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茹で腕
2021年4月10日 09:42
3年前。市川は一人の女性と出会う。彼女は今まで出会ったどの女性よりも可愛く、不思議で、面白く、魅力的だった。すぐ好きになった。こんな女性に出会った事が無かった。だからあっという間に彼女に夢中になった。知れば知るほどどんどん好きになっていくし、知れば知るほど自分とは住む世界が違う事を理解した。育ってきた環境が違った。環境のせいだろうか?考え方の違いか?彼女がもらした
2021年4月6日 08:19
飼育員のアルバイトをはじめて8日目の夜。市川はいつも通り、30分の仮眠をとった後、夜行性の動物たちに餌をあげる事にした。寝ても全然疲れの取れないカチカチのベッドから起き上がり、外していたカラーコンタクトレンズを装着した。夜食用に持参したタケノコご飯のおにぎりを食べながら、動物達をぼんやりながめた。夜行性の動物を見ていつも思う事がある。こいつらは本当に給料泥棒もいいところだ。好きな時に
2021年4月6日 08:06
16時25分、引越しのアルバイトを終えた市川は、やじるしと逆の方向へ走りだす。帰り道はこの一方通行をひたすら歩くと辿り着く。やじるしの反対 を走るのは今日に限った事ではない。毎月第2木曜日の17時からは、絵画教室へ通う事にしている。絵画といっても様々ではあらるが、今習っているのは鉛筆画だ。黒い鉛筆で花瓶や果物を描く。人物はまだ描かせて貰えない。誰にも言っていないが、家に帰ってから、色鉛筆
2021年4月5日 19:47
滴り落ちる汗が入った目を擦りながら、ぼんやり見つめる視線の先に、一匹の蟻が大汗をかいて獲物を運ぶ。市川が4月から働き出した引越し屋のアルバイトは、体育会系では到底片付ける事の出来ない、肉体労働である。今回のお客様は30歳くらいの女性で、腕を組んでタバコを吹かしながら、働きっぷりを監視している。まるで女王蟻のようだ。なんだこの野郎。偉そうにしやがって。仁王立ちしている女王蟻を後目に、死
2021年4月5日 19:31
2009年の夏。8月のプールの授業でコンタクトレンズを落とした。泳ぎの得意な方ではない市川は、苦手な平泳ぎで必死にコンタクトレンズを探す。お前なんで潜水してんの? とか、あいつ溺れてやがる~ なんて友達に笑われても、必死になって探した。片目ぼんやり生活も1週間が過ぎ、翌週のプールの授業も、同じ様に平泳ぎでコンタクトを探す。翌週も、翌々週も。。季節は変わり、うっすら校庭に雪が降り積もる冬
2021年4月5日 19:18
2021年、 3月も終わりを迎えた。4月から都内で新生活を始めている市川は、埼玉から越して来たばかりだ。現在はふたつのアルバイトを掛け持ちしている。富山県にある実家のキャンディ工場を継ぐかどうかで、両親と喧嘩してから11年が経過した。それ以来、絶縁に近い状態が続いている。風の噂によると、キャンディだけでは経営が上手くいくはずもなく、流行りのマシュマロに手を出し始めたとかっていう話を聞いた