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143: 信じられないほど深く美しい愛の物語色

森の奥深く
あなたが知っている
あるいは知らない場所にある色屋の話。

美しい赤い色の瓶が目に止まった。
深い赤…と言うのだろうか,
ツヤツヤと,艶かしいまではいかないけれど,
目が離せない,深く魅入られる赤。

「どうされましたか?」
私は,店主の声でしばらく見入っていて
動かなかったことに気がつく。

「ああ,なぜだかこの赤から目が離せなくて」
「これは,古い物語から滲み出ていた
深い愛を表した赤ですから,,
お客様の心と共鳴したのかもしれませんね」
「私の心と共鳴?」

「ええ。 とても大切な方との思い出,
恋人でも肉親でも,友情でもいい,
心の奥底に広がる”愛おしい“と言う色が
共鳴したのではないでしょうか?」
「愛おしい心…そうだな。私にも
そう言う心はあったはずだ。」

「人は皆,自分の事は分かり辛いですからね。
あなたがここを訪れて,
色に魅入られたと言うことは,
その心をお持ちだと言う事です。
そしてお顔も優しげに微笑まれていますよ」
「おや。コワモテで恐れられている私の顔が
微笑んでいたと?」

にっこりと微笑む店主。
頬に手を当て,思わず確認してしまった私は,
口角が上がっていることに驚いた。
「ふむ。」

色々と世界を回ってきて,
随分,身勝手に生きてきたつもりだったが…
こんな心地にさせる色もあるのだな。
深い愛か…。 どんな物語が出所なのか,
想像をしながら突き進むのも,いいかもしれん。

私の思い出は心の奥底に沈めておくが、
時々は,この色と共鳴と言うものをさせてやると
私の心も腐らずにいられるかもしれないな。

「これを頂くよ」
「ありがとうございます。
時々,陽の光にかざしてあげてくださいね。
澱のように底に沈む愛がふわりと混ざり合い,
輝きをとりもどしますので。
底に沈めっぱなしは色々良くないですから」

色屋と言ったな。 ふわりとした表現だが,
人の心をギクリとさすやつだ。
「覚えておくよ」

「では,これからも良い旅を。
またのお越しをお待ちしております」
カランコロン…

一体どんな物語でしょうね?
こっそり聞きに,色屋へと行ってみませんか?
深く美しい愛の物語色…気になります。



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