モトユウ社

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最近の記事

骸骨の話

それはおもちゃとして ガイコツを買った。たった700円にも関わらず、15箇所も可動する素晴らしいガイコツである。こんなガイコツ何に使うのか?と問われれば、間髪入れずに「別に何も」と答える自信がある。しかし、無駄なモノこそが文化である。人生から無駄を取り払ったならば、そこには結果としての「死」しか残らない。また、無駄なモノにすら意味を見いだす行動こそが、ヒトを人間たらしめる所以であるとも思っている。あらゆる事象に対して、本能的ではなく理性的に意味を求めることが猿と人間の線引き

    • Y氏の話

      利息としてのそれ 昔、まだインターネットなんて一般に普及してなかったころ。地域のナゾ雑誌にて「譲ります」「探しています」というコーナーがあり、そういう場で物品のやりとりがおこなわれていた。そして、その雑誌を通じて友人のH氏がカワサキのバリオスを中古で買うことになった。しかし、彼はどうしても2万円足らず、バイトの次の給料まで1週間、お金を貸してほしいと言ってきた。彼は利息として、「ジョイボール」と「パックマンのゲーム」と「BD」をつけると言った。ちなみにこのBDとは、ブルーレ

      • メガネの話

        それは唐突にはじまった 割と遅い時間の特急淀屋橋行きに揺られて気持ち良く眠っていた。ふと目を覚ますと、樟葉に停車したところだった。 「あぁ、もう樟葉か…」とぼんやり思っていると、少し遠いところでモメ事が起こっているような声が聞こえてきた。 「オイ!メガネ降りてこい!!」 「びびってんのか!メガネ降りてこい!!」 「かかってこいや!メガネ!!」 といった類の怒号が繰り返されていた。おそらくチンピラAが一般人に対していちゃもんをつけているのだろう。実は一人でメガネの降霊術に勤

        • へたの横好き

          趣味はなんですか?という質問は日常でするしされる。さて、齢40もこえると趣味というものもそれなりにあるし、それなりにこだわりをもつことも多い。そんなとき、なにをどのようにどの程度で答えるのか?という加減が難しかったりする。 私は趣味というか、関心のあるものが一般の人よりも少し多い気がする。しかし、その分野のガチ勢の人たちには遠く及ばないレベルの愛好家である。漫画、音楽、楽器、ビデオゲーム、プラモデル、写真、絵、散歩、映画、アニメ、読書など。基本的にインドアであることはとりあ

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第6回人間椅子『怪人二十面相』)

          大学生というモラトリアム期間でありながら、持ち前の社交性の低さを遺憾なく発揮していた私は、その輝かしいキャンパスライフを知人ゼロで過ごしていた。バイトも大学近くではなく、地元の駅前の書店でおこなっており、授業が終るや否や駅までダッシュ!という毎日を送った。 さて、そんな学生の頃にいろいろな音楽を聴き始めていた。厳密にいうと高校生の頃から興味は持ち始めていたのだが、当時はそんなにガッツリとバイトもできなかったのでCDのレンタルもあまりできなかった。せっかく買った少ないCDをアホ

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第6回人間椅子『怪人二十面相』)

          詭弁家の話

          なんでそれを買ったのかは忘れた 『新・書物の解体学』(吉本隆明著:メタローグ) まず、えらいスカした名前の出版社である。まだ存在するのだろうか。 そして著者は、戦後を代表する知識人な上に吉本ばななの父という吉本隆明だ。吉本ばななとは、口当たりの良い本を何冊か出版している人である。なんだかんだで私も『哀しい予感』(角川書店)『とかげ』(新潮社)は読んだ。ただ、それを読んだ記憶はあるものの、内容に関しては一切覚えていない。 吉本隆明氏に関しては、雑誌や新聞のコラムを読んだことが

          詭弁家の話

          マイケル・サンデルってどこいったの

          亜米利加のいい大学からやってきたマイケル・サンデル氏が評判だった。 彼の著書なのか講義をまとめたものなのか知らないけれど、『さあこれからの「正義」の話をしよう』(うろ覚え)だか何だかという本も、巷には山積みであった。 氏の大きな特徴はその講義のスタイルだ。それは、大教室で学生たちとの闊達なやりとりを通じて、諸問題の結論に向かうという技法であり、自ら考えさせて気づかせるという効用がある。 そのような技法は、お釈迦さまの十八番でもあり、その説法の一つ「恐怖!!死んだ赤子に薬を求め

          マイケル・サンデルってどこいったの

          まだ本を読むガッツが残っていた頃の懐かしい感想

          待ち合わせた友人が『日本の路地を旅する』(上原善広著:文藝春秋)を読んでいた 。この作品は、本年度の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。本作においての「路地」は、一般的な用法としての「路地」ではなく、「被差別部落」のことを指す概念だ。そして、そのような集落を「路地」と初めに呼んだのは中上健次である。 私は中上氏の作品が好きで、今も少しずつ読み進めているところである。 中上氏は和歌山の部落出身者で、作品にもその体験が色濃く反映している。 基本的に土方や飯場でのゴミのような

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          そんなに詳しくもない音楽のお話(第5回コナミ矩形波倶楽部『パロディウスだ!〜神話からお笑いへ〜』)

