。  この記事では、 ・何故、日本料理には昆布出汁が使われるのか? ・昆布に含まれるグルタミ

          こんぶ思考

          かつお思考                     

          ①、「鰹出汁ってどんな味? 」と聞かれて皆さんは上手く答えられますか?  私が京料理の業界で修業し始めた季節は春でした。その頃の話をしながら鰹出汁について考えてみたいと思います。ここでは鰹節の味ではなく、香りについて見ていきますが、味にも香りと同様の感覚作用があると思っています。  自分の持ち場で一生懸命に仕事をしていると、決まって営業開始の直前に鰹節のいい香りが漂ってきました。その時間帯は煮方で料理された筍の炊き物がバッカンに入れ替えられて、八寸場のホットプレート

          かつお思考