見出し画像

記憶を記録に。「うどんぬた」の撮影に行ってきました。

滋賀県多賀町久徳(きゅうとく)集落の、冠婚葬祭時、特に仏事の「よびしの食(寄合の食)」定番といえば「うどんぬた」でした。
コロナ禍を経て、ますます人が寄って作ることが無くなり希少な食となってしまいました。

「うどんぬた」って何??

辛子酢味噌に「うどん」がたっぷり入っています。魚介は入らず、カマボコ、油揚げ、ネギが入っています。
「辛いもんは辛く、甘いもんは甘く しっかり味付けする!」とおっしゃるとおり、鼻の奥から辛子がつき抜ける激辛が好まれます。
「こんなもん辛子が効いてへん、もっと辛ろうして」と、お酒のあてにしている人達に言われるそうです。
「どんでら 座ってゆったりせんならん」どっしりと腰を据えてゆったり作るもの。しかし、「へらへらしてたら力が入らん。笑ろてたら力が入らん、怒ってんと。」だそうです。
ごまをじっくり炒って、練りごまになるまで丁寧に丁寧にすって作られるので、ごまのまろやかさが際立ち、辛くても美味です。

「どんでら 座って ゆったりせんならん」(2017年取材時の写真)

「うどんぬた」を作るのは この集落だけ?

ぬたに麺類を入れるのは、多賀町内の平野部、芹川沿いの久徳集落から下流半径約1㎞範囲の3集落に限定されるようです。
平成18年(2006)頃、冠婚葬祭のための会館ができるまでは、皆で寄って料理を作っていました。寄合の時、卓上に並ぶ鉢物に欠かせない一品だそうです。
昭和20年半ば生まれの方は、母が作っていたのを記憶しており、また、口伝えでリーダーの味を覚えて来たのでレシピもなく、「うどんぬた」がどういう経緯で作られるようになったがは定かではなとのこと。
あたり前だと思っていたので、周囲から珍しいと言われ始めた頃には、なぜうどんが入るのか、由来を知っておられる方がもうすでにどこにもいらっしゃらなかったそうです。
隣接する月之木集落や中川原集落は、うどんではなく、冷麦や素麺を入れ、単純に「ぬた」と呼ぶそうです。月之木集落では昭和初期に冬場の手仕事で素麺を作っていた家が何軒かあったようです。
その隣の集落に行くと「うどんぬた?何?それ?」となり、全く作られていません。

作り方を教えてくださったグループ

教えてくださったのは、JA東びわこ女性部「久徳 絆」8名の方々です。
新型コロナウイルスの感染拡大から寄合もなくなり、その間、一度も作られなかったとのことで、久々の「うどんぬた」作りに盛り上がりました。
初めて久徳公民館へ聞き取りに行ったのは、平成29年(2017)7月9日のことでした(その時の様子は下記リンクから)。
それから6年、作っている方々の記憶をしっかり記録に残したい、動画で残したいとお願いして令和5年7月6日、撮影が実現しました。(後日、動画編集が出来ましたらこちらにリンクを付けます)
公民館は、元小学校の建物だったそうで趣ある建物です。

ピンクの割烹着を付けた方々が久徳 絆のメンバー
元小学校だった建物

材料

今回は、下記1鉢分の1.5倍の量を作ってくださいました。
家でも作りやすい小量※を下に書きました。

【1鉢分 約15~20人】
うどん(乾麺)・・・750g
ネギ・・・750g
油揚げ・・・8枚
かまぼこ・・・3枚
辛子酢味噌
白ごま・・・120g
味噌・・・900g
砂糖・・・750g
穀物酢・・・500㏄
鬼からし・・・60g
和辛子・・・適量(辛さ調整で使う)
わさび・・・適量

