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経歴に書くことが無いのが困る

私は、高卒で、美大に行ったわけでもありませんし、どこか有名な工房で修行をしたわけでもありませんし、どこかの美術団体に所属もしておりませんし、組合や団体にも所属しておりません。また、受賞歴もありません。

なのでデパートなどでの個展の際に「経歴を送って欲しい」と言われて、送るとあまりに経歴がカスカスなので「もうちょっと何か無いのか?」と言われることがあるのですが「ありません」としか言いようが無いのです。

自分でも経歴をみると「うわー、うさんくせー、自称アーチストってかぁ?」という感じを受けます。こんな私を信用して下さった方々には感謝しかありません。。。

しかし、学歴や資格が必要な仕事ではなかったのが幸いでしたね。誰でも今日から名刺をつくれば、創作の人になれますよ。

私自身は

「学歴なし、修行なし、所属なし、受賞歴なし、全て無い無いで、都内で家族と、弟子を抱えながら、制作だけで市井のオッサンとして生活出来るか?という実験」

をしているところもあります。

「信用されやすい経歴が無い」というのは「作品が連鎖的に社会に認知され広がることが無い」ということなのです。

学歴、留学歴、修行歴、受賞歴、美術団体の会員であること、学校の講師や教授であること、有名な人の愛用であること、有名雑誌で常に名前が出ていること、などの「権威」が加われば、その権威という舟に作品が乗り、社会に運ばれていくことになります。

「世の中に認められている人なんだ(安心)」→「うん、だから良い作品なんだね」

という流れになります。

それが、私にはありません。

だから、かなり大変です。

作者の経歴に安心出来る権威の認定が無く、作者の背景が良く分からない作品に、ウッカリ感動してしまったりすると、人は不安になります。

「なんだか分からないけど、こんなものに心を動かされてしまった、オレの感性はおかしいのだろうか?(不安)」

となるものなのです。

飲食店などの場合は、美味しくて、接客が良くて、価格と釣り合っていればそのまま受け入れてもらえますが、特にアートや工芸分野の場合は、人は作品の周り、作者の背景に「権威を欲しがる」ものなのです。

なので、私は

「純粋に作品力と作者の考え方の表明だけで勝負」しなければなりません。

まあ、私個人は、それでこそ純粋に作品の力で社会と切った張ったの勝負!感があって良いのですが。

だから、創作する人たちは、どこかの美術団体で賞をもらったり、入選を繰り返して正会員になりたいのです。商売する、認知してもらうには「権威」が必要なのですね。

例えば、何か人々の注意を引く作品があり、人々を感動をさせたとします。

それだけでは作品も作者も信用されません。

人々は、作品に感動はしてくれてもそれで「購入」まではしてくれないものなのです。

ある意味、作品で人々の心を動かすことは、それほどむづかしくはありません。ある程度の才能や技術のある人なら、それは可能です。しかし「安くない価格で購入していただく」のは(創作で生活出来るだけの金額=かなり高い)段違いにむづかしくなるのです。

アートや美術工芸などの創作品は「権威ある〇〇さんの作品を持っている」ということが価値で、購入動機であることが多いものなのです。

純粋に、その作品が好きだから、と買う人は本当に数少ないのです。

私は、そういう人々に支えられるという幸運に恵まれました。

私は、独立するまでにいろいろな仕事を体験しましたが、飲食関係が多かったですね。現在の仕事に関わるものでは、染めの工房に26歳の時に営業として入り、途中から営業をしながら染めの手伝いもする、という立場で三年間過ごしただけです。

が、三年目で会社を潰されてしまい、放り出されて強制的に独立になってしまったのです。24歳の時に結婚していたので、なかなか厳しい状況に置かれましたが、チャンスだとも思いました。

急に放り出され、全く支援もなく、その元いた会社の代表からのヒドイ妨害などもあったため、ゼロどころかマイナスからのスタートになりました。今と違ってネットの時代ではありませんし、妨害による行動範囲の制限、人脈も無い。知識も無い。仕事場も無い。まるで池井戸潤氏の小説のようなことが起こりましたねー。

そんな八方塞がりの時に、初めての子が出来たりと、お父さん大ピンチでした。

それが29歳の時で(現在53歳=2018年時)、その時からずっと制作一本で生活しております。一年目は流石に赤字でしたが、二年目からはどうにか黒字に出来ました。

流石にもう24年ぐらい制作一本で生活していますので、言われないようになりましたが、以前は業者さんなどに「そんなんでやって行けるわけが無いだろう!オマエは嘘をついているんだ!」などと絡まれました。

その他、家が資産家だから家にたかってやっているんだ、とか、代々その仕事をしているんでしょ?とか。独身で気楽にアーティストぶっているヤツとか、散々言われますが、私はフツーの市井に生きる家庭持ちのオッサンなのであります。

それでどうにかやっているんだから、仕方がない。嘘行って家賃が払えて生活費が産まれるなら嘘言いますけどね。

そんな生活なので、いつも綱渡りです。

私は「いつも何か作っていないと死ぬ病」(笑)なので、これで生きるしかないのです。

ジャンボ宝くじの一等が当たって欲しいです。


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