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初めまして。主に詩など綴っていけたらなと思っております。読んでいただければありがたいで…

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初めまして。主に詩など綴っていけたらなと思っております。読んでいただければありがたいです。

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あの塔のウワサ、知ってるか? ああ、上まで行ったら 異世界に通じてるってやつだろ? だけどお前、オレ何度も登ったよ バカだなあの塔は人を選ぶんだよ 天井のアレ、魔…

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2年前
8

仮面

ごちゃごちゃした 街の通りで 歩いていると 出くわす 君の仮面 僕の仮面 踊るような 足取りで 人の中を すり抜けていく 僕らはいつも 行き過ぎる 哀しみの型通り 人の行…

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1年前
3

その森は未開の地だった 僕にとっては 濃い空気 重たい霧 そこかしこの闇 いつ切れるか 知れない ランプのオイルと食料 歩き続けても 気付けば 前に進めなくなっていた …

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1年前
4

カフェ

カフェで書き物をしていると 人が多くなり 落ち着かなくなってくる 時がある そんな時は 店主に断って 一度店の外に出る 裏手に回って 小さな扉をくぐり 中に入れてもら…

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1年前
7

山脈

連なる山脈のひとつが 僕に話しかけた 目を閉じて ただ聞き取る 音になりきらない声で 僕の名を呼ぶ 静寂そのもののような音だ じっとしていると 中身が全て 溶けてし…

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1年前
3

ボート

人が歩くよりも ゆっくりと、 葦の木立の中を ボートの舳先が かき分けて進んでゆく 白いドレスに ピクニックのかご 身じろげば キイキイ云う小舟で 少しずつ進む 木漏れ…

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1年前
6

飾られた 絵の中に 僕の心が 描いてあった 目が離せず 思わず人差し指で 眼鏡のブリッジを 持ち上げる 画廊のウインドウに 近づくと 春の嵐 そんなタイトルが 小さく読め…

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2年前
5

水色に 溶けていく 夢を見た 泡となり 消える それを 不幸だと 云うけれど 夢の中で 私はひとつだった どこまでも 広がる海と 続いていく 空気と もう一度 目を閉じる …

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2年前
5

びん

棚にたくさん並んでいる びんを少し離れて眺める 今日は 何を作ろうか? びんに手を触れながら 少し歩く 手に取ったのは 海が薫るびん そこから中身を また別のびんに…

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2年前
6

夜空のくらげ

夜空に虹が架かったら あいつの出番だ 僕はいそいそと 上着を着て 停留所で待っている とうの昔に人に棄てられた場所で 待っていることすら忘れた頃に いつもあいつはや…

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2年前
4

見上げると 鯨のお腹 あれほど大きいのに 宙に浮かんでいる いつか僕も 乗れればな 豪華客船を兼ねた 貨物船 ものが沢山 積めそうだ 青空に映える 黒と白 見上げる僕…

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2年前
5

爆ぜる闇

きらきらした闇が 僕の周りで爆ぜる 逸脱した屈折率 見えない柔らかさが 頬に当たる 人差し指が 何かに突っ込む 生温い風 爽やかな臭い それがどんなものか 確かめる…

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2年前
4

熱帯魚

手のひらに 小さな熱帯魚 僕の中に沈み また現れる 目を閉じたら 水音が聞こえた 哀しみの海 喜びの水平線 僕だっていつか 海に還る 僕の中の魚が 跳び跳ねた 心模様…

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2年前
6

月の平原

月の平原を飛ばしていく 僕たちのジープ ただの視察が 前任者の捜索になるなんて 音もないのに がたがたと車は走る 何もない場所が続く 誰も見当たらない 知らず ふう…

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2年前
4

足首

闇の向こうから 現れる二本の足首 浮かれたような足取りで 眠りの国へと誘う 僕は楽しくなってきて タンタタ、と足踏みした

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2年前
5

月夜の船

月に夢が架かる頃 鞄を持った紳士がひとり 月夜の船に乗ってきました 真夜中の空中はもはや 海と変わらないように感じます 波のような大気をかき分けて ゆっくりと船は進…

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2年前
5
塔

あの塔のウワサ、知ってるか?

