月の平原

月の平原を飛ばしていく
僕たちのジープ

ただの視察が
前任者の捜索になるなんて

音もないのに
がたがたと車は走る

何もない場所が続く
誰も見当たらない

知らず
ふうっため息をつく

遠くに生き物が見えた
こんな場所に?

目を凝らすと
そこには犬が見えた

段々と近づいていく
そこで目が合う

犬ではない狼が
暗闇を背負って立っていた

相棒は慎重な運転だから
全く気がついていない

何も言えないまま
あっという間に遠ざかる

今見たことが信じられず
息を飲む

相棒が僕の名を呼んだ
僕はいつの間にか震えていた

あれが前任者だったとしたら?
信じられない思いで口を開いた

どうする、もしも
僕が他の動物になってしまったら

相棒は面白そうに笑うと
どっちでもいいさ、と答えた

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