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123: 秋の味覚シナモンフレーバーのスイーツの色

森の奥深く
貴方が知っている
あるいは知らない場所にある色屋の話。

鼻腔をくすぐる,甘いようなピリッとしたような
スパイスの香りが食欲をそそる。
収穫祭というのか…小さなgala (特別なお祭り)
なのに,想像より人出があって賑やかだ。

“ふぅ,いい景色ですね…色がつきません…“
色屋は,賑やかな店頭の灯りや,
美味しそうに温められている
ワインの色を採取し,満足そうにと息をこぼした。

そして,少し体が冷えてきたので
何かをお腹に入れようと,
キョロキョロと辺りを見回した。
すると視線のその先に,
ぶんぶんと手を振りつつ近づく
人影に気があり,にっこりと笑いかけた。

「店主!ここのホットワインはシナモンの香りが
溶け込んで本当に美味しいですよ〜!
試しました?まだならこれ,飲んでください!」

青年だ。

今回は珍しく2人のスケジュールが合ったので,
前々から聞いていた,シナモンを楽しめる,
この小さな祭りに来たのだった。

「あっちで焼かれているチキンもいい香りを
広げていましたよ。 色々買ってきて
あちらのテーブルで楽しみましょう」
「さすが店長!分かってますね〜!」
「私もこのお祭りに来るのを,
八塩さんから聞いて楽しみにしていたんですよ」
「八塩さんへのお土産に,各国のシナモンを
たくさん仕入れて帰りましょうね〜」

数点,温かな湯気をたてる食べ物と、
シナモンの香りが広がるホットワインを
買い込んで,2人は空いているテーブルについて
あれこれ話しながら楽しみだした。

そこかしこに,若いカップルが頬を上気させ,
シナモンのスイーツやドリンクを楽みながら
祭りの屋台をのぞいている。

”シナモンの花言葉は「純潔」「純真」…
若いカップルが訪れて,楽しむのにぴったりの
お祭りですね…これから来る長い冬を
お互いを想い合いながら愛情を育てていく,
そんな入り口のお祭り…。
私もワインに酔ったのでしょうか,
やけにポエムを刻むようなことを
思ってしまいました…ふふっ”

「店主〜!このチキン絶品ですよぉ〜!
こっちのお菓子も甘すぎず,こちらの
食欲を増進させますね〜!」
「元気いっぱいですね」
「だって〜,このお祭り,森の奥深くまで
歩いてこなければ辿り着けないんですもん!
お腹すいちゃって。 そして2人での仕事、
久々で嬉しいんですもん!」
「そうでしたね。
ゆっくり出かけるのは久しぶりですね」
「ということで,僕お代わりを買ってきます!」「では僕は,ワインを買いに行っておきます」
「まだまだ食べられますよね!
うぅ〜!!色々試したくてワクワクしますよ〜!
あ,あっちの色は採取済みですので、
気にかけなくても大丈夫ですよ!」

“おや,さすが彼はです。 安心はしていましたが,
いつの間に色をくんでいたのでしょう。
私も負けていられませんね…っと,今は
ホットワインです。”

「このワインと,材料一式を2個づつ頂きます」
「毎度!楽しんでるかい?」
「ええ,とっても」

夜の森はますます暗さを深め,
祭りの灯りが周囲を照らし,人々の上気した
頬の色と笑顔があたりを賑やかにする。

貴方もこのお祭りの噂を聞いたなら,
是非とも訪れてみて下さいね。
色屋がくんだ自慢の元の色が,
このお祭りには広がっていますから…
(八塩さんの経営するスイーツ店にも,
お土産で渡されたシナモンを使ったスイーツが
季節限定で置かれているようです。
お試しあれ!)

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