yoko san

〜どうしても見過ごせないことがあります。ゆるいことも重いことも。でも、書きためないと忘…

yoko san

〜どうしても見過ごせないことがあります。ゆるいことも重いことも。でも、書きためないと忘れちゃう。忘れない様にここに。〜

最近の記事

【2日目のカレーが美味しいのに】Vol.1

障害のある人を育てている親は少なからず「自分が死んだ後の彼らの生き方」を考えている。 今ある福祉の制度を使って、彼らが心配なく生きて行けるように。 私もそう思っていた。 親亡き後、この家に姉妹で暮らすことはあまり現実的でない。次女の生き方を尊重することで、長女の人生に大きな負担と不自由を負わせることはしたくない。 となると、施設入居、グループホーム、ヘルパー制度を利用した一人暮らしか。なぜか私はこれらの制度を利用した住まいに乗り気になれない。次女がそこで暮らしている様子

    • 「ママは良い人生なの?」Vol.37            ~最終回~

      年度も変わり、夫の生活も安定してきた。仕事も入院以前とあまり変わらないペースで働けるようになっている。 術前や術後直後の彼と今の彼の思考は大きく変わった。 (今の自分はどういう気持ちなのか。) (今の自分の体の調子に変化はないか。) この2つの問いに敏感になったのだ。大病前はありたい自分に寄せていくように心も体もコントロールすることを好んでいた。そのために無理をすることにも抵抗が無かった。優先順位の変更がとても苦手で家族にもそれらを強要することが多く、思うように進まない周り

      • 「ママは良い人生なの?」Vol.36

        内科クリニックで治療への不安や今後の生活に関する相談した日から約10日後、夫は手術を行った病院に定期検診に行き血液検査、栄養指導、外来診療を受けた。 と言っても私は同行していない。夫はナースさんと一緒だ。内科クリニックでの話しの内容、今後の治療をどうするかについて担当医師に伝えた。ここから先に書くことは、夫が帰宅してから伝えられた内容だ。 まず、医師は内科クリニックの先生からの返信の手紙を読んで夫の心境がわかったのかとても明るい表情だった。「無表情が印象的だった先生に笑顔

        • 「ママは良い人生なの?」Vol.35

          まず、今回こちらの内科クリニックに伺った理由を説明した。 「コロナ禍に入院したことで、本人や家族が医師の説明を一緒に受ける機会が限られています。共通理解をする場が持ちづらいので色々な判断をする際に不安な状態になりました。ですので、セカンドオピニオンというよりも今までの経過を医師と振り返る機会が欲しくて伺いました。もし、入院前にかかりつけ医がいれば、そこに伺ったであろうことを求めてこちらに来ました。」 珍しいパターンでの受診かもしれない。しかし、ご自分も大病をなさった医師だ

        【2日目のカレーが美味しいのに】Vol.1

          「ママは良い人生なの?」Vol.34

          まず、今かかっている病院の相談窓口に「セカンドオピニオンとしてこの内科医に行きたいので、症状など情報を共有させてほしい」と相談した。相談員の看護師はとても協力的だった。医師との間に入り、相談内容を伝えてくれる。 すると、話しを聞いた医師は納得がいかないという返事をしていた。専門病院でもない総合病院でもない小さな町医者に何を聞くのだ、理由は何か?と想像がつかないようだった。 ナースさんが窓口の担当者に再度医師に伝える内容を説明をしてくれた。 「新しく治療を受ける先を探すのが目

          「ママは良い人生なの?」Vol.34

          「ママは良い人生なの?」Vol.33

          願うようなやり取りができない入院環境に納得が行かなかった私は、夫に「セカンドオピニオンの必要性」を何度かLINEで伝えていた。治療に関しては医師の言うなりになるだけではなく、患者も積極的に意思表示すべきだし対話をする方が良い。体の弱い次女のそばで20年間通院や入院に付き添ってきた経験値がそちらのシグナルを鳴り響かせるのだ。 コロナだから黙って言うことを聞いておこう、で済ませてよいものなのか。彼の人生の選択肢を狭めてもよいものなのか。夫の人生なので彼が決断することだとは思って

          「ママは良い人生なの?」Vol.33

          「ママは良い人生なの?」vol.32

          コロナ禍の入院とは、入院患者と家族はほとんど顔を合わせることなく接点を持たずに過ごす期間になるということ。よって自宅で待つ家族と医師はほとんど会えない。 私が夫の主治医と会って話をしたのは入院時と手術時、そして退院時の3回だけだ。病棟看護師とも「荷物の受け渡し」で数秒会うだけ。そもそも病棟に長時間居ることができない。コロナが与えた「会えない」という状況が与えた影響は非常に大きい。人と人との対話が少ない環境では、お互いの考えや気持ちの行き違いが出やすい。数少ない情報で全てを理解

          「ママは良い人生なの?」vol.32

          「ママは良い人生なの?」Vol.31

          家族が夫の身体について知識を得ることで、本人が気が付かなくても察知できるようになった。この受信アンテナが生まれたことが様々な身体の変化の早期発見・早期対応に繋がる。 退院してすぐの貧血対応。多臓器切除が引き起こす血糖値の大きな変動。低血糖から来る体調不良など、ナースさんのアドバイスがなければ何度躓いたことだろう。専門的な知識は危険回避をし悪化の予防そして回復を助ける。 「本当に手立てを考えて実践しながら仕事に復帰できて良かったです。ナースさんありがとうございます。」諸手を

