見出し画像

ボート

人が歩くよりも
ゆっくりと、
葦の木立の中を
ボートの舳先が
かき分けて進んでゆく

白いドレスに
ピクニックのかご
身じろげば
キイキイ云う小舟で
少しずつ進む

木漏れ日が
美しい影を生み
幻想の世界に
迷い込んだようだ

あなたは
少し格好をつけて
文庫本を取り出すと
船を漕ぐのをやめて
朗読を始めた

聴きながら
私はだんだんと
まどろんできて
目をつぶる

少し眠っていただけなのに
物語の世界が
立ち現れてきて
私は軽く頭を振って
目を覚ました

目の前には
変わらず
旧いボートと
あなたの読む物語




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?