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そこに愛があるかどうか。 【西加奈子 『i』】

今日訪れた本屋で、直感的に手に取っていた1冊。

曲線が混ざり合う。とても目立つカラフルな表紙。

なんとなく目に入った本を、なんとなく購入してしまったのはこれが初めてだった。

帰宅し、私は「i」をその日のうちに読み終え、今、余韻に浸りながらnoteに文字を打つ。


アイという名の主人公。

とても、デリケート。繊細で、優しい人間だ。

世界中で人が貧しい暮らしを強いられ、人が殺され、人が飢え死ぬ。そんな中自分が裕福な暮らしをしていることを恥じ、苦しむ。

アイのこの苦しみを全て理解はできなかった。

けれど、少しだけ共感できた。私の場合、スケールの大きさは全く違うかもしれないけれど、

私の数少ない友達の1人に、母親がシングルマザーの女の子がいる。

その子のことを以下、Aちゃんとする。

Aちゃんはお母さんと2人暮らし。アパートに住んでいる。私はAちゃんと出会って2年半、高校で誰よりも一緒にいる時間が長い。だから、Aちゃんの家がどんな家庭環境なのかも知っている。

一方、私には両親がいて、あと妹と祖母の5人暮らしだ。少し古いがそこそこ立派な一軒家に住んでいる。

そして、私はそれなりに恵まれた家庭に生まれた。そのことをいつからかなんとなく自覚していた。


「あんたの家って金持ちだもんね。」

Aちゃんはよく私にそう言った。

家族で沖縄に行った話、今年貰ったお年玉の金額の話、好きなアーティストのライブに行った話、気に入ったグッズをたくさん買った話、、

私がそういう、「金」が絡んだ話をすると、決まってAちゃんはそう言った。

言われる度、胸が締め付けられた。

なんて返したらいいか分からなかった。

そんなことない、とも言えなかった。Aちゃんの家より私の家のほうが裕福なのは、それは明らかだった。

申し訳なさが堪らなく滲み出て、私はなるべくAちゃんの前でそういう話をしないように心がけた。



私は「i」を読んで、アイの気持ちを読んで、この苦しさを共感できた。


そして、その苦しさへの答えが貰えた気がした。



私は、Aちゃんが好きだ。

根暗で、人とちょっとズレてる私と一緒にいてくれる。Aちゃんは友達がたくさんいて、私と居なくても困ることなんてないはずなのに。

それは私が一人ぼっちだと可哀想だから???

そう思ってた時もあった。

だけど、Aちゃんは、面白いから、と言ってくれた。

こんなにつまんない私を、「面白い」と、面と向かって言ってくれたのはAちゃんが初めてだった。

Aちゃんから、愛を感じた瞬間。


愛がある。私には、Aちゃんに与えたい愛がある

私は、Aちゃんとは違う。

Aちゃんは、私とは違う。


違うから、分かることはできない。

私は、友達がたくさんいて常に皆の中心で、ムードメーカーなAちゃんの気持ちは分からない。


でも、違うからこそ、そこには愛が生まれたのかもしれない。

私とAちゃんの間には、たしかに愛があるのだ。

それを気づかせてくれた1冊でした。


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追記

読んでいくと、途中、頭の片隅でアイフルのCMの女将さんが「そこに愛はあるんか?」と問いかけてきました。笑

そこに愛はありました、女将さん!

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