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漫画キングダムから学ぶ会社経営 #34:OJTの意義

本記事は、「漫画キングダムから学ぶ会社経営」と題し、毎回、様々な視点から漫画キングダムとビジネス(特に経営)での共通点及びそこから得られる学びについてまとめていきます。今回は34回目の記事になります、過去の投稿はこちら(クリック)からご覧ください。

前回は、「#33:教育の種類と重要性」というテーマで、社員教育の種類やそれぞれのメリットをキングダムに出てくる教育プログラムと照らし合わせて考察しました。まだお読みでない方は、まずはこちらをご覧ください。その中で、最も成長機会が望めるトレーニングとして、OJT (On the Job Training)を挙げました。前回も説明しましたが、OJTとはその名の通り、実務を通じて成長を促す事を言います。作られたトレーニングプログラムとは違うので予期せぬ事も起き、厳しい反面、最も実践的な力が付きます。今回はそのOJTにおける好例を2つ、キングダムからピックアップし、考察します。

1) 飛信隊最初の任務
まずは、馬陽の戦いで王騎将軍の基、出来立ての百人隊として任された飛信隊最初の任務です。その任務とは、相手軍将軍の一人でかつ軍師である馮忌の首を取ってこいと言う、シンプルですが、ものすごく難しい任務でした。何が難しいかと言うと、まず、1)相手は将軍なので、万単位の部隊を抱えている(この時馮忌軍は2万)。2)軍師でもあるので、単純な武力勝負ではなく、様々な策を講じてくる。という2点です。
これに対して、飛信隊は結成したばかりで、ロクに隊としての連携訓練を積んでいない、たったの100人隊であります。普通に考えればどう考えても不可能な任務です。しかし、飛信隊は遊軍であるので、単純に2万対100の戦いではありません。相対している干央軍長を利用し、遊軍かつ小隊の利点を活かして、横から潜り込み、馮忌将軍を討つことができました。ここでの、飛信隊及び信の武功は今後の成長に繋がる大きな成果の一つだった事は言うまでもありません。
OJTにおける大事な要素としては、トレーニングを受ける側(ここで言う、飛信隊及び信)の成長がもちろん大事ですが、最も大事なのは、その任務を与える人(ここで言う、王騎将軍)にあります。その任務を通じてどのような成長を求めているのか、上司の質が問われます。ここで、王騎将軍がこの任務を通じて飛信隊に学んで欲しかった事は、以下3点だと思います。
 
I. 隊の結束:独りよがりであった信を見ていた王騎将軍は、戦は個対個ではなく、隊としてどのように機能できるかがとても重要という事を知って欲しかった。また、この戦の前に王騎将軍は信に100人ほどの集落を立ち直らせる訓練を与えています。 
II. 将軍首と言う自信:基本的に自信家であった信ですが、実際に将軍の首を自身の手で討ち取り、さらなる自身を深めて欲しかったと同時に、天下の大将軍に近づく為には、このように武功を重ね、中華に名を残していく必要があるという事を知って欲しかった。
III. 小隊でも戦を動かせれる:戦は数だけの勝負ではなく、頭を使い効率よく戦う事も求められます、たった100人隊でも戦局を大きく動かせる魅力と、また逆にその怖さを知ってほしかった。

2) 王賁、蒙恬の臨時五千人将昇格
このOJTは、合従軍の戦い、謄軍対媧燐軍中での出来事です。当時、二千将と千人将であった王賁と蒙恬は、蒙武、謄連合軍の謄軍に配属され、楚軍と相対します。楚軍の第一将、臨武君を討った謄軍は第二将にして難敵の媧燐軍と戦いますが、媧燐の見事な戦象(まやかし)作戦で、いきなり本陣が囲まれ大ピンチに陥った時の出来事です。このピンチを救う為に、謄は、王賁と、蒙恬を五千人将に昇格させ、窮地を脱します。謄の意図としては、もちろん、この本陣に軍長が隆国しかいなかったので、苦肉の策にも見えますが、この二人のこの戦での位置づけはもちろんの事、中長期的な成長と活躍が、今後の秦国において、非常に重要だという意識の基の臨時昇進だったと考えられます。謄は後の魏軍との戦いにおいても、王賁の戦略を受け入れ、その作戦で戦います。ここでは、はっきりと、今後の秦にとって若手の成長が最も大事だと語っています。話を合従軍に戻して、ここで謄が王賁と蒙恬に学んで欲しかった点は以下3点だと思います。

I. 隊から軍への移行:xx千人将と将軍の大きな違いの一つに単純に率いる人数の違いが挙げられます。xx千人将というのは、まだ、大きな隊でしかありませんが、将軍は万単位の軍を率います。その間にあるのが、五千人将で、五千人将の経験の重要性は後に昌平君も述べています。この違いを緊迫した場面で敢えて経験させたかったことが伺えます。
II. 他軍を率いる難しさ:また、臨時の昇格なので、半数近くは、謄軍から借りる事になります。将軍になれば、このように他軍や全く新しい部隊を率いる事は頻繁に発生します。この難しさを自軍の部隊を貸す事により、経験してほしかった。後に、朱海平原の戦いにおいて、蒙恬が麻鉱軍を率いて、左翼を立ち直らせるのはこの経験が活きているのではと思います。
III. 軍を守るという事:玉鳳隊と楽華隊は、飛信隊と同じく、遊軍として今まで活躍してきたので、任務の多くは、「攻め」でした。しかしながら、戦場では守りも当然大事になってきます。ここで敢えて、この窮地をどのように守り切るかという経験を謄は2人にさせたかった。

この2例のように、OJTには、上司が部下に経験させ、学ばせたい事が明確でないと意味がありません。どのような状況下において、彼らが必要としている成長機会は何なのか、という事を正確に判断し、少しきつい任務を与える事が、非常に重要になります。その点において、王騎将軍もその副官をやっていた謄将軍も、上司として非常に優れている事が伺えます。

皆さんも自分の部署でOJTをする際は、単に、日々の業務を与えるだけではなく、この任務を通じて学んで欲しい事を明確にし、業務を与える事をお勧めします。

それでは、また次回。

注)写真はすべて漫画キングダムより引用

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