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子どものじかん、大人の時間

神奈川県川崎市に「子ども夢パーク」(通称「ゆめパ」)という施設があります。「子どもたち一人ひとりが大事にされなければならない」ということを実現するために、川崎市子どもの権利に関する条例を川崎市民がつくり、その条例をもとにつくった、子どもの居場所です。以前、このゆめパのドキュメンタリー映画「ゆめパのじかん」という映画の上映会と対談に参加したことがあります。

対談したのは、東京大学名誉教授・白梅学園大学名誉教授の汐見稔幸さんと、認定NPO法人フリースペースたまりば理事長の西野博之さんでした。映画のタイトルの「じかん」をひらがなにしているのは理由があるそうで、時間についての話がありました。子どもの頃過ごした「じかん」は長く感じるのはなぜか?それは、楽しいことをいっぱいしているからであり、没頭していると「じかん」を感じなくなるからだそうです。一方で、大人は時間を考えて使っていて、有効に使おうとするが、このことは人間を幸福にしているのだろうか?という問いが投げかけられました。

子どもの頃何かに没頭していて、いつの間にかすごく長い時間が過ぎていた、なんてことは誰しも経験しているのではないかと思います。私も、家の前の道路で近所の友達と暗くなるまで野球をやって、「消える魔球だ!」なんて言って遊んでいたことがありました。一方で、学校では決められた時間に決められたことをして、時計を見ながら過ごしている日々、確かにいつの間にか、時間が経つのが早く感じるようになりました。そして、何かに没頭することは減っていきました。

我が子を子育てするようになって、大人の時間の流れと子どもの時間の流れは違うということを実感しました。第一子が生まれて間もない子育て初心者の頃、何をするにしても子どもはゆっくりしていて、私がやろうとしていることが全然進まず、イライラしたこともありました。でも、そのうち、私はいかに効率よく物事を進めるか、ということばかり考えていたことに気づかされました。そして、子どもの時間の流れ方は効率性とは全く無縁だということにも気づかされたのでした。私たち大人が行なっている経済活動は、効率性が求められます。私もどっぷりそれに浸かっていたので、私自身に染み付いていたようです。

障害者福祉が専門のある大学の先生が言っていました。日本では行動経済成長期に効率良く経済活動を進めるため、効率性が低い人たちをハコモノに入れました。つまり、高齢者は老人ホームに、障害者は障害者支援施設に、子どもは保育園に入れたわけです。そして、残った人たちだけで経済成長を進めました。しかし、その後、国の財政が厳しくなってくると、お年寄りや障害者や子どもを地域で暮らせるようにしようという動きが出てきましたが、地域の側が受け入れる準備を整えることが先ですよというような話でした。

いかに効率よく物事を進めるかという発想の時間と、自分の興味関心があることに没頭して過ごすじかんには、大きなズレがある。このズレが軋轢を生んで、さまざまな問題を引き起こしていると考えられます。最近、こどもまんなか社会をつくろうということが言われていますが、周りにいる大人が相も変わらず効率性を求めてセカセカと動いていたら、真ん中にいる子どもは洗濯機の水のように、ぐるぐる回らされてしまうことでしょう。従来のやり方では、子どもたちを保育園という施設に押し込めて、子どもを流れから守ってきました。しかし、逆に、周りにいる大人が、子どもじかんに合わせるように大人時間をゆっくりとしたペースに変える必要があるのかもしれません。こどもまんなか社会の実現を「じかん」という視点から考えると、大人社会のあり方が問われていると言えるでしょう。

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