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記事一覧
毎日超短話673「海のピ」#毎週ショートショートnote
「ねえねえ、海のピなんだからさあ、海に行かない?」
「えー、海のピって言ったってさ、ここから海まで何時間かかると思ってるの?」
「いいじゃん、旅行だと思えば〜」
「旅行だなんて、母のピが許してくれないよ」
「え、別に恋人同士でもないのに」
「恋人に見られるんだよ、異性っていうだけで。うちの母のピは、そういうタイプなんだよ」
「そうなのかー、うちなんて、母のピ、父のピ、猫のピすらも干渉しないけどなあ
毎日超短話561「桜回線」 #毎週ショートショートnote
「声は一瞬で届くのに、桜前線はゆっくり北上するね」
開花宣言はまだ出ていないけれど、チラホラと桜が咲きはじめている。そのことを遠距離恋愛中の恋人に話そうと、電話をかけた。彼女の町に桜が咲くのはまだずっと先のことだ。
「ほんとだよ、声は一瞬なのにね。俺前線も一瞬で北上できたらいいのになあ」
ぼくがそう返事をすると彼女は、「一瞬で来れたら困るから」と笑った。浮気でもしてるんじゃないの? って冗談
毎日超短話510「青赤写真店」 #シロクマ文芸部
「青写真と赤写真、どちらにいたしますか?」
フィルムを現像してもらおと写真屋に行くと、そう聞かれた。普通に現像してもらいたいのだけど、看板に「青赤写真店」と書いてあったのを思い出す。
「えっと……」と戸惑っていると、「青写真は未来を、赤写真は過去を願っているように現像できます」とにこやかに写真屋は案内する。
確かこのフィルムは少し前、母の写真を撮った。入院している母親が映っているはずで、青写
毎日超短話496「雪化粧」 #シロクマ文芸部
雪化粧するかなあ。と彼女が言って、そうだねえとぼくは答えている。空からは今まさに、雪が降り出したところだ。
「あたしさ、アイスバーンを滑るの得意でさ、学校行くとき密かにタイム図ってるさ」
雪化粧よりも、アイスバーンになるのを彼女は期待しているようだった。明日雪が積もったら、とぼくは言う。
「コーラをばら撒いて、コーラバーンにしてみない?」
「なにさ、それ。それで自己新出たら、ドーピングだわ」
【カバー小説】足が速いOL 原作:椎名ピザさん
こちらの小説をアレンジカバーさせて頂いてます↓
あいつは仕事が遅い。わたしはまわりからそんな陰口を言われているみたい。仕事が遅いのは自分でも自覚をしているし、まわりから言われるのも仕方がないとは思っているけど、遅いのは仕事だけじゃないんだよなあ。
ランチでもまわりよりも遅く食べ終わる。早口で同僚たちは、次の選挙でどの政党が良いとか悪いとか、今やっている4年に一度のスポーツの祭典で日本がメダルを
毎日超短話439「詩と暮らす」 #シロクマ文芸部
詩と暮らすようになって4年が過ぎようとしている。2年目のころは饒舌で、詩は小説になった。3年目になると詩は散文になり、短歌になり、俳句になり、川柳になり、今は単語になった。時が経つたび会話が減っていくのは、そろそろ潮時ということか。愛は四年で終わると誰かが言っていたし。
「また詩になってほしいから、別れよう」
と、切り出すと詩は「うん」と頷きだけした。それから両手を忙しくなく動かした。
あな
毎日超短話433「バクタクシー」 #シロクマ文芸部
「逃げる夢が追いかけてくるんです」と、お客さんが言い出す。タクシー運転手の私からすると、おそらく酔っているのだろうと思い、そうなんですね、と当たり障りのない相槌を打つ。
「どうしたらいいですか?」との問には「止まったらいいんじゃないですか」と答える。
「止まったら、追いつかれてしまって、怖いんです。逃げるのを追いかけるのが楽しいのに」
「よかったら、食べましょうか、その夢」
そう言うと、お
ごはん侍×パンナイト #毎週ショートショートnote
ごはん侍が刀を抜いて、パンをおにぎりに変えたのを、ぼくは見た。そしたら今度は、別の侍、というか騎士がやってきて、剣を杖にして魔法をかけた。
「我はパンナイト。今日は休日ではないか。優雅な朝はパンと決まっておるのだよ、さあ、パンと牛乳を食したまえ」
と、おにぎりはまたパンに変わった。
「何をする! この子は大和の子であるぞ! パンで侍になれるものか!」
と、ごはん侍が、またパンをおにぎりにし