          今にして思えばゲームミュージックというものについて、おそらく普通の小学生よりは関心が高いほうだった気がする。とはいえ、それがカセットテープやレコードになっていることなど知らず、オンタイムで持っていた『ドラゴンクエスト2』のカセットテープも「商品として買えるもの」という認識はなかった。しかし、そんな私にゲームミュージックを「聴くもの」として習慣づけた作品が『パロディウスだ!神話からお笑いへ』である。 アーケードで遊んだそれの音楽は、クラシックを軽快にアレンジした素晴らしい楽曲た

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第5回コナミ矩形波倶楽部『パロディウスだ!〜神話からお笑いへ〜』)

          新たな親不知がみつかったので、10年前に別の親不知について書いた日記を再掲する

          諺によれば、物が挟まったようで、やくざによればガタガタ言わされ、作家川上未映子氏によれば、物事を考える場所かつあらゆる感情を封印する場所(『わたくし率イン歯ー、または世界』講談社文庫)である奥歯をついに抜いた。抜いたのは医者であっておまいは抜かれたのだろうとか言わない。 遡ること三ヶ月前。奥歯がギュンギュン痛み始めた。どうした?キミはそんなに自己主張する子ではなかったろう。となだめすかすが、そんなことに聞く耳はもってくれやしない。半泣きになりながら歯医者に予約の電話を入れた。

          新たな親不知がみつかったので、10年前に別の親不知について書いた日記を再掲する

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第4回Deep Purple『The Book of Taliesyn』)

          前回『Deepest Purple』をH本君から借りて、それをカセットテープへ録音し、愛機のSONY社製ドデカホーンで聴いていた。それまでLINDBERGやB'zぐらいしか音楽を聴いていなかった身としては、イアン・ペイスの軽快なドラムやジョン・ロードのパーカシッブなオルガンは十分にカルチャーショックであった。ちなみに、イアン・ペイスだジョン・ロードだと言ったけれども、この時点で私はまだメンバーの名前を知らない。 いま手元にある音源はどうやらベスト盤ということぐらいはわかってい

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第4回Deep Purple『The Book of Taliesyn』)

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第3回Deep Purple『Deepest Purple』)

          ある日の帰り道、H本はまた私に言った。「俺ん家寄って帰れよ」と。わざわざ書いたけれども、なにもない日は彼の家に行くということがほぼ習慣化していた。ということで、なにをするでもなくいつものように管を巻いていると、彼はいつぞや私に聴かせてくれたベースを取り出した。そして、コンポのスイッチを押した。ラジカセからコンボへいつの間にかランクアップしていた。 Deep PurpleのBlack Nightに合わせて、それを演奏してのけた。当時の私を含めて、一般人のBlack Night

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第3回Deep Purple『Deepest Purple』)

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第2回Bon Jovi『Cross Road』)

          『変態ギグ』を貸してくれたH本君の家は我が家と高校の結んだ線の真ん中にあった。つまり、毎日かならずH本君の家の前を通過する日々が始まったのだ。のちに、放課後そこに集まってはセガサターン(彼はセガ派)や麻雀に興じることとなる。 そんなH本君の家に初めて招かれた日、彼は私にエレキベースを披露してくれた。私は4歳から13歳までピアノを習ってはいたものの、そこまで音楽に興味はなくどの楽器がどのような役割でどんな音を出しているのか気に留めたこともなかった。彼はおもむろにラジカセのスイッ

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第2回Bon Jovi『Cross Road』)

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第1回ピンキージンバヴエ『ノーブラ』)

          大学生になった頃、アルバイト先で知り合った人が「私の友達がCD出したから聴いてみて」と言った。まだ「インディーズ」という概念を知らなかったので「へぇ、そういう人もぽつぽつ出てくるものなんだな」と思った。つまり、前回でとりあげた『変態ギグ』も自主流通盤だと思っていなかったのである。と、このように音楽活動をおこなっている人たちが身近に現れ始めた。 そして、当時仲の良かった友人はアコーディオンを趣味としていた。その流れから、なにかアコーディオンをフィーチャーしたバンドを観にいこうと

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第1回ピンキージンバヴエ『ノーブラ』)

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第0回猛毒オムニバス『変態ギグ』)

          高校生になった頃、たまたま隣の席になったH本によって洋楽の扉が開かれた。とはいえ、彼が最初に貸してくれたCDは殺害塩化ビニールの『猛毒ソロオムニバス 変態ギグ』というピンク色の怪しいCDであった。もちろん、当時は殺害塩化ビニールなどというレーベルなど知る由もなく、オムニバス形式のアルバムというものもわからなかった。私が持っていたCDはLINDBERGぐらいのものだったのである。あとはファイナルファンタジーのゲーム音楽とコナミ矩形波倶楽部のアルバム。 とにかく、そこまでリソース

          そんなに詳しくもない音楽のお話(第0回猛毒オムニバス『変態ギグ』)

          いまわし電話

          年度も変わったし、住所録の粛清を敢行した。とはいえ、元々の登録数が少ないので10件程度である。 そんな折、名無しの権兵衛さんから着信があった。普段なら無視するうえに、かけ直すこともないのだけれども、たまたま駅のホームで座っていたところだったので、出てみた。 相手は男性で、まず「もしもし、もしもし、オレオレ、久しぶり!誰かわかる?」という、耳をつんざくボリュームの声で一方的に喋り始めた。 誰かわからなかったけれども、わかったところで有益なことは何一つなかろうと思い、私は「

          いまわし電話