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カフェ的空間を生み出す対話手法:ワールド・カフェ(World Cafe)とは?

今回は、ワールド・カフェという(World Cafe)対話の場づくりの方法についての簡単なまとめです。

私がワールド・カフェをはじめとする対話の手法に出会ったのは2013年のことで、ちょうど10年前の今頃(3月末)でした。

仲間たちとの地元での合宿風景

「関西で、これからの未来を探求する対話の場づくりを1000人規模で実施する」をめざして始まった任意団体にて、月に1回以上ワークショップを実施していたのも懐かしい思い出です。

その頃に、アダム・カヘン氏や嘉村賢州氏といった、今の私に大きく影響を与えている恩人にも出会うことができました。

現在もその流れから新しい家族、集落、組織、社会のあり方についての探求は続いています。

今回は、そのような経緯で出会ったワールド・カフェについて、可能な限り簡潔にまとめてみようという試みです。


ワールド・カフェ(World Cafe)とは?

ワールド・カフェは1995年、アニータ・ブラウン氏(Juanita Brown)デイビッド・アイザックス(David Isaacs)氏によって、1995年に開発・提唱された対話のプロセスです。

堅苦しい会議よりも、コーヒー片手に雑談がてら話した方が対話は盛り上がる!盛り上がったついでに、テーブルクロスに対話で話されたアイデアをメモしてしまおう!

そんな2人の経験から生み出され、体系化された対話プロセスです。

どのように対話を進めるか?

オーソドックスな方法は、グループごとの対話を時間を区切って3ラウンド行う方法です。

参加者は、ファシリテーターによって問いかけられる「問い」をテーマに、各グループで自由に話し合いを進めていきます。

時間ごとにグループを移動しながら、場全体で話されているものに耳を傾ける

1ラウンド目が終わった時、同じグループのメンバーはある1名を残し、別のグループへと旅立ち、また違った人と次のラウンドをご一緒します。

リアルの会場であれば、開発者2人が使ったテーブルクロスに見立てた模造紙をテーブルの中心に置き、対話の中で生まれる気づきを書き留める等します。

各グループは6人以内程度。テーブルクロスに見立てた模造紙が真ん中に

また、テーブルの中心にトーキングオブジェという話し手の目印を置いておき、持っている人が話をし、残りの人が聴くという工夫をすることで、一人ひとりの話を遮ることなく尊重して聴き合う関係性を作ることもできます。

発言が苦手、緊張している場合でも、気づきを書くことで場に参加することができます

そして、最後の3ラウンド目に1ラウンド目と同じグループに戻ってくると、別のグループで話されていた内容が、1つのグループに持ち寄られることになります。

テーブルには対話の中で書き込まれた模造紙も残っており、より豊かな対話の時間を作ることができる、というものです。

7つの原理とは?

ワールドカフェは、以下の7つの原理を大切に運営されます。

コンテクストを設定する
Set the Context

もてなしの空間を創造する
Create Hospitable Space


大切な質問を探求する
Explore Questions That Matter 


全員の貢献を促す
Encourage Everyone's Contribution


多様な視点を多家受粉させて、つなげる
Cross-Polinate and Connect Diverse Perspectives


パターン、洞察、そして深い質問に共に耳を澄ませる
Listen Together for Patterns, Insights, and Deeper Questions


集合的な発見を収穫し、共有する
Harvest and Share Collective Discoveries

国内事例:大規模ダイアログ

2009年:イマジン・ヨコハマ

イマジン・ヨコハマは、開港150周年を記念して横浜の都市ブランドを市民参加型で作り上げていくプロジェクトとして始まりました。

2009年3月に開催されたキックオフ・ワークショップには約200人が集い、200人が同じ場で同時に、横浜に対する想いや意見を語り合う場がワールドカフェ形式で運営されました。

2012年:ふくおか未来カフェ

2012年には「福岡市の未来をつくるワールドカフェ」として、福岡市総合計画へのパブリックコメント募集のキックオフを兼ねて、ふくおかの未来を語りあうワールドカフェが開催されました。

当日は約500名の方が一堂に会しながら、福岡国際会議場にて福岡市の未来について語り合われたといいます。

国内事例:官民協働まちづくり事業

京都市未来まちづくり100人委員会

京都市未来まちづくり100人委員会は、2008年〜2016年まで京都市で実施されていた、市民の主体的なまちづくりの取組と協働を創出していくことを目的とする事業です。

京都市から受託を受けた運営団体によって第1期〜第3期、第4期〜第5期とで運営方法が大きく異なることが特徴であり、市民の意見やアイデアを市政に反映するため、組織開発で実施されていた対話の手法およびプロジェクト運営の方法の応用が、全国に先駆けて実施されました。

第1期〜第3期においては、ワールドカフェ、オープンスペーステクノロジー等の対話手法を用いて取り組むべき課題を浮かび上がらせ、それらを解決していくための市民主導のプロジェクトチームを、京都市、NPOによる事務局が支援するといった形で事業が進められていました。

関連団体

以下、国内でワールドカフェを語る上で欠かせないキープレイヤーおよび団体を紹介します。

株式会社ヒューマンバリュー

株式会社ヒューマンバリューはワールドカフェに関する初の書籍である『ワールド・カフェ〜カフェ的対話が未来を創る〜』の出版に携わった、人材開発・組織変革に取り組む研究・コンサルティング会社です。

特定非営利活動法人ミラツク

特定非営利活動法人ミラツクは、2008年に任意団体ダイアログBarとしてスタートした団体です。2009年12月までにワールドカフェを活用した対話の場を30回を開催し、あらゆる分野の企業人、デザイナー、コンサルタント、NPOリーダー、大学教員、学生など1500人が参加しました。

2011年にNPO法人としての法人格を得て以降は、未来社会デザインに取り組むべくツール開発、プロセス開発、サービス提供に取り組んでいます。

古瀬ワークショップデザイン事務所

古瀬ワークショップデザイン事務所は、古瀬正也氏が代表を務める個人事務所です。

古瀬氏は、文部科学省「平成24年度男女共同参画社会の実現の加速に向けた学習機会充実事業」においてワールドカフェをはじめとするワークショップデザイン、ファシリテーションを務めて以降、行政におけるワークショップの実施に取り組まれています。

また「男女共同参画推進のためのワールド・カフェ実践手引書」の編集・制作に携わり、現在はその改訂版が公開されています。

FAJ:日本ファシリテーション協会

日本ファシリテーション協会は、ファシリテーションの普及をめざして2003年に設立された民間非営利団体です。

2004年に内閣府よりNPO法人の認証を受けた後、ビジネス・まちづくり・NPO・教育・環境・医療・福祉などの多様な領域における国内のファシリテーションの普及と実践に取り組んできました。

関連書籍

ワールド・カフェはいくつかの書籍でも紹介・解説されているので、よろしければそちらもご覧ください。

ホールシステム・アプローチ:1000人以上でもとことん話し合える方法

えんたくん革命:1枚のダンボールがファシリテーションと対話と世界を変える

はじめてのファシリテーション:実践者が語る手法と事例

未来が見えなくなったとき、僕たちは何を語ればいいのだろう


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