見出し画像

「ママは良い人生なの?」Vol.31

家族が夫の身体について知識を得ることで、本人が気が付かなくても察知できるようになった。この受信アンテナが生まれたことが様々な身体の変化の早期発見・早期対応に繋がる。

退院してすぐの貧血対応。多臓器切除が引き起こす血糖値の大きな変動。低血糖から来る体調不良など、ナースさんのアドバイスがなければ何度躓いたことだろう。専門的な知識は危険回避をし悪化の予防そして回復を助ける。

「本当に手立てを考えて実践しながら仕事に復帰できて良かったです。ナースさんありがとうございます。」諸手を挙げて万歳する感じでお礼を言った。

するとナースさんは「ただ、体調の異変があったらすぐに連絡を取り合うようにしましょう。まだ退院して少ししか経っていませんから。常に持ち歩く携帯食と低血糖対策のラムネ等を用意しておきましょう。行きも帰りもずーっともぐもぐしていて欲しいくらいです。気を付けておかないといけないのが、とりあえず急いで低血糖症状を改善するときの対応と日々の低血糖対策が違うとことです。すみやかに糖を吸収するものは日常的には食べてはだめなので、日々の低血糖対策も心がけましょう。」

浮かれそうになると、しっかりフォローして簡単に済ませようとする私達の生活を改めて指示してくれる。万歳した手をそーっと下げ、カバンの中に必要な物を入れる準備をする。

・急激に血糖値を挙げる必要があるとき→ラムネやゼリー状などのブドウ糖でできたもの
・日常的に低血糖を防ぐには→常にもぐもぐできるおにぎりやサンドイッチなど

毎朝のルーティンに「おにぎり2個作る」が増えた。稲荷寿司を作る日も入れたり、様々な魚のそぼろを準備したりと冷蔵庫の中身が今までと大きく変わった。サラダチキンやスモークチキンなどのたんぱく質と手軽な野菜を挟んだパンのリクエストも出るようになった。

緊急時の血糖値を上げるための食材は、公共交通機関時はゼリー状のブドウ糖を常備する。喉の渇きも摂れるので電車の中などでサッと飲める。必要量だけ飲むことができ、キャップで締められることも良い。歩行時にはラムネ。時には甘めのお菓子なども。毎晩翌日の準備として夫が自分で考えている。色々と手立てを考えるのも少し楽しくなってきたようだ。入院時は病院側が決めたルーティンをただこなすだけだった生活だが、自分で自分の生活を作ることが出来るようになった。そんな当たり前のことがとても嬉しい。

そして、市役所に行きヘルプマークを手に入れた。いつもリュックに下げて周りから見えるようにしている。これで電車に乗った時に優先席に座りやすくなった。このアドバイスもナースさんからだった。
「座れる、と思うと安心して電車に乗れるよ。」と晩御飯の時に夫が話す。「座るとすぐに熟睡しちゃうんだよね。」とオンとオフの切り替えが上手くいっている事も報告。

そうして術後1か月が過ぎたころ。

「でも、なかなか体重が元にもどらないんですよね。頑張って食べているのですが。」
術前から9キロくらい痩せてしまい少しは戻ったのだが、なかなか「元の身体」にはなれないとナースさんとのミーティングで夫が話した。
また、手術時に病理検査に出した結果も戻ってきて今後の治療についても色々不安が出てき始めた。
「他のお医者さんの話も聞きたい。」

セカンドオピニオンについて動き出すことになった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?