そんなに詳しくもない音楽のお話(第2回Bon Jovi『Cross Road』)

『変態ギグ』を貸してくれたH本君の家は我が家と高校の結んだ線の真ん中にあった。つまり、毎日かならずH本君の家の前を通過する日々が始まったのだ。のちに、放課後そこに集まってはセガサターン(彼はセガ派)や麻雀に興じることとなる。
そんなH本君の家に初めて招かれた日、彼は私にエレキベースを披露してくれた。私は4歳から13歳までピアノを習ってはいたものの、そこまで音楽に興味はなくどの楽器がどのような役割でどんな音を出しているのか気に留めたこともなかった。彼はおもむろにラジカセのスイッチをオンにしたと思うと、それに合わせてボンボンボンとベースを弾いたのである。その曲はBon Joviの「Livin'  On A Prayer」であった。彼は音楽におけるベースの役割を熱く教えてくれて、その上このCD『Cross Road』を気前よく私に貸してくれた。真面目かつ律儀な私はCDをカセットテープへ録音し、たぶん翌日には返却した。

その後、カセットテープでたまにBon Joviを聴いていたのだが、なんとなくCDで欲しくなってきたので近くのイズミヤへいった。そこには『Cross Road』が2種類あり、収録曲と価格が異なっていた。どういうことなのかわからなかったのだけれども、なんのことはなくそれは国内盤か輸入盤かというだけの差であった。当時はイズミヤのCD屋さんでも輸入盤を販売していたのである。
そんなことを全く知らない私は、H本君から借りたCDに入っていなかった曲が聴けて、かつお求めやすい輸入盤のほうを買った。

そのことを当時仲のよかった友人M宅に話すと、輸入盤はCDのプレス自体があまりよくないから、今後は控えたほうが良いと言ってきた。また、彼女は意外とBon Joviのことを知っていて「Jon Bon Jovi氏は胸毛がすごく濃いのだよ」ということを教えてくれた。

(次回 Deep Purple『Deepest Purple』に続く)

追記:本稿を書いている途中にBon JoviのベーシストであるAlec John Such氏の訃報のニュースが流れた。まだ何も知らなかった私ですら「Keep The Faith」のベースはものすごくカッコいいと思ったのを覚えている。そして、今もそれは変わらない。


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