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【子育て】イギリスの小学校で体験「褒める」を見える化する取組み♯055

イギリスから日本に帰国し、ちょうど1年が過ぎた。
息子はイギリスで2年弱、現地の公立小学校に通い、今は日本の公立小学校の2年生だ。日本の学校に通いはじめて1年が経ち、イギリスと日本、それぞれの学校の特徴が見えてきた。

イギリスは日本と同じ島国だが、日本よりはるかに多様な国籍の人たちが住んでいる。息子の学校にも御多聞に漏れず、ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジア、様々な国にルーツがある子供たちが通っていた。
私自身、日本にいるときは、どうしても「周りと同じであること」に重き置いてしまい、周りと違うと心がざわつくこともあったけれど、イギリスに住むと、皆それぞれのルーツが違いすぎて、「同じであること」なんてどうでもいいと思うようになった。

教育に関しても、イギリスと日本は違った。
その中でもイギリスの小学校での「褒める」の見える化は特徴的だった。

息子はよく紙製のリストバンドをつけて帰ってくることがあった。
何が書いてあるのかというと
"for being very polite"
"star musician"
など。
それぞれの先生が、子供たちがいい行動をしたときに、リストバンドに書いて、腕につけてくれるのだそう。
息子は誇らしげに、嬉しそうにリストバンドを私に見せてくれていた。

とにかく生徒を褒めて、その子の良さを伸ばす取り組みが特徴的。
しかも、それを全体でわかるよう可視化する点がおもしろい。
日本の小学校でも、先生は子供のいいところを本人に伝えてくれるし、
例えば字が上達したら、練習帳に花丸をつけてくれる。
ただ、それは、先生 対 生徒の話で周囲にもわかるよう可視化するといったことまでは、私は聞いたことがない。

一方で、このリストバンドだったら
周りからも認識されやすいし、
よいとされる行動が生徒全体に広がるきっかけにもなる

話は少しそれるが私は10年以上前、鉄道会社で、組織風土改革のプロジェクトに携わっていた。
鉄道業はお客様の命、安全にかかわる事業であることから
職場では事故やミスに関する注意喚起の共有が目立つ。
事故やミスといったマイナスを無くし、何事も起きないゼロの状態を目指すことはとても大事だけれど、そこから更にお客様に喜んでいただくためにはプラスを目指す行動も共有する必要があるという議論になった。
お客様からの苦情などは再発を防ぐために周知徹底されるが、お客様からのお褒めの声や、社員同士が好プレーに感謝を伝え合う"Good Jobカード"の内容を組織全体で共有しあうことは少ない。
また日本人は謙虚、控え目、悪く言えば「出る杭打たれる」こともあり、自分が褒められたとしても、それをわざわざ「こんなことでお客様に褒めてもらいました!」と組織全体に顕在化させにくい。
そこで、良い行動を個人で留めず、組織で共有しあう文化をつくっていくことがCS向上につながると見立て、施策を進めていた。

だから、このイギリスの小学校の「褒めるを可視化する」取組みも、非常に興味深かった。

そんな話を近所の友達に話すと、友達の娘さんが行っている学校では得意科目や担っている役職のバッジがあると教えてくれた。
子供によっては、制服のセーターが重みで垂れ下がるほどの沢山のバッジをつけていて、それが子供たちの誇り、やる気に繋がっているという話を聞いた。まるで、軍人の勲章みたい!
これも子供たちのヤル気を生み出すマネジメントの一環なのだろうか。

またフランス人のママ友とはこんなことを話してくれた。
イギリスの学校は、内発的な動機を引き出して、その子の良さを伸ばすところが特徴的だと話していた。
彼女の娘さんはフランスの学校にも通っていたが、フランスの学校は厳しく、先生がしょっちゅう叱るのだそう。
イギリスは子供の自己肯定感も育まれるし、スペシャリストが育ちやすい土壌という人もいた。

一方で日本人の駐在妻たちは、「リストバンドは貰える人と貰えない人の差が激しいから、どうかと思う」と不公平感を露わにしていて、日本人らしいなと感じた。日本でスペシャリストを育成するなら、まずはこのような何から何まで「公平性」にとことん重きを置く文化について考える必要はあるのかもしれない。

ちなみに、勉強面でもこのような「違い」によりそうサポートが充実していた。英語が全く話せず渡英した息子は、渡英直後は学年のレベルに到達していないから1学年下の問題集を貰ってくることがよくあった。
でもちゃんと「焦ることでも戸惑うことでもない」と書かれた用紙が同封されていた。それは、息子の学校だけでなく、生徒の学力にあったレベルの問題集を配布されることはイギリスの学校では普通のことなのだそう。
移民の生徒が多いイギリスの中学校なんかでは、
英語のレベルがバラバラなので英語のレベル別でクラス分けがなされているといった話も聞く。
だから息子は英語が学年のレベルに追い付かなくても劣等感を感じることもなく、楽しく通学していて、最終的に在英2年の間に英検準2級をとれたことを考えると、着実に能力は上がっていたことがわかる。

日本だと出る杭は打たれてしまうし、
子どもが周りと同じことができていないと焦る保護者も多いと感じる。
先日、小学校の保護者会でとあるお母さんが「うちはまだ塾に行かせてないんですが、皆さん行かせてますか?」と質問を投げかけた際、教室がざわついた。
「人それぞれ好きな勉強も、学力も、行きたい進路も違うんだから、どうでもいいやろ」と私は内心思っていたが、渡英前、私も少なからずそう考えることはあった。

ただ、イギリスに住んでみて他人とは違うという前提に立てば、色々なことに解放されるなと思う今日この頃である。
子供のよいところをとことん伸ばす。
子供のギフト、タレントを育てる。
子育てにおいても実生活のなかで大切なことを学ばせてもらった。


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