【※少量 1家族分】
うどん(乾麺)・・・150g
ネギ・・・150g
油揚げ・・・1枚
かまぼこ・・・1/2枚
辛子味噌
白ごま・・・25g
味噌・・・180g
砂糖・・・150g
穀物酢・・・100㏄
鬼からし・・・15g
和辛子・・・適量(辛さ調整で使う)
わさび・・・適量

作り方

① 鬼からしをお椀に入れて、お湯を少しずつそそぐ。辛味を感じるまで溶き、台の上に伏せておく。

「目まで辛い!辛いのでなけりゃあ あかん。ああ目が痛い・・・」
逆さにしても落ちない硬さ
ラップをして伏せておきます

② 大鍋二つにお湯を沸かしておく。うどんを茹でる用と、ネギを茹でる用。
③ ネギを一握りずつ、根本を紐で束ねる。ネギは切らずに茹でる。

④ ネギを茹でる。沸騰した鍋にネギを根元から入れて柔らかくなるまで茹でる。茹であがったらザルにあげ水気を切り冷ます。冷めたら3㎝ほどの幅に切る。水気をしっかり搾り、さらにキッチンペーパーで水気をとる。

束ねておくと絡まりません
茹で上がったらザルに取り 冷まします
約3㎝に切ります
さらにしっかり搾ります

⑤ 乾麺うどんは、長すぎると食べづらいので半分に折ります。芯まで柔らかくなるまで茹でる。

半分に折ります
しっかり茹でます。ちょっと芯が硬いので蓋をして「うましとく(蒸らしておく)」
ザルにあげてしっかり水切りして冷ましておきます

⑥ 白ごまを煎る。ごまがパチっとはぜたらすぐに火から降ろす。

自家製ごま ペットボトルに入れて保存しています
ごま煎り

⑦ すり鉢に煎ったごまを入れて粘りが出るまですりこぎで摺る。粘りが出てきたら①の鬼辛子を入れ、さらにすりこむ。(辛味が目にしみます)次に味噌を入れてする。ごま、辛子、味噌が混ざったら砂糖、酢を入れてさらにすりこむ。辛味が不足する時は、和辛子を追加する。辛味を保持するためにわさびを入れる。

ごまの粒が無くなるまで、油がにじむまで摺る
手際ようやらんとあかん。時間かけたら ええんと ちがう。
からしが入ります。目に辛さがしみる
「ああ 目が痛い」「へらへら笑ろてたらあかんで、怒ってんと力が入らん」
「みがいくで(筋肉痛になる)」
砂糖、味噌が入ります
硬いで摺れへんで、酢をいれてく
「ベロ(舌)メーターで味を調整するんよ」

⑧ 油揚げをフライパンで両面パリッとなるくらい焼く。焦がさないように気を付ける。油揚げが冷めたらネギの長さにそろえて、5㎜幅に切る。

焦がさないようにパリッとさせます
細く切ります

⑨ かまぼこは3枚におろし、油揚げと同じように切る。さっと茹でて水を切り冷ましておく。

3枚におろします
うどんの太さに合わせます
さっと茹でザルにあげて冷まします

⑩ 辛子酢味噌の中に、うどん、ネギ、油揚げ、かまぼこを入れてよく混ぜる。 

しっかり和えます
1鉢の1.5倍分、鍋で和えます

出来上がりまで約1時間ちょっと、そのうちほとんどの時間が「ごますり」でした。同時進行でネギ、かまぼこ、油揚げ、うどんの下ごしらえが熟練の技とチームワークで仕上がっていきました。大勢の人が寄って協力して作って来た料理だということを実感しました。

うどんぬた


ごまがクリーミーなのに鼻に抜ける辛さ。日本酒とのペアリングは最高です。
「うどんぬた」にしても、滋賀県北部の「鯖そうめん」にしても、主食として麺をいただくのか、副菜としていただくのか・・・。いまだによく分かりませんが、このしっかりした味付けは、白ごはんにも合うのです。

チームワークの良さ!
ビデオカメラ1台とカメラ2台での撮影。同時進行なので大変です


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?