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「ママは良い人生なの?」Vol.28

お休み二日目。夫は家の周りを散歩したり、在宅でできる仕事をしたりと緩やかな生活をしていた。

「のんびりしたい」と口では言うものの、几帳面な性格の夫。周りが自分のリズムと違うと気になるタイプ。そんな彼がゆったりした生活をしているのは療養の視点からも大切。今日も一日気持ちよく過ごせたようで安心していた。

そんな穏やかな夕方。夫は「寒い寒い。」と言いながらこたつに入りテレビを見ている。長女も帰宅していて仕事帰りの私と一緒に晩御飯の準備を始める。次女はYouTubeを見てのんびり。いつもの夕食前の風景だ。

と思ったら、いきなり大きな声が聞こえた。
次女に向かって「〇ちゃん、机の上が汚いよ、片付けて。今どうしてYouTube見てるの?周りをみてごらん。みんな片付けたり準備したりしてる。ほら、片付けて。片付けて!!」
突然夫が畳みかけるように言っている。さっきまで緩やかな時間が流れていたのに。
「私は洗濯物も入れたし、お風呂掃除もしたよ。今はYouTubeの時間。」と次女は次女なりの時間の過ごし方を説明している。
「そしたらこたつがねじれてるから直すよ、そっち持って。早く来て!」と場当たり的な指示が来る。
「はぁ?なんで、そんなに怒って言うの?もっと優しい言葉で言って!」と次女も負けない。
「こたつを持ってねー!ほら、優しい言葉で言ったよ!早く持って!!」と決して優しくない口調で返す夫。
ここまではコントっぽいやり取りなのだが、夫はそこから文句が止まらなくなった。
「このプリント、何でここに置いてあるの?雨戸は閉めた?お風呂はすぐにお湯が入れられるように栓をしてあるか確認してきて。犬のエサの器はどこにある?」と次女に矢継ぎ早に言い始めた。
次女も急に色々言われて腹を立てながら行動する。洗面所のドアを少し強く閉めると「なんでそんな強く閉めるのか!もう一度やり直し!!」と夫の声は更に大きくなる。

とてもイライラしているのがわかる。

あれ?なんだかちょっとおかしい。お腹がすけば確かにイライラしがちな人だがちょっと急激に人が変わったように感じる。
長女と「早くご飯の支度しよう。鍋料理にしようね。パパにすること(鍋奉行)与えよう。」とメニューを決める。
不機嫌な夫を目の前にして緊張感のある中、大慌てで支度をした夕食だったが、鍋料理を食べはじめると「おいしい!」と夫の機嫌は突然良くなった。先ほどの怒りは急に治まった。そして食後すぐに「少し横になりたい」と言ってソファーに横になり目をつぶって20分程度過ごす。
その寝顔が少し白くなったような気がしたので声をかけてバイタルチェックを促した。
「あー、うん。」と乗り気では無かったが、先ほどまでの竜巻のような機嫌の変化や顔色など調子がちょっといつも通りでないと感じる時に測っておくと良いと思い測らせた。血圧、脈ともに問題は無し。よかった。

「どうして食後一気に眠くなったと思う?」と聞くと「一気に食べたからなぁ」という返事。食前の機嫌の変化からの繋がりのような気がして再度尋ねる。
「晩御飯前がどんな感じだったか覚えてる?」と聞くと「竜巻のような機嫌」の事は全く話さない。認めたくないのか気が付いていないのかわからない。見たままの様子を伝えると、「え。そんなことないけど。」と意外な返事が返ってきた。

すると心理学を学ぶ長女が間に入ってきた。
「パパは昨日みんなに祝ってもらって、嬉しくて頑張ってずっとこの部屋にいたんじゃ無い?キツかったらベッドに行って『ちょっと休むね』と言って良かったんだよ。パパは退院してまだ1週間も経っていないんだから、うまくやろうなんて思わなくて良いよ。出来なかったら出来ない、と言って自分のペースを守ってもらった方が周りもどうしたら良いかがよくわかるんだよ。」うわ。ナースさんジュニアだ。(私の娘だけどw)

更に「パパが自分では何にも分からないまま家族に言っていることで、実は周りは困っているよ。普通、そんな態度をとったら突き放されてもおかしくないのに、ママとか〇ーちゃんとか私とかは何も言わずにどうしたら良いか考えてアドバイス言ってるのはありがたいことと思う。そのことは受け止めた方が良いよ。」と夫が理解しやすい言葉を選んで伝えてくれた。

夫が「ありがとう。そうすれば良かったんだ。今度からそうしよう。無理してたんだね。気が付かなかった。」とスッと受け止めていた。
長女の優しさと自分の知識を活かそうとした気持ちを尊敬した。長女自身も「あー!心理学勉強してよかったー!」と言って満足そう。
次女もこの会話を理解したのか「お姉ちゃんの言うとおりよ。ママとか私の気持ちもわかってあげないとだめよ!」と正面から意見をぶつけており、先程まで抱えていたネガティブな気持ちが昇華されたみたい。

ナースさんに長女の活躍を伝える。 「心強いですね。グループLINEにお姉さんもオブザーバーとして参加してもらいませんか?」と提案を受け長女に伝えると納得しメンバーとなり、ナースさんの言葉や寄り添い方を学ぶチャンスを得ることとなった。
更にナースさんは「このやりとりの記録はとても大事です。今後のアドバイスの追加事項になりますね。そして原因や仕組みを聞くとYOKOさんもご主人も納得されると思います。また、楽になるアドバイスもできると思います。」と書いてあった。
すごい。ナースさんはいったい何者なのか・・・。

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