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363: 嬉しい時って跳ねるんだ!と気づいた日の驚き色

森の奥深く
あなたが知っている
あるいは知らない場所にある色屋の話。

ザワザワ。
講堂の中は,生徒たちの声が絶えず流れ
サワサワと,時には音量が上がり
ザワザワとその空間を満たしていた。

「静かに。今から式典を始める」
そう大きくない音量で発せられた声で,
ピタリとざわめきが止み,
生徒たちが並ぶ列の横を通り抜け
校長が壇上に上がった。

「今日は皆さんの揃った顔が見られて
嬉しいです……」と始まった式,
退屈な話が続くのだろうと,
うんざりした顔を作りかけたその時,
「続いては表彰に移ります」と言う声が続き
「赤羽 涼(あかばね りょう) ,前へ」と促した。

ピョン!

俺の目の前の赤羽が,突然の指名に驚き,
文字通りピョンと飛び上がった。
そして周りをキョロキョロと見て、
“何で呼ばれたのか皆目見当がつかない”
と言う顔のまま,壇上へと歩いていった。
「表彰……」

後ろから見ていてもわかるほど,
恥ずかしさと誇らしさから,
あいつの耳が真っ赤だ。

しかし,人って驚き過ぎると
ホントにピョコンと飛ぶんだな。
俺は,さっきのアイツのツインテールが
一緒にピョコンと飛び跳ねた様を思い出し,
ニヤニヤが止まらなくなってしまった。

高い位置から降り注ぐ外の明るさが
あいつも毛先に当たって淡く光ってたっけ。
顔を真っ赤にして戻ってくるアイツに
クラス中で拍手をして迎える。

なんでもない1日の始まりだったはずなのに,
はにかみながらも嬉しさを滲ませる
アイツを見ると,「ピョコン」を発見した,
なんだかいい1日になった気がした。

この日を忘れないよう,あの色を覚えておこう。

「…という,学生時代の思い出の色です」

ピョコン!

「わた、、私!赤羽です!涼です!」

カァ〜っとみるみるうちに顔を真っ赤にした
涼さんが,大事そうにその瓶を手に取る。

“おや。本当にピョコンと飛びましたね。
ポニーテールの毛先が一緒に跳ねました”

「あの,,あの。この色って……」

この先,列の前後の2人が再開したのかどうか,
いい色の瓶が増えると私も嬉しいですので,
しばし待ちましょうか…


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