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ふるさとが恋しくて、春〜マイ・野沢菜ラブストーリー

1年前のこの日、3月17日は、フランスで第1次コンフィヌモンが始まった日。

前日の夜、大統領演説での「Nous sommes en guerre」。いまでも語り継がれる「我々は戦時下にある」発言だ。この演説の数時間後からレストランは完全クローズとなり、生活必需品以外の商店も文化施設も全て閉鎖となった。

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たしか最初は2週間くらいの予定だったような気がするけど、期間がどんどん延長されて最終的に5月11日まで続くなか、プロフィールにしている記事にも書いているように、私の1日1クリエイション生活が始まった。まあこれがきっかけでnoteを始めることにもなったので、それは結果的にはよかったのだけど。

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命を救おう、家にいよう

あれから1年経った今、社会ではワクチン接種が高齢者から始まって、家を出る時はマスク、消毒ジェルは街の至る所で見かけるようになり、新しい生活様式なるものも徐々に浸透し始めているのだと思う。

私個人としては、基本的に1年前と日々やっていることが変わらないと思うと震えがとまらない一方、新しく始めたこともあるし、「ないものはどうにかする」精神でサバイバル能力が上がった気がする。

ただ、さすがにそろそろ故郷の土地を踏みたい。電波上じゃなくて直に日本の家族に会いたい。

そんなこんなで、最近ことさら望郷の念に駆られる一方だ。


きっかけは、いつも

私に壮大なるロシアン明太子ストーリー(3部作)のきっかけをくれた、ミラノ在住すずきけいさんのツイートが目に入ってきた瞬間、過敏化している私の望郷センサーが即座に反応した。

NOZAWANA、ノザワナ、野沢菜・・・


我が故郷信州を代表する菜っぱ、それが野沢菜である。

地元じゃひと家庭ひと樽なんて言われていて、幼い頃は祖父母の家に行くたびに出されるお茶うけが、塩っ辛い野沢菜&漬物仲間たちと、これまた塩味のするりんご(塩水にさらしているため)。当時の私は幼心にクッキーとか食べたいとぶー垂れており、正直漬物全般が嫌いだった。

年齢を重ねても、20代中頃くらいまではそんなに酒飲みではなかったので、もれなく我が家にも大きな樽で父が毎年野沢菜を漬けてくれていたのだが見向きもせず。

嗜好が変わったのが、日本酒好きの親友の影響で日本酒の世界に足を踏み入れてから。味覚が急激に大人になり、さらに吉田類化した現在、こういう漬物的なものがたまらなく恋しくなるようになった。

父が毎年漬けてくれていたようなしょっぱい野沢菜が、食べたい・・・!


謎解き・イタリアの菜っぱ

すずきけいさんのツイートにある「cima di rapa」という菜っぱの正体は一体なんなのだろう?ググってみると、最上部にあがってのがこちらのページ。

En Italie on parle de cime di rapa, de broccoletti et de rapini, en France on le connait aussi sous le nom de brocoli-rave, brocoli-feuilles ou pousses de brocoli. Pas facile de s'y retrouver ! (上の記事より引用)

フランスではどうやら「ブロッコリーの葉っぱ」的なものと呼ばれるらしい。「brocoli-rave」というのは「rave」がカブの意味なので、ブロッコリーカブ?なんやら正体がよくわからない。。

しかも最後に「見つけるのは簡単じゃない!」って書いてあるYO。これは冒険家の血が騒ぐぅ!


北国の道の駅にて

パリ市内のスーパーとか大きめのマルシェを見てみたけれど、そんなものは見当たらない。まあやっぱり難しいんだろうなと脳内からワードを消去しはじめていたのも束の間、あれは北国に行った際、道の駅的な産地直売所を訪れたときのこと。

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ブロッコリーの葉っぱなんて見つからないよなあと思いつつ探索していたら、なかなか珍しいものを見つけた。
葉っぱ付きのカブだ。

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フランスでは、カブは葉っぱ部分がばっさり切られた状態で売られているので、このような状態で売られていることは稀。この葉っぱを油炒めにしたりお味噌汁に入れたりするとこれがまた美味しいのよね。

・・・ここでふと、野沢菜のことが頭をよぎる。
「そういえば、そもそも野沢菜ってなにものなんだっけ?」という根本的な疑問。田舎なので電波の少ないなか、ようやく繋がったウィキペディア。

なんでも、こういうことらしい。

「一般的にカブの品種で、野沢温泉村では蕪菜(かぶな)と呼んでいたが、大正時代に開設されたスキー場を訪れた都会のスキー客が蕪菜の漬け物に感激して『野沢菜漬け』と愛称を付け、それが全国的になって野沢菜、野沢菜漬けという呼び名が定着した」。

・・・もうこれ、カブの菜っぱでいいっしょ!?

