見出し画像

命の責任。FTMの子供作る作らない問題

僕はLGBTQのT。女から男に戸籍を変えて生きるFTMトランスジェンダー。1980年生まれ 鈴木優希。
仕事は地元である名古屋で同じLGBTQ当事者を雇用したBARを2軒経営している。FTMを積極的に雇用したVenusビーナスとレズビアンを雇用したWダブル。当事者として、雇用こそが僕の出来る最大の支援だと考えている。

FTM最大の悩み

それは女であること。だが治療として性別適合手術がある。
元気な身体にメスを入れるリスクを受け入れれば、胸のふくらみも消すことが出来るし子宮卵巣も摘出すれば戸籍も男に変えることが出来る。ホルモン治療によって髭が生えたり、ごつくなったり、外見も男っぽくすることが可能。

見た目や社会的な認知は、覚悟を決まれば何とかは出来る。結婚だって出来る。

簡単ではない子供の問題

ガイドラインに沿って性別適合手術で自分の体を変えることと
パートナーの理解があれば、望んだ性の男として生きていくことは可能。
僕も32歳の時、店で知り合った6個下の看護師の彼女と結婚した。
幼いころから無理だと思っていた憧れの結婚という事もあって入籍をして豪華に結婚式も挙げた。
幸せの絶頂だった。

が、後に結婚がゴールではないという事を知ることとなる。

そこからは「生活」が待っていた。
昼夜逆転の水商売。経営者と言っても毎夜現場である店に出る暮らし。出会いも刺激もある毎日に僕は「旦那」になることが出来なかった。

そんな家庭をかえりみない僕を見かねた奥さんが「子供が欲しい」と提案したのは結婚してから二年ほど経ったときだっただろうか。
子供が出来れば「家に帰ってくる」「ちゃんとしてくれる」そう思ったんだろう。この頃の彼女の気持ちを考えると本当に申し訳なかったと今は反省。
僕はこれまで何でも本能の赴くままにノリと勢いだけでやってきた。
自分が性同一性障害だと受け入れてからは、ひたすらに男に負けたくないと思ってやってきたし、FTMだから出来ない。ということが大嫌いだった。

その流れで行くと、子供も...そう思うのかと自分でも考えていたが僕の気持ちは複雑だった。

命。の責任

普通ならば「出来ちゃった」があるが僕たちFTMはそうはいかない。
覚悟を持って、計画をして「作る」ことをしないといけない。

僕の遺伝子=父の精子、弟の精子なら...と提案したが、普通に顔を合わせる距離感の間柄であることと弟には奥さんも子供もいた為彼女は乗る気ではなかった。
「精子提供をしてもらって産みたい。私が産めばそれは私たちの子であり可愛いでしょ?」と言った。

自分の子供、血の繋がりのない子を育てることが出来るのか?

何度も自問自答したが、親になる覚悟。父親になる自信がどうしても僕にはなかった。
それは自分に信用がないからだ。

彼女は里親というものも探していたようだが、収入があっても水商売。子供を育てる環境的に認められないということだった。

もっと二人で熱意を持って真剣に取り組めばもしかしたら状況は変わっていたかもしれないががそれもタイミング。今となってはそれでよかったのかもと思う。

子供の気持ちを考えると、僕が元女と知ったらどうなんだろう。イジメられたらどうしよう。結婚は反対されなかったが子供となると、「それはエゴなんじゃないか?」そんな声もあった。

覚悟を持って親になることが
こんなに難しいとは思わなかった。

トランスジェンダーでも同性カップルでも子供を作り立派に親になっている人たちもいる。賛否はあると思うが、人に言われなくても当人たちが十分に考えた結果であるから自分達、そして一番に子供が幸せならオールOK。
僕は自分が出来なかった「覚悟を持って親になる選択」を選んだ人たちを心からリスペクトしている。

命の責任は重い。覚悟が必要。子供を持ちたいという普通なら自然な感情も僕たちにとってはシビアな問題になる。
LGBTQの容認が進むこの時代でもその重さは変わらない。
変わってはいけない大きなテーマ。
やっぱりやめた!は通用しない。しっかり悩んで選択を。

それぞれの人生。豊かさの基準は違って良い。

42歳。鈴木優希。
今の所、子供のいない人生を選択しているがそれもまたこの先に出会う人によって変わるかもしれない。もしこの先、子供が欲しい!そう強く思った時はまた悩んで決断しようと思う。

鈴木優希監修 LGBTに特化したボードゲーム LGBTQセレクトライフ好評販売中!!


鈴木優希のセミナー活動関連のお知らせ、性同一性障害のお子様を持つ親御さんへのメッセージなどLGBTについてのコンテンツを掲載しているオフィシャルサイトもご覧いただけたら嬉しいです。そしてコメントもお気軽にお待ちしています。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?