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「ママは良い人生なの?」Vol.33

願うようなやり取りができない入院環境に納得が行かなかった私は、夫に「セカンドオピニオンの必要性」を何度かLINEで伝えていた。治療に関しては医師の言うなりになるだけではなく、患者も積極的に意思表示すべきだし対話をする方が良い。体の弱い次女のそばで20年間通院や入院に付き添ってきた経験値がそちらのシグナルを鳴り響かせるのだ。

コロナだから黙って言うことを聞いておこう、で済ませてよいものなのか。彼の人生の選択肢を狭めてもよいものなのか。夫の人生なので彼が決断することだとは思っているが、決められたレールの上だけで治療がなされることに抵抗感があった。
しかし入院中の夫は、毎日病棟の医師や看護師と顔を会わせ会話をし、お世話になっているからかどうしても他の医師の話を聞くことについては積極的でなかった。

しかし退院後の診察で、彼の体調や今抱える不安について傾聴する時間はあまりなく、次の治療の話をぐんぐん進めていく(ように感じた)病院の方針は、夫も「患者の気持ちが置き去りではないか?」と感じたようだった。「もう少し患者の気持ちに寄り添ってほしい。」と言い続けていた私の言葉がやっと届いた瞬間でもあった。

今の彼は日々の生活を「昨日より今日、今日より明日」少しでも良くなるようにと、ラムネやおにぎりの準備をし通勤も恐る恐るトライし、少し歩いては休んで・・・の社会復帰ヨチヨチ歩き状態だ。そんな彼に今回の診察展開は気持ちが追い付かないのだ。「まだ体力回復もままならないのに、この状態で新しい治療を始めて大丈夫なのだろうか。今の生活は保たれるのだろうか・・・。」「もう少し治療に関するメリット・デメリットなどの具体的なデータが欲しい。」と慎重に考えていた。

入院中や退院直後の素っ頓狂な意志表示と比べて、今はとても落ち着いた冷静な感覚が戻っており、夫の不安な感覚が正常なのは寧ろ安心したぐらいだ。ナースさんも私も慌てて取り組む必要は無いという考えに同意した。

夫は手術の担当外科医の話だけでなく、最初に診てもらった内科医の意見も聞きたいと言い病院に連絡をした。内科医とは電話で話をしアドバイスはもらったものの、あくまでも電話対応のみだった。「外科医からの依頼が無ければ内科での受診は難しい」との判断で断られた。

患者ファーストでない。夫が実感した。

ナースさんは「他の病院や医師を探してみましょう。今の身体の状態を聞いてもらえてその上で治療方法について考えを示してくれるところを。治療自体をどうするかはその後に決めましょう。3人で探しましょう。」とグジグジ言いそうな私をグッと引き上げてまさに患者ファーストの意見を出してくれた。

私は友人や知人で医療関係に携わる人や大きな病気をした人に聞いてみた。夫は自分の病状について伝えている人が少なくもっぱらネット検索。ナースさんは同業の医療従事者をよく知っているので、患者側の視点やHP上の情報だけではない情報を探してくれた。

夫や私は「治してくれるところはどこだろう」と思いながら探していた。

ナースさんはそれに加えて「患者に寄り添う診療が経験できる病院」を探していた。治療そのものの良し悪しを判断するだけでなく、受診することで夫が患者ファーストと感じ取れる診察をしてくれる医師だ。そのときの状況にあった 「医師を交えた、医療相談の機会」を与えてくれる病院。セカンドオピニオンの一歩手前の診察が必要だと判断したのだ。夫のように既往歴も無くかかりつけ医もいない場合、医療寄りの相談するところが無い。なので病院探しも一か八かギャンブルのようになってしまう。ナースさんの視点はそれを防いでくれた。

そして、「〇〇クリニックはどうですか?」と紹介してくれた。ある地域の内科の開業医だった。


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