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163: 世界を輝かせる天然のスポットライト

森の奥深く
あなたが知っている
あるいは知らない場所にある色屋の話。

眩しい。
ただただ眩しくって,僕は彼女を遠くから
見つめてどうやったら知り合えるか
黙々と考えることしかできない。

僕が彼女との間にできた接点は,
購買部で同じパンを…最後の一個を…
譲り合ったと言う,ベタなシチュエーション。

「あ,どうぞ」
「いえいえ,ワタシは昨日も食べたのでどうぞ」
なんて,言う些細なはじまり。

僕は,このクリームがどっさり挟まれて,
色合いとばかりに真っ赤な砂糖漬けの
チェリーが,真ん中にチョンと置かれている
甘い甘いパンに目がない。
あるとついつい買ってしまうんだ。
それは,彼女も同じだったようで
(好きと言う以外は理由を知らないんだけれど)
譲り合ってから後,ふと彼女を見掛けると,
あのパンを持っていることが多い。

すると益々,今日は買いに行ったのかな
まだなのかなと目で追ってしまう。

ベタなことを思ってもいいかな?
彼女の周りって,パッと日がさしたように
本当に明るいんだ。
天からの光が,彼女にスポットライトを
当てているように輝いて,ふわりと
浮き上がっているように見えるんだよ。

笑顔の彼女がいるとする,するとその周りの
一緒にいる子も光の中にいるように,
周りまでも明るいんだよ。 不思議だよね。

わかってる。みなまで言わないでくれ。
それって一目惚れで,恋だろって。
そうだよ。片思いさ。
あのパンが起こした奇跡だよ。

え?怖いって?大丈夫。
彼女を怖がらせるようなことはしないよ。
さりげなく待ち伏せとか,
同じ講座を取るとか…はしてない。うん。
でも,彼女の目の端に入るような努力はしてる。
いつかあのスポットライトの中に入りたいから,
気軽に挨拶し合える仲になるように,
話しかける努力,同じパンを同時に買う
努力を,今してるところなんだよ。
笑うなよ。本気なんだから。

しかし,彼女可愛らしいよな。
え?名前?それもこれからなんだよ。
頭抱えんなよ。ゆっくり行くさ。
まずは俺のことを認識してもらうところからさ。

…とまぁ,甘酸っぱい記憶と共に
彼女を照らしていたスポットライトの
輝きがこの瓶に閉じ込められています。

彼は,彼女と知り合いになれたから,
いつまでも輝いている光が瓶の中にあるのか、
はたまた,切ない美しい思い出として
取り込めたのか…私には分かりません。
ですが,輝いていると言うことは,
いい思い出がそうさせているのでしょうね。

この光を心に灯して何かに挑んでみると,
天からのスポットライトがあなたにも当たって,
うまくことが運ぶかもしれませんね。
いかがですか?
お店に来て,手にとってみては…?
ご来店,お待ちしております。




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