あの塔のウワサ、知ってるか? ああ、上まで行ったら 異世界に通じてるってやつだろ? だけどお前、オレ何度も登ったよ バカだなあの塔は人を選ぶんだよ 天井のアレ、魔…
ごちゃごちゃした 街の通りで 歩いていると 出くわす 君の仮面 僕の仮面 踊るような 足取りで 人の中を すり抜けていく 僕らはいつも 行き過ぎる 哀しみの型通り 人の行…
その森は未開の地だった 僕にとっては 濃い空気 重たい霧 そこかしこの闇 いつ切れるか 知れない ランプのオイルと食料 歩き続けても 気付けば 前に進めなくなっていた …
カフェで書き物をしていると 人が多くなり 落ち着かなくなってくる 時がある そんな時は 店主に断って 一度店の外に出る 裏手に回って 小さな扉をくぐり 中に入れてもら…
連なる山脈のひとつが 僕に話しかけた 目を閉じて ただ聞き取る 音になりきらない声で 僕の名を呼ぶ 静寂そのもののような音だ じっとしていると 中身が全て 溶けてし…
人が歩くよりも ゆっくりと、 葦の木立の中を ボートの舳先が かき分けて進んでゆく 白いドレスに ピクニックのかご 身じろげば キイキイ云う小舟で 少しずつ進む 木漏れ…
飾られた 絵の中に 僕の心が 描いてあった 目が離せず 思わず人差し指で 眼鏡のブリッジを 持ち上げる 画廊のウインドウに 近づくと 春の嵐 そんなタイトルが 小さく読め…
水色に 溶けていく 夢を見た 泡となり 消える それを 不幸だと 云うけれど 夢の中で 私はひとつだった どこまでも 広がる海と 続いていく 空気と もう一度 目を閉じる …
棚にたくさん並んでいる びんを少し離れて眺める 今日は 何を作ろうか? びんに手を触れながら 少し歩く 手に取ったのは 海が薫るびん そこから中身を また別のびんに…
夜空に虹が架かったら あいつの出番だ 僕はいそいそと 上着を着て 停留所で待っている とうの昔に人に棄てられた場所で 待っていることすら忘れた頃に いつもあいつはや…
見上げると 鯨のお腹 あれほど大きいのに 宙に浮かんでいる いつか僕も 乗れればな 豪華客船を兼ねた 貨物船 ものが沢山 積めそうだ 青空に映える 黒と白 見上げる僕…
きらきらした闇が 僕の周りで爆ぜる 逸脱した屈折率 見えない柔らかさが 頬に当たる 人差し指が 何かに突っ込む 生温い風 爽やかな臭い それがどんなものか 確かめる…
手のひらに 小さな熱帯魚 僕の中に沈み また現れる 目を閉じたら 水音が聞こえた 哀しみの海 喜びの水平線 僕だっていつか 海に還る 僕の中の魚が 跳び跳ねた 心模様…
月の平原を飛ばしていく 僕たちのジープ ただの視察が 前任者の捜索になるなんて 音もないのに がたがたと車は走る 何もない場所が続く 誰も見当たらない 知らず ふう…
闇の向こうから 現れる二本の足首 浮かれたような足取りで 眠りの国へと誘う 僕は楽しくなってきて タンタタ、と足踏みした
月に夢が架かる頃 鞄を持った紳士がひとり 月夜の船に乗ってきました 真夜中の空中はもはや 海と変わらないように感じます 波のような大気をかき分けて ゆっくりと船は進…
TSUMUGU
2022年6月5日 20:39
あの塔のウワサ、知ってるか?ああ、上まで行ったら異世界に通じてるってやつだろ?だけどお前、オレ何度も登ったよバカだなあの塔は人を選ぶんだよ天井のアレ、魔法じゃねえか話に夢中な2人組は私に気付かずすれ違うウワサの塔は役所も兼ねている私はそこで出国手続きをするつもりだ旅行かばんを持ち変えて塔に入るとそこにはいつもの窓口はないドームの天井には他の世界の星座が蠢
2022年10月2日 18:02
ごちゃごちゃした街の通りで歩いていると出くわす君の仮面僕の仮面踊るような足取りで人の中をすり抜けていく僕らはいつも行き過ぎる哀しみの型通り人の行く先に広場があったダンスはもう始まっている冷たい指先を溶かすように傍にある人の手を取るまた出会った僕の仮面君の仮面操られるようにステップを踏む
2022年9月19日 16:16
その森は未開の地だった僕にとっては濃い空気重たい霧そこかしこの闇いつ切れるか知れないランプのオイルと食料歩き続けても気付けば前に進めなくなっていたここまでかと思った刻灯りが見えた巨大な木のうろに棲む一族が僕を助けてくれた僕がただの旅人で冒険嘽を生業にしていていることを告げると口伝えの物語を惜しげもなく披露してくれた木の外で火を囲んで踊る
2022年9月4日 16:58
