人事課題に向き合いたくて、人材紹介を卒業します。
2023年8月、私は株式会社WARCを卒業し、次のチャレンジへと向かう決断をしました。
挑戦に性別も年齢もブランクも関係ありません。それを自ら証明するため、合計10年携わってきた人材紹介領域を卒業します。
今まで私は、非正規・正規の雇用問題や女性のキャリア形成の難しさに直面し、悩んできました。職歴ブランクがある状態から「個人の努力でキャリア復帰する」ということを、自分自身のキャリアを実験台にして取り組み、仕事で転職支援や対人支援を行なってきました。できる限り力を尽くして頑張ってきたのですが、女性のキャリア形成について個人の努力だけに頼り、外部から関わるだけでは、限界があると感じていました。そこで今度は、組織という観点から人事課題を探りたいと考え、人事として挑戦することを決めました。
私が未来のためにできること、今の私だからできることがあります。私の新卒からのキャリアの流れの中で、今の決断には意味があり、ストーリーがあります。それを今、改めて振り返ってみたいと思います。
◽️新卒で入った会社で営業と人事を経験する
大卒新卒者の求人倍率が初めて1.0倍を割り込んだのは2000年。それ以来今まで、日本では大卒新卒者の求人倍率が1.0を下回ったことはありません。就職氷河期の中でも一番最悪だった2000年(平成12年)、私は株式会社セブン-イレブン・ジャパンに就職しました。今から23年前、男女差別が色濃く残る環境で、私は小売業で女性営業としての一歩を踏み出しました。
キャリアウーマンに憧れた私は、男性優位社会の中で、女性営業として頑張っていました。社内に女性営業の数は1割もおらず、私は夜勤も行い、残業も転勤も男性同等にこなす中、心身が限界に達しました。それから結果的に本社スタッフに異動し、人事部に配属になりましたが、そこで突きつけられたのは、女性は単なるアシスタントでしかないという現実でした。営業と間接部門のギャップに戸惑いながら働く中で、産業カウンセラーと出会い、私は心身の限界から脱出することができました。産業カウンセラーの存在に感銘を受け、私も「働く」という観点から個人のキャリア支援をしたいと思うようになり、リクルートへと転職しました。
◽️リクルートで人材紹介のキャリアアドバイザーを初めて経験する
リクルートに転職し、中途採用領域のキャリアアドバイザーになりました。人のキャリア選択に影響を与える仕事は、責任重大だと感じる日々でした。そしてリクルートという会社は、男性も女性も関係なく活躍できる会社でした。私は働く喜びを感じ、アドレナリンが常に出ている状態の中、中毒の様に働きました。仕事は面白く、自分の体力と時間を全て会社に捧げるという働き方をしていました。そんな中、結婚をするタイミングに直面し、今の働き方では仕事と家庭の両方を手にいれることはできないと悟りました。私は30歳を目前にして退職し、ビジネスキャリアから一旦身を引いて専業主婦になるという選択をしました。
◽️専業主婦になるということ
専業主婦になった私が楽しめたのは、最初の1ヶ月だけでした。苗字が変わる、住む土地が変わる、人脈がなくなる、仕事がなくなるという現実の中、孤独や社会との断絶、アイデンティティの喪失を感じました。出産というイベントについても、思っていた以上に心と体のダメージが大きく、イメージしていたような幸せな時間とは言えませんでした。息子のひどいアレルギーも手伝って、修行僧のような毎日を過ごしました。ワンオペという環境で家庭空間を人知れず快適に保ち、清潔さを維持し、子どもの命を守ることは大変でした。思っていた以上に専業主婦の仕事はキツイと感じました。他人のためだけに尽くす時間の中で、「自分の時間は、もう戻らないんだ」という絶望感がありました。キャリアは終わった、30代前半までしか私は輝けなかった、私の人生のピークはもう終わった、本気でそう思っていました。(ここではキャリアだけに焦点を当て、子どもと過ごした幸せな日常は省いて表現しています。)
◽️仕事復帰しなければ「私」を取り戻せない
私は自分の全てのリソースを他人に捧げていて、自分らしく生きられていないと感じていました。やはり仕事復帰をしないと、自分らしさを取り戻せないと考えました。転勤の多い夫は、いずれ東京に異動になるのではないかと考え、仕事復帰を模索する中、東京への転勤辞令が出ました。私は再就職のチャンスだと考え、キャリアコンサルタントとしての復帰の道筋を探ることにしました。キャリアコンサルタントが一番自分にとって復帰が現実的であり、元の自分を取り戻せる近道だと考えました。
◽️確認したのは「問題の本質は人材紹介にはない」ということ
家族を持った私は、以前のように、自分のリソースを100%仕事に使えないという現実の中で、以前同様アドレナリン全開でキャリアアドバイザーとして働くことはできませんでした。フリーランス、パートタイム、フルタイムと徐々に仕事復帰していきましたが、あの頃の感覚が蘇ると同時に、人材紹介で個人を支援することの限界も感じました。「キャリアコンサルタントは人材紹介営業である」という現実を再度確認し、私が解決したい問題の本質は人材紹介にはないのだと感じました。私が「解決したい問題」とは、性別、年齢、職歴ブランクによって個人が自律的に働けるチャンスを奪われているという問題です。企業の人事に入ったとしても、その問題の一部しか解決できないかもしれません。しかし外部から採用支援をするという表面的な関わりよりも、もっと組織課題に根ざしていて、経営者とタッグを組んで考えなければいけない問題なのではないかと感じています。
以前、私が書いたnoteです。キャリアコンサルタントとしての自分が、人材紹介において直面した現実について、私の想いを書いています。
私が解決したい問題は、人材紹介業では解決できないのではないかという想いがありました。かつて人材紹介で働いて、一度業界から外れ、再び戻ってきて改めて確認した想いでした。
◽️これから目指したい人事としてのキャリア
私が関わりたい領域は個人のキャリア支援から、組織課題や経営課題へと変化しました。組織を構成する一員という立場で人事に身を投じ、経営者と組織課題に向き合った時、人事という観点で新たに発見する課題や、自分がすべきことが見えるのではないかと考えています。かつての人事部においては、私はアシスタントという立場でしか関われませんでしたが、これからは経営陣と対話しながら、組織に向き合える人間になりたいと思っています。私が男性優位社会で経験したことや専業主婦経験、そしてキャリアコンサルタントとして人材紹介で支援をした経験が活きるのではないかと考えています。私自身が悩み続けてきた、女性のキャリア形成における課題の本質が、もしかしたら潜んでいるかもしれません。私が解決したい問題は、私自身の問題であると同時に、企業や日本の問題でもあると考えています。おそらく課題だらけの中、悩みながら仕事をすることになると思いますが、40歳代後半から築いていくこれからの自分のキャリアに、ワクワクしています。
私が未来のために今できること、それは自分の経験と想いを、世の中に活かすという使命を果たすことです。
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