旅先での徒然 ~ないのか、あるのか~
昨年の夏に訪れた久高島は、直線距離にすると3km程度。集落から島の端まで移動するのに、大体自転車で30分。「半日もあれば見終わるんじゃないか…」と言われそうな、小さな島だ。
そんな所に好んで3泊も滞在した。
人によっては「何もない島だ」と形容するかもしれない。実際そういう言葉も、何度か耳にした。けれど…こんもりした緑に囲まれた道と、綺麗な海。それだけで、十分"ある"じゃないかと思える島だ。
集落を離れてウロウロしていると、緑が増してくる。この季節にはオオハマボウ、沖縄ではユウナと呼ばれる黄色い花が咲き乱れていた。
梅雨明けという季節柄もあってか、濃い緑が道を彩っている。
島で一番の聖域と言われるフボー御嶽に向かう道には。正確な場所を知らなくとも、「あっ、この先がきっと…」と察してしまうような。そんな独特の雰囲気と気配があった。
細かく地図を確認せずに、ざっくりとした位置だけを確かめて。気の向くままに自転車で走る。そして宿に帰ってから地図を眺めて、通った道を把握する。
そんなマッピング作業が、とても楽しい。
わりと方向感覚は良い方らしく1度通ると覚えてしまうので、初めて通る知らない道には何だかワクワクしてしまうのだ。
よく晴れていたこともあって海の色が美しい、つい膝下まで入ってしまった。おかげで太腿と肩が、これまでの人生で体験したことがないくらいに焼けた。真っ赤になって完全なる火傷状態、濡れタオルで冷やし続けたのに1週間経ってもまだヒリヒリした。生まれて初めて、日焼けで皮がボロボロ剥けた。
色んな虫を見た。夕暮れ時に、突然巨大な紫色のヤシガニと遭遇して。なんだ、このクリーチャーは!!とギョッとした。意外と動きが素早くて、ガサガサと音を立てて逃げる姿に驚いた。夜にはふと気配を感じて窓の外を見ると、やけにふっくらとしたヤモリが張りついていた。
毎日同じ食堂で食事をした。今日は味噌汁の味が違うぞ…と思った日に、「美味しかったです!」と帰り際に伝えたら。「今日は魚が違って、脂部分を使ってるんよ」と教えてもらえて、納得した。
港で夕陽を撮っていたら「まだ間に合う、あっち!」と声をかけられ、もっとよく見えるビーチを教えてもらった。
自分にとっては「3泊4日では全然足りなかったな」と思うくらいに色んな事があった場所で…"何もない"という表現は、全くしっくりこなかった。
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しかし旅人にとっては刺激的で非日常な体験も、島の人達にとっては全てが当たり前にあるもので。だから「何もない島でしょう?」という言葉になる。たしかにホテルもないしコンビニもなければドラッグストアもない、娯楽施設だってショッピングモールだってない…島にないものは沢山あった。
だけど、やっぱり。何もないかもしれないけど、今や簡単に手の届かない何もかもがある場所…自分にはそんな風に思える。
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旅の記憶って、時間が経てば経つ程に。まるで夢のように遠い記憶になってしまうので…こうして写真や文章で、できるだけ留めておきたいと思ってしまいます。
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