ユガ

2021年に行われた,podcast番組を制作しているTOCINMASHとフェリシモが…

ユガ

2021年に行われた,podcast番組を制作しているTOCINMASHとフェリシモが共同企画をした「500色のいろえんぴつ」の題名を使ってお話を書くことが楽しく,2022年になってからツラツラと書き綴り始めました。 隙間時間を色で埋めていただけたら幸いです。

最近の記事

383: あの子みたい。意外と割れないガラスの靴のタフネス色

森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 キラキラキラ くるくると回る女性のドレスの裾が 広がるたびに,夜会用の靴やジュエリーが ホールの光を反射して光る。 幼い私たちはホールの隅っこにかたまって, 大人達があまり手をつけない料理を 次々と手に取り,一通り楽しんでから, テーブルの下に潜り込み,テーブルクロスの裾を そっと持ち上げ,優雅そうに,しかし 忙しく動き回る足元の美しい光を楽しんでいた。 「あ。」いとこが指をさす。 指さす先には,先日

    • 363: 嬉しい時って跳ねるんだ!と気づいた日の驚き色

      森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 ザワザワ。 講堂の中は,生徒たちの声が絶えず流れ サワサワと,時には音量が上がり ザワザワとその空間を満たしていた。 「静かに。今から式典を始める」 そう大きくない音量で発せられた声で, ピタリとざわめきが止み, 生徒たちが並ぶ列の横を通り抜け 校長が壇上に上がった。 「今日は皆さんの揃った顔が見られて 嬉しいです……」と始まった式, 退屈な話が続くのだろうと, うんざりした顔を作りかけたその時, 「

      • 343: 風に吹かれて夜に消えた魔女のお気に入り帽子色

        森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 びゅぅ。 風が横を通り過ぎていった。 “秋の風は好きだけれども, こうもびゅうびゅう吹かれると 皆早足になるし、枯葉は落ちちゃうし, 秋の名残を楽しむには不向きになっちゃうわね。 今日は市場を回って, 色々と冬支度するつもりだったのに。“ ふぅ。 深い紫と紺色の混じった,天辺がまあるく 頭まわりの縁には光沢のあるリボンが巻かれ, 小さな花束の飾りがチョんとついた 帽子を被った比較的小柄な女性が,ため

        • 323: 水面から海底に届いたモーニングコール色

          森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 キラキラキラキラ… 海面から,美しい声の光の粒が落ちてくる。 それはしばらく海底の砂をキラリと光らせた後 儚く消えていく粒だったけれど, 最初に気がついた噂好きの魚が 綺麗だったんだよ〜と皆に話して周り, それを聞いたタコが,それなら一度観に行こうと 壺から這い出て見に行って, 美しいなとつぶやいたものだから, それならオレたちも見に行こうと, 様々な海の生物が観に行って, 最後に,幻と言われている人魚に

        383: あの子みたい。意外と割れないガラスの靴のタフネス色

          303:ジャングルの探検で見つけた森の王様のような果実色

          森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 ぴー!ぴちぴちっ‼︎… ガサガサ…クワっクワっ! …そこかしこから聞き慣れない音がする。 その度に背筋がきゅっと伸び, 冷や汗がどっと出る。 案内付きとはいえ,いつも行く 色屋さんの森とは趣が全く違う… 野生みが強いと言うか,緑の濃さや空気まで 濃いような…数歩先は明るいはずなのに ぽっかり暗闇が待っていそうな… つまりば、この森こわーい! 色を採取すると言う仕事を 請け負っている僕としては,こんな

          303:ジャングルの探検で見つけた森の王様のような果実色

          283: かけるだけ。でも、それなりに見栄えするバジルソース色。

          森の奥深く 貴方が知っている あるいは知らない場所にある色屋のはなし。 「突然きてごめんなさい。 どこに行ったらいいか分からなかったんです…」 「大丈夫ですよ。 まずはお腹に温かいものを入れましょう。 パスタは食べられますか…?っと思いましたが、 今切らしていました…鶏肉ならあるな…」 「少しお酒を垂らしたミルクです。 出来上がるまで時間がかかると思うので, これで温まっていてください」 「ありがとうございます…」 柔らかい香りが私を包んでいる。 ゴトごとゴト。 色屋さ

          283: かけるだけ。でも、それなりに見栄えするバジルソース色。

          263: ほほをなでる太陽色の果実のささやき色

          森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 サクっ。 外側の見た目とは違う,鮮やかな黄色が テーブルの上にさっと光を広げた。 「お久しぶりですね」 「ええ,こうしてお会いするのは久しぶりです。 いつも,あなたが送ってくれるパイナップルは 美味しくいただいています。 仲良くしてくれているケーキ屋さんにも お裾分けすると,とても喜んでいますよ。 この農園のパイナップルは, 味がギュっと詰まって甘くてとろけるようだって。 スイーツのしがいがあるって。」

          263: ほほをなでる太陽色の果実のささやき色

          243: 他愛もない話に一喜一憂する乙女心色

          森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 口元を手で隠し、 嬉しそうにくすくすと笑う彼女。 頬は楽しさと恥ずかしさで ピンク色に染まっている。 ああ。可愛いなぁ。 そいうい僕も,ほっぺたはずっと熱い。 これから秋の旅行… (といっても遠出はできないんだけれども。) 話で盛り上がっている。 ここのご飯は美味しそう。 ここは見どころなんじゃ無い? そういえば、昨日カコが言ってたんだけど… あの映画見たいんだよね〜。 え?そうなの?アレってそう言

