有志舎

学術書(歴史・人文・社会科学)の出版社です。 出版や学問のこと、日々の仕事のこと、さら…

有志舎

学術書(歴史・人文・社会科学)の出版社です。 出版や学問のこと、日々の仕事のこと、さらに東京・高円寺でやっている読書会のことなどを書いていきます。

マガジン

  • 新 有志舎の日々

    代表の永滝稔が、出版や学問のこと、日々の仕事のこと、さらに東京・高円寺でやっている読書会のことなどを書いていきます。 以前のブログから、こちらに移行しました。

  • 『別冊 CROSS ROADS web』

    有志舎PR誌『CROSS ROADS』とは別に、歴史学を中心に人文・社会科学の研究者による先鋭で意欲的な論考・批評・エッセイなどをいち早くお届けし、「知」の最先端を提示する学術ウェブ・マガジンです。 「CROSS ROAD」とは交差点・十字路のこと。歴史とは様々な人々が行き交い、出会うことで紡がれてきたものだという事から命名しました。

記事一覧

連載  私が見た戦前の中国・台湾⑳  「特攻隊だけはいかん!」

最近、特攻についての議論が少し出ているようなので、 有志舎のPR誌『CROSS ROADS』20号に掲載した「連載 私が見た戦前の中国・台湾⑳」を転載します。 この連載は、父・永…

有志舎
9日前
3

「永滝さんは一人だけでやっていて、どうやって著者を見つけてくるの?」

先日、友人の新聞記者の方と造形家の方とコクテイル書房で痛飲。 そこで、「永滝さんは一人だけでやっていて、どうやって著者を見つけてくるの?」ときかれました。 そん…

有志舎
3週間前
6

「夜の有志舎」 本の即売会をやります

「夜の有志舎」と称して、こんなことを始めてみることにします。 「夜の有志舎」 本の即売会 開店日時:3月29日(金)17時~20時 場所:「本の長屋」   東京都杉並区高…

有志舎
1か月前
15

独立開業の「師匠」である、栗原哲也さんの著書『神保町有情―日本経済評論社私史―』をいただく

日本経済評論社の前・社長の栗原哲也さんから著書『神保町有情―日本経済評論社私史』(一葉社)をご恵贈いただいた。 突然に送られてきたので、本当にびっくりしたが、読…

有志舎
2か月前
9

学術書の定価と原価

先日、ある読者の方から「『●●●●』を買いたいと思っているんですが、何でこんなに値段が高いんですか」という問い合わせがありました。ちなみに、その本の定価は7,700…

有志舎
3か月前
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念頭から悩む・・・

「いま、書店で売れている本の殆どは自己啓発本」という話を去年、某大型書店の方にうかがいました。小説でさえ売上割合は数パーセントなので歴史書などは言うに及ばずでし…

有志舎
3か月前
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学術書編集者として来年やりたいこと(本当にやれるかどうかわからないけど・・・)

年をまたいだ積み残し仕事はまだまだ多いですが、今年はあまりに忙しく(間違いなく有志舎創業以来もっとも忙しかった)、ほとんど目の前の仕事以外考えられなかった一年で…

有志舎
4か月前
7

トークイベント成相肇×渡名喜庸哲「哲学と美術をつなぐ書物たち」に行ってきました。

一昨日の11月22日(木)に高円寺「本の長屋」で行われたトークイベント成相肇×渡名喜庸哲「哲学と美術をつなぐ書物たち」に行ってきました。 お二人の学問の背景にあるも…

有志舎
5か月前
6

永遠の初学者の歴史書ブック案内①

「永遠の初学者の歴史書ブック案内」というものをやってみようと思い立ちました。 編集者というのは専門家ではなく、かといって全くの素人でもない半可通、いわば永遠の初…

有志舎
6か月前
6

装幀について出版社は著者とどれくらいコミュニケーションをとっているか

出版社は装幀について著者とどれくらいコミュニケーションをとっているか問題。 有志舎の場合、 カバー:まず、永滝の方から「こういう方向性でどうか(画像を使うかどう…

有志舎
7か月前
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「生涯学習のなかの歴史学」(『歴史評論』)を読んで

『歴史評論』871号(2022年11月号)の特集「生涯学習のなかの歴史学」を読みました。 その中で、たびたび私がSNSなどで紹介している甲府の「カピバラ」や高円寺の「コクテ…

有志舎
1年前
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高円寺の「ことばのまち」コミュニティ構想

 高円寺で「ことばのまち」コミュニティ構想が始まりました(私・永滝も参加しております)。  高円寺の商店街の一角に店舗的な場所(「ことばのへや」と仮りに呼称)を…

有志舎
1年前
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「小林秀雄を読む」読書会

高円寺での、本日の「小林秀雄を読む」読書会(隔月開催)、終了。 今日の課題図書は『ドストエフスキイの生活』で、これをを読んできて議論、というわけなのですが、「序…

有志舎
2年前
2

読書会で取り上げる本 その1

先日、お伝えしたように、4月から高円寺のコクテイル書房ではじめる「戦前・戦中・戦後史 読書会」で最初に取り上げるのは、 奈良勝司さん著『明治維新をとらえ直す― 非…

