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「ママは良い人生なの?」Vol.30

効果てきめんだった。

夫が退院後に初めて職場から1人で帰宅した日、ナースさんも入っているグループLINEにメッセージが届いた。「職場で合間にラムネを5個食べました。マスクなので口に入れていても誰にもばれないので助かります。食べたらすぐに良い気分になり動きやすくなりました。」
「今日は、1人で無事に帰宅しました。職場を徒歩で出て駅までの半分の地点にスーパーがあり、そこのイートインコーナーで一息つきました。それから、駅構内の地下1階のイスで酸素飽和度と脈拍数をチェックしました。98ー76 で問題無しでした。それから数か月振りに電車に乗りました。座れるかなあ という不安と 緊張感がありましたが、ラッシュ時前の帰宅だったのですぐに座れ、座った途端に爆睡でした。」
「降車駅の直前で起きました。階段を使わずエスカレーターやエレベーターを使用して負荷を減らしました。バスも問題なく済ませて、自宅に帰ってきました」

安堵と喜びと希望が見えるメッセージ内容だった。

そして「体力が本当に落ちていることがわかりました。」と書いてあった。
あんなにあちこちで休んだのに、電車ですぐに爆睡してしまうほど疲れてしまう。エネルギーの充電がわずかしかできない身体になっていることを体感したのだ。

「休みかた、素晴らしいですね」ナースさんからすぐに返信が届いた。

「休むことは悪いことじゃ無い」と長女から言われてとても休みやすくなったらしい。家に着いた後も少し休んで犬の散歩へ行った。そしてまた1時間くらいベッドで休んでいた。
その間に帰宅した私が晩御飯を作る。夫は目が覚めたら既に空腹状態。すぐに晩ご飯を食べて心と身体のバランスを整える。というサイクル。
彼の新しい生活スタイルに合わせるのは思ったほど大変ではなかった。朝のうちに下準備しておけば帰宅後20分程度で晩御飯ができる。食べ物は油物や繊維質の強いもの、生ものや海藻やゴマなどいくつか避ける必要がある。更に筋力の落ちた身体の為にはたんぱく質も必要。スーパーで選ぶものは鶏ささみ肉やむね肉や魚が主流になった。また大豆ミートを使ってハンバーグを作ったり、サバ缶を利用してトマトソース煮を作ったりと久しぶりにメニュー一新。マンネリ化していた食事内容がかえってバラエティ豊かになった気がする。夫の事だけでなく、食べることをとても大切にしている次女の心とお腹を満たすメニューにもなるように考えた。

生きるため、前に進むための努力は苦にはならない。ネットを探せばメニューはいくらでも出てくる。有難いことに様々な理由で肉が食べられない人用の大豆ミートや脂肪分の少ないチーズなど代替食品も簡単に手に入る。誰もが生きやすい社会に向かっていることを実感する。情報では知っていたが必要だと思って探すと新しいフィルターが作動する。
今までとは違うところに反応するようになった。仕事で出かけた先で、軽羹とカステラを見つけた。甘いものは滅多にお土産にしない我が家だが、(これも補食になりそう。日持ちがするものを手元に置いておくのも安心だし味が変わると楽しめそう。)と購入した。生き方を変えることは新しい自分にも出会える。

人間の心と身体の関係は不思議だ。症状に合わせて適切な対応をすることで良い生活を送ることが出来る。夫の場合、身体の健康はまだ追いついていないが心は一歩先に健康になりそう。退院後の長い治療を考えるとメンタルが整って生活出来ることは、最善の治療を落ち着いて考えることにも結び付く。

血糖値と身体の仕組みを学び、夫は1人で通勤できるようになった。彼の生活レベルはグッと上がった。そして私の物理的な負担(夫の送り迎え)と、退院後の生活への対応の気持ちの負担がグッと下がった。

家族だけでは簡単には手に入れることのできなかったものだ。どう生きるかの選択肢が広がった。ナースさんの立ち位置、存在がとても大きい。


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