ああ、上まで行ったら
異世界に通じてるってやつだろ?
だけどお前、オレ何度も登ったよ

バカだなあの塔は人を選ぶんだよ
天井のアレ、魔法じゃねえか

話に夢中な2人組は
私に気付かずすれ違う

ウワサの塔は役所も兼ねている
私はそこで出国手続きをするつもりだ

旅行かばんを持ち変えて
塔に入ると

そこにはいつもの
窓口はない

ドームの天井には
他の世界の星座が蠢

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仮面

仮面

ごちゃごちゃした
街の通りで
歩いていると
出くわす
君の仮面
僕の仮面

踊るような
足取りで
人の中を
すり抜けていく

僕らはいつも
行き過ぎる
哀しみの型通り

人の行く先に
広場があった
ダンスはもう
始まっている

冷たい指先を
溶かすように
傍にある人の手を取る

また出会った
僕の仮面
君の仮面

操られるように
ステップを踏む

森

その森は未開の地だった
僕にとっては

濃い空気
重たい霧
そこかしこの闇

いつ切れるか
知れない
ランプのオイルと食料

歩き続けても
気付けば
前に進めなくなっていた

ここまでかと思った刻
灯りが見えた

巨大な木のうろに
棲む一族が
僕を助けてくれた

僕がただの旅人で
冒険嘽を
生業にしていている
ことを告げると
口伝えの物語を
惜しげもなく
披露してくれた

木の外で火を囲んで
踊る

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カフェ

カフェ

カフェで書き物をしていると
人が多くなり
落ち着かなくなってくる
時がある

そんな時は
店主に断って
一度店の外に出る

裏手に回って
小さな扉をくぐり
中に入れてもらう

足を踏み入れると
その場所は違う空気を
纏っていることに気づく

鳥の声
森のような庭
一対のテーブルと椅子

そこに座ると
店主が表の店から
やって来て
さっき飲んでいたのと
同じコーヒーを出してくれる

不思議とその動作

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山脈

山脈

連なる山脈のひとつが
僕に話しかけた

目を閉じて
ただ聞き取る

音になりきらない声で
僕の名を呼ぶ

静寂そのもののような音だ

じっとしていると
中身が全て
溶けてしまって
山とひとつになった
気持ちがする

登山靴のひもを
結びなおし
山脈に向かって
歩きだした

側に行き
僕の方から
君に
話しかけるため

ボート

ボート

人が歩くよりも
ゆっくりと、
葦の木立の中を
ボートの舳先が
かき分けて進んでゆく

白いドレスに
ピクニックのかご
身じろげば
キイキイ云う小舟で
少しずつ進む

木漏れ日が
美しい影を生み
幻想の世界に
迷い込んだようだ

あなたは
少し格好をつけて
文庫本を取り出すと
船を漕ぐのをやめて
朗読を始めた

聴きながら
私はだんだんと
まどろんできて
目をつぶる

少し眠っていただけなのに
物語

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絵

飾られた
絵の中に
僕の心が
描いてあった

目が離せず
思わず人差し指で
眼鏡のブリッジを
持ち上げる

画廊のウインドウに
近づくと
春の嵐
そんなタイトルが
小さく読めた

淡いグレイの世界に
没頭する

唐突に
嵐の中僕は
切り立った崖の側を
歩いていた

足が
自分のものじゃない
感覚

ふと頭をよぎる
誰かの記憶

母に薬を買いに行くのだ
ここが一番の近道だから

ああ、ようやく街が見

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泡

水色に
溶けていく
夢を見た

泡となり
消える
それを
不幸だと
云うけれど

夢の中で
私はひとつだった

どこまでも
広がる海と
続いていく
空気と

もう一度
目を閉じる

たゆたう
これは
夢か現か

びん

びん

棚にたくさん並んでいる
びんを少し離れて眺める

今日は
何を作ろうか?

びんに手を触れながら
少し歩く

手に取ったのは
海が薫るびん

そこから中身を
また別のびんに移し替える

言葉を唱えながら
匙で掬って落としていく

本物の波のように
表面が泡立つ

繰り返される
波の模様

丁寧に蓋をして
包装する

これは故郷の
海が恋しいあの人へと贈ろう

明日きっと
訪ねてくる

そういう気持

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夜空のくらげ

夜空のくらげ

夜空に虹が架かったら
あいつの出番だ

僕はいそいそと
上着を着て

停留所で待っている
とうの昔に人に棄てられた場所で

待っていることすら忘れた頃に
いつもあいつはやって来る

空飛ぶくらげ
僕を夢の狭間まで運んでくれる

傘の上に乗り
真夜中の遊覧飛行

もう雲の上まで
月がこんなにも近い

美しい浮島に僕を降ろして
あいつは何処かへと去る
僕が礼を云う前に

夢の狭間で遊ぶのも楽しいが

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鯨

見上げると
鯨のお腹

あれほど大きいのに
宙に浮かんでいる

いつか僕も
乗れればな

豪華客船を兼ねた
貨物船

ものが沢山
積めそうだ

青空に映える
黒と白

見上げる僕と
見下ろす鯨

どうしてか
目が合った気がした

爆ぜる闇

爆ぜる闇

きらきらした闇が
僕の周りで爆ぜる

逸脱した屈折率

見えない柔らかさが
頬に当たる

人差し指が
何かに突っ込む

生温い風
爽やかな臭い

それがどんなものか
確かめる方法もない

眼を開けている
きっと、多分

だけど照らすより
照らされるよりも

余計に心地良い
泥水の中もがく気分

ここはどこだろう?

熱帯魚

熱帯魚

手のひらに
小さな熱帯魚

僕の中に沈み
また現れる

目を閉じたら
水音が聞こえた

哀しみの海
喜びの水平線

僕だっていつか
海に還る

僕の中の魚が
跳び跳ねた

心模様を
映して

月の平原

月の平原を飛ばしていく
僕たちのジープ

ただの視察が
前任者の捜索になるなんて

音もないのに
がたがたと車は走る

何もない場所が続く
誰も見当たらない

知らず
ふうっため息をつく

遠くに生き物が見えた
こんな場所に?

目を凝らすと
そこには犬が見えた

段々と近づいていく
そこで目が合う

犬ではない狼が
暗闇を背負って立っていた

相棒は慎重な運転だから
全く気がついていない

何も

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足首

足首

闇の向こうから
現れる二本の足首
浮かれたような足取りで
眠りの国へと誘う
僕は楽しくなってきて
タンタタ、と足踏みした

月夜の船

月夜の船

月に夢が架かる頃
鞄を持った紳士がひとり
月夜の船に乗ってきました

真夜中の空中はもはや
海と変わらないように感じます

波のような大気をかき分けて
ゆっくりと船は進みます

紳士は立ちすくみ
辺りに少し不気味な空気が
漂いました

他の乗客は彼を遠巻きにして
互いの話に夢中になっていました

突然紳士の躰が光に包まれました
帽子を取るとにこりと微笑みます

やあ、私は違う星からやって来ました

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