有志舎
2年前
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歴史書編集者が歴史書の読書会を始めるということ

〔この文章は有志舎のfacebookに書いたものと重複しますので、あらかじめご了承ください〕 私・永滝(有志舎代表取締役、編集者)の主宰にて、新しい読書会「戦前・戦中・…

有志舎
2年前
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蜂起とジェンダー ―18世紀フランス社会を民衆の視点で再考する―

       仲松優子(北海学園大学教員、フランス近世・近代史研究) はじめに  18世紀のフランスの歴史は、近代化の過程として語られがちである。17世紀後半にルイ1…

有志舎
2年前
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連載  私が見た戦前の中国・台湾⑳  「特攻隊だけはいかん!」

連載  私が見た戦前の中国・台湾⑳  「特攻隊だけはいかん!」

最近、特攻についての議論が少し出ているようなので、
有志舎のPR誌『CROSS ROADS』20号に掲載した「連載 私が見た戦前の中国・台湾⑳」を転載します。
この連載は、父・永滝勇(2022年死去)が生前に書いていた手記を基に連載しているものです。
父は小学生だった戦時中、祖父の職場があった日本の植民地・台湾に住んでいました。この手記はその時のものです。l

連載 私が見た戦前の中国・台湾⑳

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「永滝さんは一人だけでやっていて、どうやって著者を見つけてくるの?」

「永滝さんは一人だけでやっていて、どうやって著者を見つけてくるの?」

先日、友人の新聞記者の方と造形家の方とコクテイル書房で痛飲。
そこで、「永滝さんは一人だけでやっていて、どうやって著者を見つけてくるの?」ときかれました。

そんなに特殊なことはやっていませんが、結局は様々な定期購読している学術雑誌やその他の学術誌に載っている論文を探して読むのと、色々な研究会・勉強会にも顔を出して新しい研究を知っていく以外にないと思う。
難しいのは、実証性の高い論文・原稿がそのま

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「夜の有志舎」 本の即売会をやります

「夜の有志舎」 本の即売会をやります

「夜の有志舎」と称して、こんなことを始めてみることにします。

「夜の有志舎」 本の即売会
開店日時:3月29日(金)17時~20時
場所:「本の長屋」
  東京都杉並区高円寺北3丁目8−13
 (コクテイル書房の2軒先)
  https://miitus.jp/t/honnonagaya/

内容:
1)有志舎代表の永滝稔が「本の長屋」の店番をしつつ、有志舎の本(主に直近で出版した本。さらに割引

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独立開業の「師匠」である、栗原哲也さんの著書『神保町有情―日本経済評論社私史―』をいただく

独立開業の「師匠」である、栗原哲也さんの著書『神保町有情―日本経済評論社私史―』をいただく

日本経済評論社の前・社長の栗原哲也さんから著書『神保町有情―日本経済評論社私史』(一葉社)をご恵贈いただいた。
突然に送られてきたので、本当にびっくりしたが、読み始めて、一日で半分くらいを読んでしまった。それほど面白い。

この本は栗原さんの編集者・出版経営者としての自伝であると同時に、自らが創業に参画した日本経済評論社(略称:日経評)の歴史を描いたものだ。
そして、栗原さんは私にとって、有志舎を

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学術書の定価と原価

学術書の定価と原価

先日、ある読者の方から「『●●●●』を買いたいと思っているんですが、何でこんなに値段が高いんですか」という問い合わせがありました。ちなみに、その本の定価は7,700円(税込)でした。
素朴かつ実に納得のいくご質問です。
そこで、「本の定価というものは、ページ数と初版部数によってほぼ決まってきます。この本の内容は極めて専門的なので殆ど専門家しか買わないと思われるから、初版部数は数百部と極めて少ないで

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念頭から悩む・・・

念頭から悩む・・・

「いま、書店で売れている本の殆どは自己啓発本」という話を去年、某大型書店の方にうかがいました。小説でさえ売上割合は数パーセントなので歴史書などは言うに及ばずでしょう。
一方で、社会人の勉強時間は平均で一日数十分程度で、高校生・大学生の勉強時間を大きく下回るという。でも、その数十分は「ビジネスマンとしていかに成功するか」の自己啓発に費やされているということか。
ここを何とか変えていきたい。

だから

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学術書編集者として来年やりたいこと(本当にやれるかどうかわからないけど・・・)

学術書編集者として来年やりたいこと(本当にやれるかどうかわからないけど・・・)

年をまたいだ積み残し仕事はまだまだ多いですが、今年はあまりに忙しく(間違いなく有志舎創業以来もっとも忙しかった)、ほとんど目の前の仕事以外考えられなかった一年でした。
休みに入って、少しは「こういうのを来年からやりたい」というものを考え始められるようになりました。
実際にやれるかどうか分からないけど、いくつか挙げておいて目標にしたいと思います。
ただ、協力いただけるような方々も必要なのですが、まだ

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トークイベント成相肇×渡名喜庸哲「哲学と美術をつなぐ書物たち」に行ってきました。

