マガジンのカバー画像

三年目

33
2021年の詩まとめ
運営しているクリエイター

#自由詩

normal

normal

「普通」を
素晴らしく尊く感謝すべきだと云う全てが尊い病の人間が苦手だ

普通を特別だと思った瞬間に
それは「特別」になっていた

普通は意識しない存在であればいい
平等に訪れるそれらを特別視する必要を感じない

呼吸
食事
朝の目覚め
夜の眠り
あなたの存在
世界の存在
感情を
尊いものだと神格化する

神様は存在しないから普通じゃない

普通は他人に認めさせることではなくて
今日も明日も明後日

もっとみる
PM4:15

PM4:15

下駄箱からスニーカーがなくなった放課後
廊下の蛍光灯がつく前の夕方未満の校内
踊り場にたまる影はどこまでも深い闇で
職員室からおとなとこどもの境界線をつくる珈琲の香り
音楽室の窓から吹奏楽部の未完成な曲が校庭にゆるやかに響く
校舎と体育館を繋ぐ廊下を脱線して、上履きのまま裏庭にでる
生活の時間に植えた朝顔が眠っていた

世界未満

君がいない世界
卵焼きに殻が混じっても気にしなくなって
ミリ単位で前髪を整えることをやめて
階段から遠い6号車に乗らなくなって
バスから外の景色を眺めなくなって
旧校舎の自販機のカフェオレは売り切れることなく
お弁当の卵焼きはぜんぶわたしが食べる
放課後の図書室は素通りして
コンビニの新作スイーツは試さなくなって
ノートに落書きされることなくテスト勉強して
明日の天気予報を今日のうちにチェックする

もっとみる
悪役の詩

悪役の詩

悪役にだって愛はあって
誰かを愛し
かつては愛されていたはずなのに
最後に愛は勝つって
誰かが言ってたよね
正義の愛しか勝つことが許されない世界
愛って曖昧で
誰にも断言できないから
なんでもかんでも愛のせいにして
まろやかにして忘れてしまうんだね
愛は勝たない
愛を守れた人だけが勝つんだよ

清らかな

清らかな

涙をながせば
純粋にみえますか
朝日に
夜のコンビニの外灯に
駅前のスターバックスの照明に
きらりと光るその粒は
心の汚れを丁寧に濾過してできた
最終兵器
頬をつたう生暖かいわたしの一部は
あなたにちゃんととどくまえに蒸発してハンカチを濡らさない
未練だけがチェック柄を濃くして
あなたはわたしを理解したつもりで微笑むの
純度100%は神様でもありえなくて
神様未満のわたしたちは
祈りを捧げるふりし

もっとみる
2/14

2/14

ドラッグストアで安売りしていた板チョコを
心地よい音を響かせてたべる君がすきです
アルミ箔を丁寧にまるめながら最後のひと欠片までたべ終えた君は
いまがいちばん幸せって顔してる
糖分はひとを幸せにするのか鈍くするのかわからないけれど
まろやかな心になれる瞬間は嫌いじゃないよ
ホワイトチョコレートをたくさんたべると舌がすこしざらざらします
君をすきな気持ちは純度何パーセントかな
かたちあるそれを丁寧に

もっとみる
↑↓

↑↓

十代の共感度1位!が宣伝文句のやすっぽいラブソングをうたうバンドのなまえは初見じゃ読めなくて、でもなぜか心に響いてしまうのはわたしはわたしを捨てて君の続きになりたいから、ともだち100人できたSNSで得るものはクラスメートの恋愛事情と有名YouTuberの明日には忘れてる動画のURL、四六時中情報の波にのっているはずなのに君に届けたい手紙の宛先の書き方がわかりません、天国にもWi-Fiがとんでいた

もっとみる
\120

\120

いつまでも端っこにいちごミルクがある自販機、すきだよ
いつのまにかナタデココ入り乳酸菌飲料は姿を消してしまったけれど
夏に思い出す味です
早朝のプラットホーム
缶コーヒーでリセットするおとなになることを
拒絶する社会人3年目
コーンスープは
あなたとの別れを忘れるためにベンチで飲んだ冬