ひと束買って、北国をあとにした。


父に教えを乞う

野沢菜漬けの師匠、父に早速教えを乞うてみた。

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そもそも樽もなければ、漬ける菜っぱも少ししかないし、そもそも野沢菜の素ってなにもの・・・!?

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最終的にはネットに頼れとのお達しだったけれど、量が少ない場合はこの「切り漬け」という方法を使えばいいことはわかった。


執念実る、パリのマルシェで

やっぱりもう少し量が欲しい強欲な私は、最後のあがきで、前に偵察したのと違うパリのマルシェへ向かう。葉っぱ付きのカブは〜、ござらんかね〜〜。

ビオのお店で部分的に菜っぱ付きのカブは発見。惜しい・・・!

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まあしょうがない、父の言っていた少量で切り漬けってやつにしようかと、魚屋でイカだけ買って帰ろうとしたそのとき、通りかかった八百屋テント。
奥のほうにみゆる葉っぱたちのひとつ、ほうれん草のとなりに・・・え??

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えええええ!?

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「CIME DI RAPA」って書いてあるけどこれ、cima di rapaのことでしょう!?イタリア産って書いてあるよ!!あるじゃん!!!!

そのものを見つけてしまってにやけ笑いがとまらない。
とりあえずうちにある最大のタッパー積載量を鑑み、500gほど買ってスキップしながら家路についた。


菜っぱ2種、漬けよう

期せずして菜っぱだらけになってしまった光景に、これどーしよう・・・と。とりあえずランチしながら作戦を練ることにした。

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この日のご飯のおともは、自家製明太リベンジの明太子。今回は前回の反省点が改善されてさらにかなりいい感じに仕上がった。おかずは、前日のサバ缶のあまりをただ焼いて大根おろしライム醤油ちょろり(デリシャス!)

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海の幸で満たされたところで、菜っぱだ菜っぱ。

cima di rapaは父の教え通り(ただしタッパー使い)、カブは切り漬けにすることにした。料理酒、前週に調達しておいてよかった。

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まずは菜っぱをぬるま湯でよーーーく洗う。

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タッパーに半量入れて、

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塩をふりかけて、酒と昆布と鷹の爪を投入。

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さらにその上に半量の菜っぱを入れて塩をふりかける。

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これでタッパーの半分くらいの高さまででおさまったので、アルミホイルで中蓋をしてちょうどいい高さのツナ缶を重しがわりにしてぎゅっと押し込み蓋をして、さらにその上に味噌とか重いモノをのせて冷蔵庫にいれた。


次、カブの切り漬けなるものは、こちらのサイトを参考に。

短時間で浸かると書いてある割には1週間後が食べごろというのが面白い。

カブの身も一緒につけることにした。

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一晩経つどころか、その日はちょうど夜に山賊焼を作ったので、故郷つながりでフライングで食べてみることに。左上にみゆるのがこのカブのなんちゃって野沢菜風。

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さすがに実のほうはまだまだだったけれど、葉っぱはすでに食べごろだった。


さて、出来のほうはいかに?

途中で何度か様子をみながら、重しを外して、完成。

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見た目そっくりそのまま野沢菜!!
そんでもって味もほぼほぼそのまま!!

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カブもまけちゃいない。
醤油と砂糖・みりんなどが入っているのでよりご飯に合う感じ。

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一気に海を超えて、故郷に飛んだ気分に。
これは大金星である。ミラノのすずきさん、グラッツィエ!!!


野沢菜メニュー、ギャラリー

白いご飯が無限にいけるのはもちろんだけど、野沢菜はほかにも活躍の場が広いのが素晴らしい。ここ数日で作ったものを最後にいくつか紹介しよう。


【×自家製明太子チャーハン、うずらの卵のせ

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鶉卵のせは、anco.labさんが以前作られていたネコムライスなるものにインスパイアされている。私は強欲なので1つじゃ物足りず、3つものせているけれど。


×自家製明太子のパスタ、おろしのせ

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明太子と細かく切った野沢菜をボウルにいれて、バターと昆布茶、茹で上がったパスタと茹で汁少量いれて混ぜただけの、控えめにいって最高な一品。


【×おろし、納豆、卵黄のせTKG

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いわずもがな、醤油をまわしかけて、秒でなくなるやつです。


本場で本場のものを食べたい。
でもそれが叶わない今、なければつくればいいし、なければ代用すればいいのよ。


制作・著作
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