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その森は未開の地だった
僕にとっては

濃い空気
重たい霧
そこかしこの闇

いつ切れるか
知れない
ランプのオイルと食料

歩き続けても
気付けば
前に進めなくなっていた

ここまでかと思った刻
灯りが見えた

巨大な木のうろに
棲む一族が
僕を助けてくれた

僕がただの旅人で
冒険嘽を
生業にしていている
ことを告げると
口伝えの物語を
惜しげもなく
披露してくれた

木の外で火を囲んで
踊る人びとに見とれながら
僕は寒かった心が
温まったのを知った

どこにでも
人びとは故郷をつくる
僕がただ
知らないだけで
未開の地など
存在しないと
改めて
知る

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