トークイベント成相肇×渡名喜庸哲「哲学と美術をつなぐ書物たち」に行ってきました。

一昨日の11月22日(木)に高円寺「本の長屋」で行われたトークイベント成相肇×渡名喜庸哲「哲学と美術をつなぐ書物たち」に行ってきました。

お二人の学問の背景にあるもの(二人は一橋大学の同期生で、当時、国立にあったコクテイル書房で出会ったことなども含めて)がよく分かって、すごく面白かった。
司会の狩野俊さん(コクテイル書房店主・「本の長屋」代表)もなかなか良い味を出していて、旧知のお二人もリラック

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永遠の初学者の歴史書ブック案内①

永遠の初学者の歴史書ブック案内①

「永遠の初学者の歴史書ブック案内」というものをやってみようと思い立ちました。
編集者というのは専門家ではなく、かといって全くの素人でもない半可通、いわば永遠の初学者だと思うのです。そういう中途半端な人間でも、読者の皆さんの選書に少しでも参考になればと思い、「この本は読んで面白かった」という歴史書を勝手にオススメしようと始めたものです。

まず、第1回は、現在、凄惨で目をそむけたくなるような状況にな

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装幀について出版社は著者とどれくらいコミュニケーションをとっているか

出版社は装幀について著者とどれくらいコミュニケーションをとっているか問題。

有志舎の場合、
カバー:まず、永滝の方から「こういう方向性でどうか(画像を使うかどうかなど)」と著者に相談。それを踏まえてデザイナーに依頼し、3週間から1か月後くらいにデザイナーから数点の案(ラフという)を出していただき、その中から著者と永滝で相談して決める。カバーには内容紹介文を入れるが、その案は永滝が作成し、著者に相

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「生涯学習のなかの歴史学」(『歴史評論』)を読んで

『歴史評論』871号(2022年11月号)の特集「生涯学習のなかの歴史学」を読みました。
その中で、たびたび私がSNSなどで紹介している甲府の「カピバラ」や高円寺の「コクテイル書房」でやられている学術書などの読書会と共通性があると思ったのは、「学び舎歴史教科書のなかの市民学習会」という論考での事例でした(「学び舎論考」と略称)。一方、カルチャーセンターの講座などで行われている、「教える-教えられる

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高円寺の「ことばのまち」コミュニティ構想

高円寺の「ことばのまち」コミュニティ構想

 高円寺で「ことばのまち」コミュニティ構想が始まりました(私・永滝も参加しております)。
 高円寺の商店街の一角に店舗的な場所(「ことばのへや」と仮りに呼称)をもうけ、常設の「本の交換棚」や一人一人が小さな書店主となって、好きな本を販売する「シェア型本屋」(有志舎も直営書店をここに設置することを構想中。また、店主合同のフェアなどの企画も行う予定)、そして人びとがフラッと立ち寄れて本を読んだり言葉を

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「小林秀雄を読む」読書会

「小林秀雄を読む」読書会

高円寺での、本日の「小林秀雄を読む」読書会(隔月開催)、終了。
今日の課題図書は『ドストエフスキイの生活』で、これをを読んできて議論、というわけなのですが、「序(歴史について)」がメチャクチャ分かりにくい。どうやらマルクス主義的な発展段階論がお気に召さないようだが、もってまわった言い方をするので理解しにくいのですよ。

でも、メンバーで顔を突き合わせて「ここ分からないね」「こうなんじゃない?」「こ

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読書会で取り上げる本 その1

読書会で取り上げる本 その1

先日、お伝えしたように、4月から高円寺のコクテイル書房ではじめる「戦前・戦中・戦後史 読書会」で最初に取り上げるのは、
奈良勝司さん著『明治維新をとらえ直す― 非「国民」的アプローチから再考する変革の姿―』(有志舎、2018年)です。
これは小社の本だから取り上げるのではなく、私としては明治維新について今一番ラディカルで多くの議論ができる本だと思うので選ばせてもらいました。

本書の問題意識は、簡

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歴史書編集者が歴史書の読書会を始めるということ

歴史書編集者が歴史書の読書会を始めるということ

〔この文章は有志舎のfacebookに書いたものと重複しますので、あらかじめご了承ください〕

私・永滝(有志舎代表取締役、編集者)の主宰にて、新しい読書会「戦前・戦中・戦後史 読書会」を高円寺のコクテイル書房さんで4月から行うことになりました。
非専門家だけで、日本近現代史の学術教養書を隔月で毎回数章ずつ読んで、じっくり勉強していく読書会です。1冊を読み終わるのに、3~5回くらいでしょうか。近現

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蜂起とジェンダー ―18世紀フランス社会を民衆の視点で再考する―

蜂起とジェンダー ―18世紀フランス社会を民衆の視点で再考する―

       仲松優子(北海学園大学教員、フランス近世・近代史研究)

はじめに
 18世紀のフランスの歴史は、近代化の過程として語られがちである。17世紀後半にルイ14世が即位し、これ以降、強い王権のもとで中央集権化が進められ、経済的にもまた文化的にも繁栄を極めたとするイメージは、教科書や概説書でも繰り返し提示されている。「絶対王政」という言葉は、この時代のフランスの国家や社会を特徴づけるものと

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