          「ママは良い人生なの?」Vol.31

          「ママは良い人生なの?」Vol.30

          効果てきめんだった。 夫が退院後に初めて職場から1人で帰宅した日、ナースさんも入っているグループLINEにメッセージが届いた。「職場で合間にラムネを5個食べました。マスクなので口に入れていても誰にもばれないので助かります。食べたらすぐに良い気分になり動きやすくなりました。」 「今日は、1人で無事に帰宅しました。職場を徒歩で出て駅までの半分の地点にスーパーがあり、そこのイートインコーナーで一息つきました。それから、駅構内の地下1階のイスで酸素飽和度と脈拍数をチェックしました。

          「ママは良い人生なの?」Vol.30

          「ママは良い人生なの?」Vol.29

          「昨夜のやりとりの記録、とても大事です。理由を聞くとなるほどなと思われるでしょう。そしてご主人の身体に起きていることの影響をご本人もご家族の皆さんも少しでも知ると楽になれることもあると思います。」 そうなのか!術後に起こりうる症状の一つなのか! 理由と対策がわかれば夫の感情に振り回されることも減りそう! とにかく驚くことばかり。 「あまり焦らずに。お話を伺いながら伴走していきますよ。長いおつきあいをしましょう。もう少ししたら 主観と客観のスペースを分けたノート記入も良いか

          「ママは良い人生なの?」Vol.29

          「ママは良い人生なの?」Vol.28

          お休み二日目。夫は家の周りを散歩したり、在宅でできる仕事をしたりと緩やかな生活をしていた。 「のんびりしたい」と口では言うものの、几帳面な性格の夫。周りが自分のリズムと違うと気になるタイプ。そんな彼がゆったりした生活をしているのは療養の視点からも大切。今日も一日気持ちよく過ごせたようで安心していた。 そんな穏やかな夕方。夫は「寒い寒い。」と言いながらこたつに入りテレビを見ている。長女も帰宅していて仕事帰りの私と一緒に晩御飯の準備を始める。次女はYouTubeを見てのんびり

          「ママは良い人生なの?」Vol.28

          「ママは良い人生なの?」Vol.27

          月曜日。夫は無事に職場へ退院の報告に行った。 「今日は無事に仕事場に行って帰ってきました。帰りに義弟のところにも報告できて一安心のようです。」ナースさんに良い報告ができた。 ホッとした夕食の途中、夫は突然箸を置いて1点を見つめたままぼーっと動かなくなった。(え・・どうした?)と一瞬心がザワッと動く。 「明日は仕事日だけどやっぱり休むことにする。その後どうするかは明日考えようと思う」あれだけ決めたことを遂行したがる夫が予定を変更した。今日社会と接して、それなりに何か思うことが

          「ママは良い人生なの?」Vol.27

          「ママは良い人生なの?」Vol.26

          退院した翌朝、長女から「パパ、どうだった?眠れた?」と電話が来た。そっけないようで優しい長女。夫はぐっすり眠れたようで昨日より顔色も良い。たわいない会話を交わした後、私は思わず「パパが働きたくてたまらない病」なのだと言うことを伝えた。すると長女はたった一言「は?バカじゃない?せっかく退院したのに死にたいの?やめなよ。」と一蹴された。 次女と私は大笑い。夫は苦笑い。 私がこの数日一人悶々と考え続けていた凝り固まっていた悩みが、娘たちの言葉でポロポロと薄皮が剥がれ落ちるように軽

          「ママは良い人生なの?」Vol.26

          「ママは良い人生なの?」Vol.25

          「こんにちは。今、会計をしているところです。11時前には帰宅します。」とナースさんに連絡をする。 「承知しました。支度しておきますね!目標を11時にしておいて、帰宅し疲労感などあれば、連絡ください。」 「どうやら、あまり寝ていないみたいです。」 「 自分は30分ほどで帰りますとお伝えください。やはり 今日の床屋はキャンセルしてよかったですね。」 など、夫が会計に行っている間にナースさんとLINEで短いやり取りを交わす。 「ただいまぁ。あぁ帰った。やっと帰れた。」と言いながら

          「ママは良い人生なの?」Vol.25

          「ママは良い人生なの?」Vol.24

          退院前日に、洋服と靴を渡した。その時に「明日の朝、8時半に病棟に来て。」と夫から指示を受ける。早く退院したくてたまらないことがわかる。この時間は看護師の申し送りや朝の巡回など忙しいので、いくら早く行っても待つことになるんだけどなぁと思いつつ、彼が病院内にいることは安全なので黙って頷き明日に備える。 退院の日だ。 朝8時半から待合室で2人並んで座る。高いところに掛けてあるテレビをぼんやり見ていると、事前に病棟に渡しておいた質問用紙をもって男性の看護師がやってきた。「ご質問の件

          「ママは良い人生なの?」Vol.24

          「ママは良い人生なの?」Vol.23

          夫は退院の2日前に体内に入れていた最後のチューブを外し、3か月ぶりに自由の身になった。ナースさんと夫と私のグループラインもやり取りが増えてくる。夫は、私とのLINEのやり取りは意見が嚙み合わないことが多いのだが、ナースさんの言葉にはとても良い返事をする。すっかり信頼していることがわかる(彼はまだナースさんに会ってもいないのに!)。専門職パワーはとても大きい。 退院直後にやりたいことが満載の夫の気持ちを落ち着かせ、通常の退院生活に気づかせるにはどうしたらよいか話し合うために、

          「ママは良い人生なの?」Vol.23