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投稿欄で落選した詩、自作の詩

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詩誌の投稿欄で落選した自分の詩を取り上げて、自分なりの感想と反省などを書きます。また好きな詩人さんの真似をした詩や日記を収めます。
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#現代詩

『パラレルワールドへの入学方法』

『パラレルワールドへの入学方法』

世界を変えてしまう
そんな暖簾をくぐった先
こってりラーメンと
寂しさは紙一重だった

パラレルワールドへの入学方法と
あっという間に訪れた放課後

手書きはいつも現実
光るヘッドホンと落書き
うちにはうちの
洗濯の白さがある

『白昼夢が見れない』

『白昼夢が見れない』

白昼夢なら得意技だ
退屈な授業も
嫌なことも
それで忘れてきた
たいがいのものは
忘れさせてくれる
エキスパートな僕だから
言えることなんだけど
見ることができない
白昼夢というのも
あるんだよ

わからない人

わからない人

さよならをして泣く人は
好きじゃない
そんときは無表情でいい
でもひとりになって
思いっきり悲しんでくれる人が
僕が一番好きな人

そんな人がいるのかどうか
一生知ることはなく
僕はいなくなっちゃうんだけどさ

かなしみ

かなしみ

真夜中にテレビをつけると
深夜ドラマでひとり暮らしの女性が
同じようにテレビを観ていた

しばらく悲しそうな彼女を観て
テレビを消した

誰か僕のことを悲しそうだと
見てくれる人がいたらよかったのに

『出会い系とフードコート』

『出会い系とフードコート』

私が人より少し変わっているせいもあるかもしれないけど、私には常識はずれなところがあるし人と同じことをしたり物事をよく知りもしないで悪く言ったりすることが嫌い。だからきっと詩を書いたり出会い系サイトをつかってる。別にそのことについて何とも思わない。

世の中の人はよく知らないことは怖いから「出会い系サイト」って聞くとすぐに危険な目にあうとかって出会い系サイトの悪口を言う。私はもうそこがどんな場所かを

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似合わない服

似合わない服

似合わない色の服を着てみた。どうして今日に限ってそんなことをしようとしたのか覚えてない。この服を選んだのが私なのかさえ疑わしい。「目をそらそないで。目をそらさないで。目をそらさないで」夢のなかで言われたのだと言い聞かせながら夜明けの街を歩いてる。最後に主人公がビルから飛び降りる映画があってそこでは「open your eyes」というセリフがくり返されていた。目を覚ましてと目をそらさないでは夢のな

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『男と浴室』

『男と浴室』

一時間前の時間が今日の中でいかに大切だったことに気がつく。一日の終わり。大切な思い出になるはずだった入浴剤。二十分。剃刀と曇りガラスと色のついた石鹸。スマホを持ち込むことに抵抗がなくなったのにはどんな理由があったのだろう。打ち込みたい文字を考えながら流し目で見る動画。昨日よりも前の日々について考える。未来はたったの一日先のこと。

一億回再生された動画の再生ボタンを誰にも見られずにそっと押す。

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『よぎる』

『よぎる』

何かが頭をよぎった気がする

まだよぎったばかりで後ろ姿が
うっすらと見えている

薄暗い朝の食卓のテーブルに
置き去りにされた塩みたい

もしあれがアイデアというものなら
紙に書けば捕まえることもできるだろう

ただの大きな大きな黒い鳥だと言うのなら
黙って見送ることにしよう

もしかすると、おふくろの味
それならまたお盆を待てばいい

右折をする素振りを見せているあいだに
とりあえず日記に書い

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『あらまし』

『あらまし』

もうひとつの方の
あらましが聞きたい
と言うから
もうひとつ目も
ふたつ目もないけど
考えうる
別のあらましを話してみる

するとやっぱり
そこじゃない、と言う

ながい籤が外れたみたいに
あらましを静かに戻して
復活するのを待つ

あくせくしても
しょうがない

母親の寝ぐせを
見てはいけない日がある

そこの部分だと言ったけど
どこのあらましだったのか
ちっともわからない

『楽園』

『楽園』

なんとなく嫌な気持ちだったのは
それを隠していたからだろう
生まれてこのかた本音だったことがない
目を伏せなくったっていい
ヒトが笑顔をつくり続けないのは
その方が本心だからだろう?

楽園があると信じている
それは記憶からくるものなのか
幻想からくるものなのかわからない
楽園じゃない場所にいるのが今で
わたしは私を盲目にする物語の
入口を探している

何度も出口と入口を間違えて
戻れない場所にた

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『糸口』

『糸口』

家のなかって
歩いてるのかな

歩くってのは
もっと
別の場所から別の場所へ
移動することな気がする

家のなかは移動してるんじゃなくて
すり減らしてるんだよ
棚とか壁はそうして古びていく

それは私のせい
というところもあって

身長も顔の形も大きく変わらないし
同じような通り抜けかたをするから
なんだろうな

糸口はもっと大きくした方がいいよ
ってあなたは言う

『月の匂い』

『月の匂い』

夜遅くに家に着く。
家の明かりがすべて消えているから
少しだけ散歩する。

あたりの家の二階の窓から
常夜灯の明かりが見える。
まだ起きてる人がいることに
安心する。人は生まれながらにして
人を欲しがる中毒なんだ
自覚症状がまるでない

見上げると月。
息を思いっきり吸い込むと
少しだけ月の匂い
がする。

聞きたいことを上手に
聞くにはどうしたらいいのだろう。
聞き上手というのでは
それは聞けな

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『夢の愛想笑い』

初めてみる学校の校庭
イベントの後はいつも離れがたく
皆なかなか帰ろうとしないけれど
その集まり方はよく知らない
知らないけれど
一人で帰って
自分がいなくなったあと
何かあったんじゃないかと思う
そのことはよく知っている
きっとそう思ってる子が
校庭から離れられないでいる

こんな特別な日が
どうして特別な日にならないのだろう
いつもと同じように夕方になる

家に着いてからのうたた寝
夢のなかで

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『誰かの赤面』

『誰かの赤面』

わたしは人の言葉に惹き込まれる癖があって、気がつくとよくその人の世界に入り込んでいることがある。

それは夢のようでもあるし物語のようでもあるし現実のようでもあるけど、要するに何だっていいのだ。それが、三つのうちのどれかなんてよくわからない。

このあいだもある人と話していたら、少しづつ景色が溶けていって、わたしはその人の世界にすっかり入り込んでいた。

するとその人のもう一人が私の隣に座って「あ

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