カフェで書き物をしていると人が多くなり落ち着かなくなってくる時があるそんな時は店主に断って一度店の外に出る裏手に回って小さな扉をくぐり中に入れてもらう足を踏み入れるとその場所は違う空気を纏っていることに気づく鳥の声森のような庭一対のテーブルと椅子そこに座ると店主が表の店からやって来てさっき飲んでいたのと同じコーヒーを出してくれる不思議とその動作
2022年9月1日 18:47
連なる山脈のひとつが僕に話しかけた目を閉じてただ聞き取る音になりきらない声で僕の名を呼ぶ静寂そのもののような音だじっとしていると中身が全て溶けてしまって山とひとつになった気持ちがする登山靴のひもを結びなおし山脈に向かって歩きだした側に行き僕の方から君に話しかけるため
2022年8月28日 16:44
人が歩くよりもゆっくりと、葦の木立の中をボートの舳先がかき分けて進んでゆく白いドレスにピクニックのかご身じろげばキイキイ云う小舟で少しずつ進む木漏れ日が美しい影を生み幻想の世界に迷い込んだようだあなたは少し格好をつけて文庫本を取り出すと船を漕ぐのをやめて朗読を始めた聴きながら私はだんだんとまどろんできて目をつぶる少し眠っていただけなのに物語
2022年8月7日 21:07
飾られた絵の中に僕の心が描いてあった目が離せず思わず人差し指で眼鏡のブリッジを持ち上げる画廊のウインドウに近づくと春の嵐そんなタイトルが小さく読めた淡いグレイの世界に没頭する唐突に嵐の中僕は切り立った崖の側を歩いていた足が自分のものじゃない感覚ふと頭をよぎる誰かの記憶母に薬を買いに行くのだここが一番の近道だからああ、ようやく街が見
2022年8月6日 16:02
水色に溶けていく夢を見た泡となり消えるそれを不幸だと云うけれど夢の中で私はひとつだったどこまでも広がる海と続いていく空気ともう一度目を閉じるたゆたうこれは夢か現か
2022年7月31日 20:09
棚にたくさん並んでいるびんを少し離れて眺める今日は何を作ろうか?びんに手を触れながら少し歩く手に取ったのは海が薫るびんそこから中身をまた別のびんに移し替える言葉を唱えながら匙で掬って落としていく本物の波のように表面が泡立つ繰り返される波の模様丁寧に蓋をして包装するこれは故郷の海が恋しいあの人へと贈ろう明日きっと訪ねてくるそういう気持
2022年7月23日 20:53
夜空に虹が架かったらあいつの出番だ僕はいそいそと上着を着て停留所で待っているとうの昔に人に棄てられた場所で待っていることすら忘れた頃にいつもあいつはやって来る空飛ぶくらげ僕を夢の狭間まで運んでくれる傘の上に乗り真夜中の遊覧飛行もう雲の上まで月がこんなにも近い美しい浮島に僕を降ろしてあいつは何処かへと去る僕が礼を云う前に夢の狭間で遊ぶのも楽しいがく
2022年7月5日 21:08
見上げると鯨のお腹あれほど大きいのに宙に浮かんでいるいつか僕も乗れればな豪華客船を兼ねた貨物船ものが沢山積めそうだ青空に映える黒と白見上げる僕と見下ろす鯨どうしてか目が合った気がした
2022年7月3日 21:15
きらきらした闇が僕の周りで爆ぜる逸脱した屈折率見えない柔らかさが頬に当たる人差し指が何かに突っ込む生温い風爽やかな臭いそれがどんなものか確かめる方法もない眼を開けているきっと、多分だけど照らすより照らされるよりも余計に心地良い泥水の中もがく気分ここはどこだろう?
2022年7月2日 21:04
手のひらに小さな熱帯魚僕の中に沈みまた現れる目を閉じたら水音が聞こえた哀しみの海喜びの水平線僕だっていつか海に還る僕の中の魚が跳び跳ねた心模様を映して
2022年7月1日 21:43
月の平原を飛ばしていく僕たちのジープただの視察が前任者の捜索になるなんて音もないのにがたがたと車は走る何もない場所が続く誰も見当たらない知らずふうっため息をつく遠くに生き物が見えたこんな場所に?目を凝らすとそこには犬が見えた段々と近づいていくそこで目が合う犬ではない狼が暗闇を背負って立っていた相棒は慎重な運転だから全く気がついていない何も
2022年6月23日 21:46
闇の向こうから現れる二本の足首浮かれたような足取りで眠りの国へと誘う僕は楽しくなってきてタンタタ、と足踏みした
2022年6月22日 20:55
月に夢が架かる頃鞄を持った紳士がひとり月夜の船に乗ってきました真夜中の空中はもはや海と変わらないように感じます波のような大気をかき分けてゆっくりと船は進みます紳士は立ちすくみ辺りに少し不気味な空気が漂いました他の乗客は彼を遠巻きにして互いの話に夢中になっていました突然紳士の躰が光に包まれました帽子を取るとにこりと微笑みますやあ、私は違う星からやって来ました