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103: 屋根裏部屋のサンライトの色

森の奥深く
あなたが知っている
あるいは知らない場所にある色屋の話。

夕暮れの色が濃くなる頃,
店の棚のすみがポゥっと明るくなる。
色屋は様々な色が置かれているので,
どれかが光るなどは,特段驚くことではない…
けれど、この色はなぜか懐かしい心持ちに
させるのだった…

屋根裏部屋で,2人の少女が遊んでいる。
お人形さんごっこ,布などを巻き付けて変身する
お姫様ごっこ…少し成長すると,
お互いの秘密を打ち明ける時間,勉強をする時間
へと変化していったが,その傍には,
いつも柔らかい光を放つスタンドが灯されていた。

1人の少女の母親から譲り受けたもので,
母親も,その母が大切にしていたものを,
屋根裏部屋を「少女たちの秘密の部屋に」と
絨毯を敷き,ローテーブルを置いた時に
「あなたたちの優しい心を照らすように」と
置いてくれたものだった。

今日も秘密の話をする傍で,
古めかしくなってきている電気スタンドが
柔らかい光で,少女だった女の子たちの
頬を照している。

これから彼女たちは一旦この家を,
この屋根裏を旅立つだろう。
でも,柔らかく照らしてくれていた光は
変わらず彼女たちの奥底で,あの共有した時間を
照らしてくれているはず。

そうした場所のサンライトカラーが
この瓶には詰められている。
誰かを導くような,見守るような,
そばにいてくれるような暖かな色。
悲しいことも嬉しいことも,この光の下で
吐露したあの時。

あなたもあの頃を思い出したい時,
色屋のこの色を,そばに置きませんか?
なんとも言えない感情が
湧き上がってくるかもしれません。
そして,そっと照らしてくれる色に
ほっと安心するかもしれません。

今夜もポゥと灯った色が,
様々な思い出を引き出してくれているようです。
色屋は照れたような顔をして、
そっとその瓶に布を被せてしまい,
おやすみなさいと言って店を後にしました。
それでもなお漏れるサンライトの色。
あなたもご覧になってください…
あの頃の柔らかい思い出が蘇ってくるはずです


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