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女子が少なすぎる!東大工学部で感じたマイノリティの苦悩

東京大学全体の女子率の低さは周知の事実ですが、その中でも特に工学部の女子率が低いことをご存知でしょうか? 東大の女子率が約2割ということから考えて、少し減って15%くらいかなという感じでしょうか?

正解は……、なんと11.7%なんです。(理学部はさらに低く10.4%です)

2023年度時点での割合: 河合塾 KeiNetより引用


もちろん学科によって違いはありますが、工学部の女子学生の中には私も含め、女子が1〜2人しかいない授業を経験している人も多いと思います。

この、工学部に女子が少ないという点に関して「女子同士で仲良くなりやすい」「男子学生にモテる(真偽不明)」というポジティブキャンペーンをされることもありますが、今回はあえてマイノリティ環境で大学生活を送ることの問題点を工学部所属のライターの目線から伝えていきたいと思います。

目次


  • 女友達が少ない!そして増えない!

  • 私はこの学科を選んでほんとによかったのか?

  • 東大に受け継がれるジェンダー分業的価値観

  • まとめ



女友達が少ない!そして増えない!

1つ目に、単純に大学生活で関わる女子の数がかなり減ってしまうという点があります。特に、私は東大進学者が多い女子校出身であったため、1年生で同じクラスになった女子4人中3人は高校同期であり、進学先の学科同期の女子も5人中2人が高校同期でした。サークルを除くと、大学生活を通じて新しく出会った同性の友人は「4人だけ」ということです。これはとても寂しいことではないでしょうか?

ここで「女子は少ないから仲良くなりやすいんでしょ?」という意見に少し物申したいと思います。みなさんは、高校のクラスメイトの中で腹を割って話せる親友はどれくらいいましたか?私の経験上、30人のクラスなら男女別学でも2〜3人くらいでしょうか?

つまり、たとえ同性であっても全員と親友のように仲良くなれるとは限らないのです。(当たり前ですが...)

同じコミュニティの数少ない女子のなかに、自分と性格が合う子を見つけられるかどうか、というのは「完全に”運”である」と思います。実際、女子が少ない学科に進学したために、仲の良い友達ができずに大学に行くモチベーションが低下してしまったという友人もいます。

学習環境が勉強のモチベーションに影響を与えるのは、決して珍しいケースではないと思います。同じ目標に立ち向かう仲間が周りにいて助けあえる状況と一人で戦わなくてはいけない状況を想像すると、後者の方が大変だと感じる人が多いでしょう。

私はこの学科に来てほんとによかったのか?

2つ目は、女子が少ない環境で勉強していると、「ステレオタイプ脅威」と戦わなくてはいけないという問題もあります。ステレオタイプ脅威とは、ネガティブなステレオタイプが自分自身にも当てはまるかもしれないと不安に感じることで実際に自身のパフォーマンスが低下してしまう現象のことです。(参考:https://www.insource.co.jp/contents/column_narrative.html)

みなさんも、「男性は理系」「女性は文系」というステレオタイプを聞いたことがあるかと思います。私は女子校時代、何の疑問もなく理系を選択し、数学や理科の勉強を頑張ってきました。しかし、工学部に入ってから数学の授業で女子が一人という状況になると、「女性は数学が苦手」というステレオタイプを意識してしまい、自分はここにいてよいのかと不安を感じる経験が何度かありました。教授から「あの授業は数学を使わないから女子が多いと思うよ」というバイアスのかかった発言を直接聞いたことも...。

「男クラ」の記事のなかで、男クラの学生間で「理系の学問は男性のもの」というジェンダーバイアスが再生産されているという話がありました。理系女子という当事者であってもマイノリティ環境に長くいることで、同様のバイアスを持ち、自分自身を苦しめてしまうことがあるのです。

東大に受け継がれるジェンダー分業的価値観

少し話はそれますが、東大に未だに存在するジェンダー分業的価値観についても述べておきたいと思います。東大では入学した直後に、配属されたクラスで役職決めを行いますが、クラスの長である「オリ長は男性」、二番手である「副オリは女性」という分業が慣習化されているクラスがあるそうです。(もちろん、そうではないクラスの方が多いと思いますが...)

私の所属するサークルでも、「運営のトップは男性」「二番手は女性」という伝統が非明示的に受け継がれています。ついこの前、同じサークルの留学生に「どうしてこの団体はいつもトップが男性なの?」と疑問を投げかけられ、答えに窮してしまいました。

ここでさらに問題なのが、東大は、このジェンダー分業的な慣習に違和感を覚えても主張しづらい環境であることです。ある友人は、「ちょっとおかしくないかな」と男子学生に言ったところ、直接揶揄されたこともあったそうです。私自身も、サークル内でこの違和感を共有できないと感じ、結局声に出すことを諦めてしまいました。

私は、このようなジェンダー分業的価値観に対して不満や疑問を表明しづらい環境を作り出す原因の1つに「女子学生がマイノリティであること」が挙げられると思います。

まとめ

ここまで東大工学部の私が日頃から感じ、仲の良い友人とよく議論している話題をお伝えしてきました。

もちろん、私が東大の理系女子を代表しているわけではありませんし、中には当事者であっても「何も気にしたことはない」という友人もいます。しかし、東大の理系女子学生の中には、「マイノリティゆえの苦悩を感じている人が存在している」のは、紛れもない事実です。「男クラ問題」と同時に、この「理系女子マイノリティ問題」に少しでも関心と共感を向けてくださる方が増えたら嬉しいです。

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