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Jリーグ 観戦記|浦和の文化|AFCチャンピオンズリーグ2022決勝 浦和 vs アル・ヒラル

 夕の埼玉スタジアム2002。日と夜をつなぐ一時は眩い夕日に照らされる。スタンドの階段を上ると、眼下は赤く染まっていた。密度の高い感情。その感情は声となり、幾万もの旗のゆらめきとして表出される。感情が募り、集まると、感動を呼ぶということを、この風景が教えてくれる。

 アル・ヒラルのカリージョが駆け回る。浦和にとっての不確定要素。その奔放な動きが浦和の組織にひびを刻もうとする。高く位置を取った両翼のサイドバックも加わり、浦和を押し込み続ける。

 小泉佳穂の反転は反撃の象徴だった。少なくとも僕にとっては。相手の攻撃に対する反抗であり、加勢した守備をも超越した。一瞬の出来事だ。でも、良質な文学作品において、一つの句読点にも物語を通した意味が付与されているように、そのプレーはこの試合における転換点として深く印象に定着している。

 吹き荒れる風。それに乗って襲いかかる、アル・ヒラルの攻撃。宙に舞ったボールは浦和の陣内へと押し戻される。浦和にとって頂への最後の道は険しく、過酷だった。しかし、着実に。安らかに。西川の佇まいは悟りを開いたかのように乱れを見せない。

 得点の興奮は感情を覚醒し、その声は空気を震わせる。サラウンドスピーカーのように僕の周りに円を描いた。何万年もそこにある岩のように、浦和の試合運びは堅牢だった。アジアでの勝負における強さはこのクラブの伝統であり、文化と呼べるのではないか。天皇杯。全北戦。一部ではあるが、物語の要所に立ち会うことができた幸せを味わった。ここまでの壮大さを伴うとは思いもよらなかったが。

浦和 1-0 アル・ヒラル

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