          243: 他愛もない話に一喜一憂する乙女心色

          223: ベリーを摘みに行く軽快な足取り色

          森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 ふんふふ〜ん♪ 甘酸っぱい香りが立ち込める ベリー農園のどこからか、鼻歌が聞こえる。 時には遠く、気がつくと,すぐ近くに。 あっているのかあっていないのか 捉え所のないリズムがゆるゆると聴こえる。 「八塩さ〜ん!ベリーのカゴ、 いっぱいになりました〜!」 ハタと鼻歌が途切れる。 「保冷バックにそっと移しておいておくれ! 潰すんじゃないよ!!そぅ〜っとだよ!」 「は〜い!(ちょっとつまみ食い)」 「食べ

          223: ベリーを摘みに行く軽快な足取り色

          203:グレープフルーツの苦味で目覚める勇気の色

          森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 「スッパ」思わず呟いた私の声は, ガランとした部屋の中に響いた。 グレープフルーツは好きなんだけれども, 1人で食べるには持て余す大きさ… ふぅ。と,ため息をついて立ち上がり, “そういえば子供の頃は,お砂糖と グレープフルーツの苦味が混ざった味が 食べたくて、もっと掛けてとねだったよね” そんなことを思いながら,グレープフルーツに ヨーグルトと,少しの蜂蜜を垂らして食べる。 ひとりぼっち。 不意に

          203:グレープフルーツの苦味で目覚める勇気の色

          183: 香りほのかな燃え残るセイジ色

          森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 すぅ〜。 いい香りが鼻の奥に駆け抜けていく。 僕は、たまたま入ったこの店が当たりだと思った。 時が止まったような茶色が溜まる店の陳列だが, モノは,手入れが行き届いているし, 年代物の時計がチクタクと,小さいながらも 動く嬉しさが滲み出ている音を,控えめに, しかし,しっかりと周りにアピールし, 時を刻んでいたからだ。 時計,精巧な作りのものが多いが, ひとたび人々に忘れられると,裏寂しさが 半端なく

          183: 香りほのかな燃え残るセイジ色

          163: 世界を輝かせる天然のスポットライト

          森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 眩しい。 ただただ眩しくって,僕は彼女を遠くから 見つめてどうやったら知り合えるか 黙々と考えることしかできない。 僕が彼女との間にできた接点は, 購買部で同じパンを…最後の一個を… 譲り合ったと言う,ベタなシチュエーション。 「あ,どうぞ」 「いえいえ,ワタシは昨日も食べたのでどうぞ」 なんて,言う些細なはじまり。 僕は,このクリームがどっさり挟まれて, 色合いとばかりに真っ赤な砂糖漬けの チェリ

          163: 世界を輝かせる天然のスポットライト

          143: 信じられないほど深く美しい愛の物語色

          森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 美しい赤い色の瓶が目に止まった。 深い赤…と言うのだろうか, ツヤツヤと,艶かしいまではいかないけれど, 目が離せない,深く魅入られる赤。 「どうされましたか?」 私は,店主の声でしばらく見入っていて 動かなかったことに気がつく。 「ああ,なぜだかこの赤から目が離せなくて」 「これは,古い物語から滲み出ていた 深い愛を表した赤ですから,, お客様の心と共鳴したのかもしれませんね」 「私の心と共鳴?」

          143: 信じられないほど深く美しい愛の物語色

          123: 秋の味覚シナモンフレーバーのスイーツの色

          森の奥深く 貴方が知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 鼻腔をくすぐる,甘いようなピリッとしたような スパイスの香りが食欲をそそる。 収穫祭というのか…小さなgala (特別なお祭り) なのに,想像より人出があって賑やかだ。 “ふぅ,いい景色ですね…色がつきません…“ 色屋は,賑やかな店頭の灯りや, 美味しそうに温められている ワインの色を採取し,満足そうにと息をこぼした。 そして,少し体が冷えてきたので 何かをお腹に入れようと, キョロキョロと辺りを見回し

          123: 秋の味覚シナモンフレーバーのスイーツの色

          103: 屋根裏部屋のサンライトの色

          森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 夕暮れの色が濃くなる頃, 店の棚のすみがポゥっと明るくなる。 色屋は様々な色が置かれているので, どれかが光るなどは,特段驚くことではない… けれど、この色はなぜか懐かしい心持ちに させるのだった… 屋根裏部屋で,2人の少女が遊んでいる。 お人形さんごっこ,布などを巻き付けて変身する お姫様ごっこ…少し成長すると, お互いの秘密を打ち明ける時間,勉強をする時間 へと変化していったが,その傍には, いつも

          103: 屋根裏部屋のサンライトの色

          83: 懐かしい下町の夕焼け小焼け色

          森の奥深く あなたが知っている あるいは知らない場所にある色屋の話。 カタカタカタ! 下駄を鳴らして走り去るおかっぱ頭の女の子。 彼女の足より大きな下駄は,ともすれば すっぽりと足から飛んでいきそうな程なのだが,器用に履きこなして走り去っていく。 にゃーと猫があくび混じりに鳴きながら 道を横切る。 坊主頭の半袖半ズボンの男の子たちがワイワイと 騒がしく走り去る… ご婦人達が買い物かごから野菜を覗かせて 慌てた足取りで通り過ぎていく… 僕は夢を見ているのだろうか…?

          83: 懐かしい下町の夕焼け小焼け色