そんなに詳しくもない音楽のお話(第5回コナミ矩形波倶楽部『パロディウスだ!〜神話からお笑いへ〜』)

今にして思えばゲームミュージックというものについて、おそらく普通の小学生よりは関心が高いほうだった気がする。とはいえ、それがカセットテープやレコードになっていることなど知らず、オンタイムで持っていた『ドラゴンクエスト2』のカセットテープも「商品として買えるもの」という認識はなかった。しかし、そんな私にゲームミュージックを「聴くもの」として習慣づけた作品が『パロディウスだ!神話からお笑いへ』である。
アーケードで遊んだそれの音楽は、クラシックを軽快にアレンジした素晴らしい楽曲たちであった。ゲーム自体もかなり面白く、今も昔もへっぽこシューターな私のお気に入りとなった。アーケードは1プレイ50円なのでそんなに多く遊ぶこともできず、誰かのプレイを見るかひたすらにデモ画面を眺めていた。しかし、ある日友達についていった日本橋にてみかけたX68000への移植版を見て私は驚愕した。ほとんど完璧な移植だったのである。私は時間を忘れてそのX68000版のデモ画面を見続けた。

X68000はパソコンであり現実的にそんなものが買えるわけもなく、どうにかこうにかして買ったFC版でしばらく遊んでいた。これはこれで面白いゲームではあったが、それは完全に別ゲーであった。ちなみに、当時の私はFCのSTGの大半を初見で全クリできるほどどうかしていた。しかも手連で。今では考えられないタフさである。
そして何ヶ月かのち、毎号買っていた『マル勝ファミコン』でGB版の『パロディウスだ!』が出ることを知った。3500円ぐらいだった気がするが発売日に買えるわけもなく、マル勝に掲載されていたステージのマップを眺めては脳内でプレイしていたものである。人間の想像力は逞しい。

なにをどうやって買ったか覚えていないけれども、GB版を手に入れた私は狂ったようにそれで遊んだ。FC版よりも構成がアーケード版に近く、なによりもサウンドテストモードが搭載されていたのである。タイトル画面でなんらかの操作をするとサウンドテストモードに切り替わり、バンド体制のペンギンたちの動きに合わせてゲーム内の楽曲を思う存分聴くことができたのである。GBはイヤホンジャックもついているので、本当にずっと聴いていた。そして、ある日GB版の音楽を録音しようと思い、ラジカセ(この頃はまだモノラルの小さなもの)を録音モードにしてスピーカー兼マイクの近くでゲームをプレイした。このあたり、さくらももこさんが『野球狂の詩』の主題歌に狂い、『野球狂の詩』の歌狂になった話とほぼ同じ体験をした。

それから月日は流れ、私が中学1年の頃にふと立ち寄ったCD屋にて『パロディウスだ!』のCDを見つけた。能動的に情報を得ることの難しい時代である。そんなものが流通していることなど知らず、それを見た瞬間に「これは…ッ!」と思った。しかし、いきなり3000円近い出費をすることができるほどの資本は中学生にあるわけがない。ただ、なぜかそのとき3000円ぐらいの持ち合わせはあった。なぜかはわからない。
CD屋の近くのベンチでかなり逡巡し、思い切ってそれを買った。だが、それはゲームそのもののサントラではなくアレンジを加えたバージョンのものであった。今だと収録楽曲の少なさなどで判断もつきそうなものではあるが、中1男子の脳みそなんてそんなものである。中学生男子は人生で一番アホな時期である、とさくらももこ氏や吉田戦車氏が指摘しているがそのとおりである。
ちなみに、オリジナルサウンドトラックではなかったが、私はその内容をとても気に入り今でもこのアルバムを愛聴している。

さて、CDを買うことなど滅多にないので、次の日に部活一で音楽が好きなY内君にCDを買ったぜと言ってみた。彼は「え?なになに?なんの?B'z?」と目をキラキラさせた。そう。当時はB'zとドリカムが最先端の音楽だったのである。あと、WANDSとサザン。そんな彼に私は無邪気に買ったものは『パロディウスだ!』のサントラのアレンジバージョンであることを伝えた。Y内は明らかにその話題に興味をなくしたことが伝わってきた。



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