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自分をカテゴライズすると楽だけど損する理由

こんにちは、よすです。

自分に「わたしはこういう人間だ」とラベルを付けて、あるカテゴリに分類する(=カテゴライズする)と、ちょっと自分の輪郭がはっきりした気がして楽しかったりしますよね。

例えば、少し前からネット上でMBTIの検査メソッドを模倣した?性格診断テストが流行ってますね。質問に答えて、16個の性格タイプの中から自分の性格タイプを見つけるというものです。

僕も実際にやってみたのですが、この性格診断の楽しいところは

  • 自分の性格をポジティブに捉え直すことができる

  • 自分の性格タイプと同じらしい有名人が知れて親近感を感じられる

  • 日本に数%しかいない性格タイプだと嬉しい

という点にあるなと思いました。

他にも似たような性格診断テストや血液型占い、星座占い、手相占い、人相占いなど、人をいくつかのタイプに分類して楽しむコンテンツは昔から手を替え品を替え人気ですよね。

しかし楽しさの一方で、自分をカテゴライズすることには不利益もあるようです。

カテゴライズのダークサイド

カモになる

カテゴライズのダークサイドに、説得されやすくなるという点があります。

心理学研究によると、人を説得する技術として、「あなたは〇〇な人間である」というラベル付けは強力に働きます。

例えば、「あなたは目の前で困っている人がいたらできるだけ助けてあげたいと思いますか?」という質問に対して「はい」と答えない人はいないでしょう。しかし、その質問に「はい」と答えてしまうと、その後の「難民を支援する募金活動をしているのですが、募金していただけませんか?」という頼みごとにとてもじゃないと「いいえ」と答えづらくなってしまいます。

あなたが自分のアイデンティティとしてある自己イメージを受け入れると(内面化すると)、あなたは自己イメージの一貫性を守るために行動してしまう傾向があるのです。つまり、「わたしは人助けをする人間だ」という自己イメージを強烈に意識しているとき、それに背くような行動は取りづらくなります。

募金をしても問題にはなりにくいと思いますが、例えば詐欺のターゲットになったときはどうなると思いますでしょうか?ここまでの文章を読めるあなたは論理的思考ができるという点で理性的で用心深い人だと思うので騙されにくいと思いますが、1つのテストとして以下の文を理解できるまで読んでいただけますか?なんと日本人でもこのような文章を読めない人は多くいるようです。

紫色の沈黙が轟音を奏でる中、透明な壁が溶けて虚無へと還っていった。 概念の重力に引き寄せられ、思考は分子となって光の海を漂う。 存在と非存在の狭間で、時間は逆流し、因果律は葬り去られる。

・・・読んでいただけましたでしょうか?

読んでいただけたなら、あなたはまんまと僕に説得されてしまったことになります。先ほどの文はAIで生成した何の意味もない文です。ご面倒おかけしてすみません。

実は先ほどの「ここまでの文章を読めるあなたは論理的思考ができるという点で理性的で用心深い人だと思うので大丈夫だと思いますが」はただゴマをすっていたわけではなく、ラベル付けだったのです。
あなたに「文章が読める」「論理的思考ができる」「理性的」「用心深い」というラベルをぺたぺたと貼って、あなたを気持ちよくした後に少し面倒なことを要求したのです。

そして、「なんと日本人でもこのような文章を読めない人は多くいるようです。」という不気味な一文が持つ役割に気づいた方もいらっしゃるでしょうか?

実はこれも広告やプロパガンダでラベル付けとセットで利用されている心理的テクニックの1つです。

例えば、戦争のプロパガンダでは、「自国民」と「敵国民」という対立構造がよく作り出されます。そして「自国民は親切で、温かくて、優秀で、真面目な人間である。それに比べてあの国の人々は残虐で、冷血で、バカで、ズルばかりしている人間である。だから、我々は自国を守るために敵国を攻撃する必要がある。」という論法で国民を説得します。

それと同様、先ほど僕があなたにやったことは、あなたにポジティブなラベルを貼ったあと、第三者にネガティブなラベルを貼り、あなたが自分に貼られたポジティブなラベルを自身で強化するように促した、というわけです。あなたは「多くの文章が読めない人」の一員にはなりたくない、だから「文章が読める」ことを証明するために僕の要求に従う必要があったのです。

以上の理由で、自分に貼られたポジティブなラベルはあなたを説得しようとする人に対する弱点にもなりえます。カテゴライズはあくまで娯楽として楽しみ、「あなたは優秀だ」のような他人からのカテゴライズ(ヨイショ)にはぜひ警戒してみてください。

対立を生む

先ほどの章と内容が少し重複しますが、「わたしは〇〇だ」というカテゴライズには、「だがあなたは××だ」というカテゴライズもセットになってしまうことは避けられません。つまり、対立です。

心理学研究によると、ランダムに振り分けられたグループ分けによっても「自分たちのグループは優秀で、相手のグループはそうではない」という身内の贔屓と他人の軽視のようなものは生まれてしまうようです。例えば血液型が性格に影響するという科学的根拠はありませんが、一度「君たちA型は几帳面である」という実際には無意味なグループ分けをされると、「わたしたちは几帳面だし仕事もテキパキこなすよね」という仲間意識は生まれる一方で、「他の血液型の人は大雑把で仕事もいいかげんだよね」という認識も同時に作られてしまいます。

また人間には自己成就的予言と呼ばれる心理があります。例えば、「A型の人は几帳面だ」という根拠のないラベルはA型の人を几帳面にし、「B型の人はマイペースだ」という根拠のないラベルはB型の人をマイペースにするのです。

つまり、自分と他人にラベルを貼ることで、そのラベルが対立のきっかけを生み、ラベルによってその対立が現実のものとして確立されてしまうということです。

そのため、安易なカテゴライズは避け、もし避けられない場合はさっさとそのカテゴライズから離れることが大切そうですね。

お読みいただいてありがとうございました!

参考文献

  • プロパガンダ:広告・政治宣伝のからくりを見抜く


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